ブランドセーフティ を懸念しつつ、守れないエージェンシー:すべての元凶はROI

CNNは4月第3週、YouTubeがナチスや小児性愛、プロパガンダ的な動画の横に大手広告主の広告を表示していたと報じた。影響を受けた広告主にはNetflix(ネットフリックス)、アディダス(Adidas)、ヒルトン(Hilton)、アンダーアーマー(Under Armour)が含まれ、これらのブランドは直ちに、YouTubeへの広告支出を当面見合わせると発表した。

なんだか聞き馴染みのある話だ。ブランドセーフティに関しては、ひとつのサイクルが明白になってきている。プラットフォーム上で何か悪いことが起こり、広告主は激怒して一時的に支出を止めるが、プラットフォームが漠然とした対応を取ると約束したらすぐに再開する。

諸悪の根源は投資利益率(ROI)にある。

力を失った調達部門

ジハードのプロパガンダの横に表示されている広告からの反響はひとつの圧力だが、マーケティングの成果をめぐる闘いではそれは何の役にもたたない。そして、デジタル広告の成長に伴って、そうした圧力も強まってきた。至るところにいるブランドマネージャーはいま、予算の使い途を事細かに説明しなければならない。広告の頼れる怪物、調達、ブランドセーフティについての懸念が控えているため、継続的な値下げ圧力がここに加味されている。

IPGメディアブランズ(IPG Mediabrands)のメディアエージェンシーUMでブランドセーフティ責任者に指名されたジョシュア・ローコック氏はこう語る。「リスクとコストのトレードオフがブランドセーフティの基本的課題だ。ブランドセーフティを真剣に受け取るためには、ブランドセーフティでの失敗がビジネスに与える長期的影響について、調達部門も含めたマーケターが意味のある会話をする必要がある」。

優秀なメディアバイヤーのひとりは、調達部門は力を失っていると思うと述べた。特に、米国広告主協会(Association of National Advertisers:ANA)が2年前に、業界内でリベートが横行しているというレポートを出して以降、透明性の問題に再びスポットライトが当たったという。だが、このバイヤーは、調達部門は価格に焦点を絞り続けている、と話す。調達部門は、利益と損失、ベンダーにいくら支払われているかなど、すべてを知りたがる。そしてそうした部門は、ブランドセーフで希少価値のあるビューアブルなインベントリー(在庫)が高価であることを認めたがらない部門でもある。

広告の頼れる怪物たち

この1年、ブランドセーフティの問題は広告主の想像力を上回っていた。それがはじまったのは、まぎれもない、2017年春のことだった。ロレアル(L’Oréal)やベライゾン(Verizon)といったブランドの広告が、YouTube上で白人至上主義者やその他の扇動集団による動画と並んで表示されていたという一連の報道がなされ、ブランドの多くは広告購入を中止した。

だが、まるで時計仕掛けのように、それからわずか数カ月後には、そうした広告主たちは戻ってきた。メディアレーダー(MediaRadar)やパスマティックス(Pathmatics)のような広告トラッキング企業によると、YouTubeでの広告支出にはほとんどなにも影響はなかったようだ。エージェンシーを含め、関係者全員のあいだにはある種の便宜主義があった。エージェンシーは、ブランドセーフティをよりよくするためのイニシアティブに基づいて作業をしていると指摘した。YouTubeは一定の対策を確立してこの問題を解決した。

YouTubeの利用を止めることは困難だ。同プラットフォームによると、YouTubeにはユーザーが13億人いて、毎分300時間分の動画がアップロードされている。1日3000万人が利用し、その多くは貴重な18~49歳のグループだ。

