離職率から計算すると、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)では今後2年間に10人に1人が会社を離れる計算になるが、CEOであるアーサー・サドーン氏は離職しようとする人材は、全力で引き止めるという。イギリスの業界団体であるISBAが毎年主催するランチ会合で、サドーン氏が語った内容をまとめた。
離職率から計算すると、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)では今後2年間に10人に1人が会社を離れる計算になる。だが、CEOのアーサー・サドーン氏は離職しようとする人材は、全力で引き止めるという。
イギリスの業界団体であるISBAが毎年主催するランチ会合。ここでサドーン氏が語ったのは、CEOに就いてからの数カ月間に直面した課題のなかで、人材のキープがもっとも大きなものであると語った。グループの長所と短所をキッパリと包み隠さず語ったプレゼンテーションだったが、そこで公開されたのは今後2年間に14%のピュブリシスのスタッフが社を離れるだろうという予測だった。
ピュブリシスは組織のストラクチャーをより合理化されたものにすることを計画しているが、それによってスタッフにキャリアをステップアップするための道筋を示すことを目指している。「(自分のグループでは)レオ・バーネット(Leo Burnett)サンパウロ支社のクリエイティブが明日にはニューヨークのサーチ&サーチ(Saatchi & Saatchi)のスーパーボウル案件に関わることもできるようになるだろう。グループ内のエージェンシー同士の共食いが起きるというわけではない。案件を率いるのは我々のクリエイティブディレクターで、ブラジルの外では働いたことがない25歳くらいのスタッフにスーパーボウルという大案件に関わるチャンスを与えることができるのだ。縦割りの組織構造になっていないグループはほかにはない、このようなことができるのはウチだけだ」と、サドーン氏は語った。
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高い業界の離職率
130各国200部門における8万人のスタッフを横断する形で、コラボレーションを支援するAIプラットフォーム「マルセル(Marcel)」にサドーン氏が期待を寄せているのも同じ理由からだ。ピュブリシスグループは今後1年間、カンヌライオンズの賞コンテストに参加することを禁止している。サドーン氏によると、これは苦渋の決断であったと同時に、グループ人材のより良いマネージメントをするためには重要な決断であった。それはグループのスタッフ、そしてクライアントに対する義務でもあったという。
人材確保の争いは昔からエージェンシーにとって深刻なトピックだったが、近年はさらに困難になっている。GoogleやFacebookといった大企業が広告業界のもっとも有能なエグゼクティブたちを吸い取っているからだ。4AとLinkedIn(リンクトイン)によって去年行われた、31万人のプロフェッショナルを対象にした研究によると、広告業界の離職率はその他の競争率の高い業界と比べても高かった。2016年と15年で比較すると、その差は10%も増加している。
広告業界を離れる人たちの半分以上が、キャリアを先に進めるチャンスが少ないことを主な理由にあげている。全体ではこれを離職の理由にあげているのは45%だった。
デジタルシフトの本質
また別トピックでは、ビジネスが成長するのに苦戦するなか、常に変化する広告主たちのニーズにエージェンシーたちは適応する必要があるとサドーン氏は語った。「我々の業界がいま犯してはいけない間違いは、(起こさないといけない)変化がマーケティングだけに限られたものであり、クライアントのより幅広いビジネスに関しては触れないと勘違いしてしまうことだ」と、サドーン氏は語った。
「コンシューマーサイドにおけるマーケティングを改革する唯一の方法は、企業側で必要なテクノロジーを活発に取り入れることだ。それはまさに我々がデジタスLBI(Digitas LBI)やサピエント(Sapient)で行っていることだ。この分野は、ただ良いアイデアを思いつけばいいというわけではなく、私たちが大きな優位性を生み出している分野である。クライアントのビジネスを変化させることを行っている」。
Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)