FUTURE OF WORK

クリエイティブエージェンシー、働き方の「新常識」とは? : 米国各社の取り組み

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在宅でのリモートワークをずっと満足して続けられる、という考えにも終わりが来た。

オフィス勤務が再開されたり、少なくとも再開が検討されはじめているなか、リモートワークが我々の精神に負担をかけていることを示唆する新たな研究が発表された。この調査によると回答者の半数近く(47%)が、リモートワークのせいで不安を感じていると答えている。そのうちの3分の2(66%)は、リモートワークのせいで生産性が大きく損なわれたと答えていた。

オマハに拠点を置く保険会社ブリーズ(Breeze)による、1000人以上のリモート勤務者の回答に基づくこの調査結果は、パンデミックが続くなか、従業員の健康を維持するためにすでに追加の取り組みをしている雇用者にとって、もうひとつの懸念材料を追加した形だ。

全員を幸せにする方法を見つけること

調査が明らかにしたほかの内容には、52%が抑うつを報告し、ほぼ同数(46%)がパニック発作を経験した、というものがある。リモートワークが原因の不安の結果、57%が専門家や医療機関に助けを求めている。10人のうち4人以上が、リモートワークにおいてサボっていると思われるのを恐れ、その結果過労や長時間労働が原因でリモートワークに不安を感じていると回答している。リモートワークが原因の不安を抱えている人のうち、43%はそれを理由にオフィスへの復帰を予定していると答えた。

PwCの調査によると、オフィスへの完全復帰を計画している企業は5社に1社の割合となっており、リモートワークが今後なくなってしまうわけではないことは明らかだ。では、解決策は何なのか。

「リモートワークを非常に気に入っており、おそらくオフィスに戻ることはないだろう人も多く存在している。そのため、リモートワークを終わらせるかどうか一斉に決める、といった形になるとは思わない」と、ブリーズ社の広報責任者、マイク・ブラウン氏は語る。「問題はもはや、オフィスやリモートかではなく、ハイブリッドモデルをうまく機能させ、全員を幸せにする方法を見つけることだ」。

クリエイティブエージェンシーの奮闘

在宅勤務が当たり前になっているなかで、従業員のストレスを取り除くことを重要な取り組みとしているクリエイティブエージェンシーたちは、不安を抱える従業員の急増に気付かなかったわけではない。

「我々は、従業員をエンパワーメントする時代に生きている。従業員たちは、これまで以上に、いつ、どのように、どこで働くかについて、より多くのコントロールを持ち、より多くの発言権を持っている。我々が実践したいことは、それを本当に受け入れることだ」と語るのは、ミニ(Mini)やコロナ(Corona)などをクライアントとするペレイラ・オデル(Pereira O’Dell)の最高クリエイティブ責任者、ロブ・ランブレヒツ氏だ。「重要なのはまず人材、次にロケーション(その人材がどこで働くか)である」。

従業員のメンタルヘルスを改善するために、エージェンシーのトップたちは従業員に対し、デスクから離れて外を散歩するだけの30分の時間を設定したり、仕事ではなくちょっとした会話だけの同僚とのバーチャル会議を計画したりするよう奨励している。また、同社が午前11時から午後1時まで、「クリエイティブ・ブロック(The Creative Block)」と呼ぶ時間帯を制定し、この時間帯はZoom会議といった業務を忘れて仕事に集中できる時間を作ったことにも言及した。

サンフランシスコのゴッドフリー・ダディッチ・パートナーズ(Godfrey Dadich Partners)のファウンダーで共同CEOのパトリック・ゴッドフリー氏は、社員ができるだけ安全であることを保証することは、どんなクリエイティブ企業にとっても最優先事項だと考えている。同氏は、「幸せで満足している人ほど、より良い仕事をしているということを理解することは、それほど大きな飛躍ではない」と述べた。同氏の会社は、ナイキ(Nike)やリフト(Lyft)などの顧客向けの業務で知られている。「仕事があることに感謝し、自分の価値を証明するために徹夜を何度もこなすことが当然な世代で私は育った。それだけの無理をして歯磨き粉の広告の案件をひとつ獲得する、といった具合だった。強さと自信を偽った虚勢が(職場の)有害性を隠匿するのに使われていた。しかし、今はこのような慣習をちゃんと実態通り『虐待』と呼んでいきたい」。

ここ一年半を通して、同氏のエージェンシーは従業員を失い始めたが、その離職の理由は「より刺激的な新しいチャンスを掴んだから」ではなくシンプルに「何か別のことをする」ためであった。その結果役員たちは(従業員たちの)人間としての限界についてより理解するようになったという。「(単に現職を離れることを理由とした離職)はそれまで、一度も起こったことがなかった」と彼は言った。そこで同社はモニターから離れ、ひと息ついて考えをまとめる「フォーカスフライデー(Focus Fridays)」を立ち上げた。月に一度のイベントとして始まったものが大成功を収め、週に一度のイベントに拡大された。

仕事に最善を尽くせるために

スターバックス(Starbucks)やジェットブルー(JetBlue)のために仕事をしてきたブルックリンのエージェンシーであるビッグ・スペースシップ(Big Spaceship)は、四半期ごとにメンタルヘルスデーを実施している。この日は、業務を一時停止し、従業員は外で過ごすことを奨励されている。また、瞑想のガイダンスやバーチャルヨガ教室も開催している。「このようなスペースを従業員に与えることで、彼らは意図的に自分のための時間を取ることができ、その結果、彼らは仕事に最善を尽くすことができるようになる」と、人事・カルチャー部門シニア・バイスプレジデントのクリスティン・ダヴァーサ氏は述べた。

ノンストップで続くビデオ会議の負担を和らげるために、インディアナポリスの独立系クリエイティブ・エージェンシー、ヤング・アンド・ララモア(Young & Laramore)は、火曜日の朝に、会議はなくeメールなどのコミュニケーションに答えなくても良い、「静かな時間帯」を設けた。そして週末は、金曜日の午後3時に終業する。同社のプレジデントかつ最高戦略責任者であるトム・デナリ氏によると、オフィスの再開後、火曜日と金曜日は任意のリモート勤務日となる。ヤング・アンド・ララモアの顧客には、ステーキ・アン・シェイク(Steak ‘n Shake)やメレル(Merrell)などがいる。

バーチボックス(Birchbox)やトッド・スナイダー(Todd Snyder)などのブランドに起用されてきたニューヨークのメディア・バイイング・エージェンシーのグッド・アップル(Good Apple)は、在宅勤務にまつわる不安を軽減するため、新入社員が直接会う「新入社員の日」など、対面式のイベントをいくつか開催している。その他の活動には、バーチャルなハッピーアワー、野外でのディナー、全社規模のリトリート(心身をリフレッシュさせるための旅行や静養)などがあると、最高ハピネス責任者のイジー・ブラッチ氏は言った。

そのような出来事は「パンデミックが抱える問題にもかかわらず、我々のチームが(仕事から)切り離れた状態で、結束させ、互いの成長や社の発展を祝うことができた」と、彼女は言った。

[原文:Remote work is causing anxiety levels to spike: Here’s what creative bosses are doing about it

TONY CASE(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)
Illustration IVY LIU