Facebookでも同じようなことが起こっている。VMLのメディアディレクターを務めるリサ・パープラ氏は、3月に米DIGIDAYがニューオリンズで開催したメディアバイイングサミット(Media Buying Summit)で、クライアントがフェイクニュースの問題への懸念をたとえ公言していたとしても、たとえばFacebookでの広告支出が一時停止されることはないと語った。「Facebookで何が起きているかを気にしていると、私に言ってきたクライアントはひとつもない。人々はFacebookが必要だと気づいていると思う。なにしろボリュームが大きいのだから」。

ブランドの本音

グループ・エム(GroupM)のブランドセーフティ担当グローバルエグゼクティブバイスプレジデントであるジョン・モンゴメリー氏は「価格と品質やブランドセーフティのあいだには相関関係がある」と話す。ヘイトスピーチのことは忘れてほしい。「オープンなアドエクスチェンジで購入し、低いインプレッション単価(CPM)や、総CPMの計測のようなものさえ追い求めようとする」ことが、ブランドが望んでいることだとモンゴメリー氏はいう。

グループ・エムにはいまでも、売り込みプロセスの最中で特に、CPMに見合っているか、あるいはCPMをより下げられないかを確認することを目的に、たくさんの提案依頼書(RFP)が寄せられるとモンゴメリー氏はいう。クライアントは、価格の定価を求めることは、自社の動画がブランドセーフなコンテンツにマッチングされない可能性の高まり、あるいはビューアビリティ(可視性)の低下や詐欺行為に利用されやすくなることを意味すると知っている。だが、彼らは実のところはそれほど気にしていない。

過去1年間に行われた会話の多くが限定されたリスクに焦点を当てていたことが問題だったと、モンゴメリー氏はいう。クライアントが本当にブランドセーフティを望むなら、それが効率性を最大限にすることと、ぴったり合致していると確信できなければならない。

長期的影響を視野に

「広告が見られれば見られるほど、効果が上がると言わなければならないことには論理的レトリックがある」と、モンゴメリー氏はいう。だがそれはビューアビリティの問題だ。「悪い」コンテンツの隣に広告が出ると考えると、身の毛がよだつ。

クライアントはここで、自身の広告が、たとえば斬首する動画の横に表示されるような結果に終わったとしたら、コストがどうなるかをはっきりと認識しておく必要がある。モンゴメリー氏はこう語る。「本当に必要なのはひとつの広告がCNNで流されることだ。クライアントはいつも、広告掲載にコスト効率の良さを求めるが、そこで発生しうる関連コストについて考えなければならない」

マーケターは基本として、コスト効率の高いメディアの短期的メリットが起こりうる長期的影響を上回るかどうかと問い続ける必要がある。そこには、消費者が持つブランドイメージの変化も含まれるだろう。

グループ・エムのクライアントのなかには、不快なコンテンツと並んで表示された自社広告のスクリーンショットを撮ったところがたくさんある。問題はそうした広告表示はキャンペーン支出の0.00019%程度でしかないことだとモンゴメリー氏はいうが、それでも十分な割合だ。

「常に警戒・監視が必要」

ビューアビリティだけでなくブランドセーフティのためにブランドが支払う費用がある。そのなかには、ホワイトリストを手作業で作成することに関する「人件費」も含まれる。クライアントの多くはそれを受け入れるかもしれないが、そうしないものも多い。

「ブランドセーフティのための割り増し料金に価値を見いだすクライアントがいるのは紛れもない事実だ。ただ、コストの割り増しがROIを損なわないと保証することが障害となっている」と、ローコック氏は話す。「デジタルはサイロではない。クライアントがお金を投資できる場所はほかにもたくさんあるので、料金の割り増しがROIを法外に高くするはずはない」。

ローコック氏は、苦しい闘いは、それを鈍器として扱いたがらない限り、つまり、メディアのコストだけでなく関連コストをすべて受け入れない限り、デジタル広告は100%ブランドセーフにはならないということを広告主が受け入れ、実利主義になる必要があるということだと述べる。「ブランドセーフティは想定されておらず、忘れられている。常に警戒・監視が必要だろう」と、ローコック氏は語った。

Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)