他企業と同様にPR企業も、AIを導入しつつある。AIを利用して、メディアの動向予測や、スピーチのテキスト化、ソーシャルメディアのモニタリングなどを行おうとしているのだ。PRには、芸術の要素があるだけではない。人工知能(AI)のおかげで、科学の要素も含まれつつあるのだ。
PRには、芸術の要素があるだけではない。人工知能(AI)のおかげで、科学の要素も含まれつつある。
ワシントン・ポスト(The Washington Post)やAP通信(Associated Press)のようなメディア企業は現在、AIを利用して、決算に関する記事を次々と作成し、専任部員を必要としないニュース記事をパブリッシュしている。PR企業も同様に、AIを導入しつつある。AIを利用して、メディアの動向予測や、スピーチのテキスト化、ソーシャルメディアのモニタリングなどを行おうとしているのだ。
たとえば、シフトコミュニケーションズ(Shift Communications)には、6人のデータアナリストを含む総勢10人のマーケティング技術チームがいる。チームは顧客のために、高度な分析や機械学習、有料検索、ソーシャルメディアなどを管理している。
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大規模に事を行うのに有効
シフトコミュニケーションズのマーケティング技術担当バイスプレジデント、クリストファー・ペン氏によると、同氏のチームは、自然言語処理によって、人々がブランドを好意的に受け止めているか、否定的に受け止めているかを判断したり、スピーチやソーシャル投稿、記事に登場するもっとも重要な単語や共通テーマを割り出したりしているという。また、音声認識ツールを利用して、音声コンテンツの文字起こしを行ったり、過去のデータに基づいて予測分析し、メディアの動向を予想したりしている。
ただし、ロボットはまだ、自分でプレスリリースを書いたり記者を動員したりはできない。そうしたことの判断には人間が必要だ。
「AIを利用しても、PRのプロの仕事に取って代わるわけではない。AIを利用することで、我々は自分の仕事を大規模に行うことができる。毎日、非常に多くのメディアが生み出されるため、我々人間はそのすべてに目を通すことはできないが、マシンならそれが可能だ。たとえば、私は今朝、顧客の見本市のためにコンテンツを分析していたが、見本市関連のコンテンツは2000ほどあった。すべての記事を自分で読むことはできないが、15分でそれらの記事の自然言語処理を行った」とペン氏は語る。
自然言語処理や洞察も得意
ペン氏の説明によれば、自然言語処理に加えて、IBMの「Watson Speech to Text」や「Google Cloud Speech API」のような音声認識ツールも、チームがスピーチをテキスト化するのに役立っている。チームは、そうしたテキストベースのコンテンツで自然言語処理を行っているという。
「最高のサービスでも、録音時間1分あたりの費用は数セント以下だ。検索不可能な音声には、価値ある内容が多く含まれている。電話会議やスピーチ、プレゼンなど、マーケティングで聞くものすべてについて考えてみてほしい。そうした知識の多くは検索不可能だ。我々は音声認識を利用して、顧客の電話を書き起こしたり、スピーチをブログ投稿にしたりしている」とペン氏は言う。
AIは、PRのプロがメディア展開のスケジュールを立てるのにも役立つ場合がある。たとえば、ペン氏のチームは、自社ブログの過去3年分のトラフィックを分析し、今後1年間のサイトトラフィックを予想することができた。例を挙げると、来年の5月と11月にトラフィックが急増すると予想され、読者は「プレシジョンマーケティング」というテーマを好む。ペン氏のチームは、この洞察を社内のPRチームに伝え、PRチームは、来年の5月と11月に、顧客向けにプレシジョンマーケティングを中心テーマとする講演や記事寄稿を行う機会を探す予定だという。
そのほか、クレンショーコミュニケーションズ(Crenshaw Communications)も、顧客がソーシャルメディアのどこで取り上げられているかを追跡し、ブランドが人々にどう受け止められているかをモニタリングするのにAIを利用していると、同社ディレクターのクリス・ハリハー氏は語る。「報道量の多い大手顧客の場合は特に、記事のトラッキングと分析において、AIの必要性が高まっている。センチメント分析が至高の目標だが、精度の点でまだ開発途上にある。少なくとも、私がこれまでに目にしたツールについてはそうだ」。
リリースの作成はまだ難しい
だが、PRのプロがAIを採用していない分野がひとつある。それは、ニュースリリースの作成だ。AIは、データに限定された非常に定型的な財務関係のニュースリリースなら容易に作成できるが、パーソナライズが必要な一般的なニュースリリースを作成するまでには5年以上かかると、ペン氏は考えている。
ハリハー氏も、ニュースリリースにはカスタマイズ化された要素(全体的な企業メッセージや連絡先に関わる文章スタイルなど)が多すぎるので、ソフトウェアには管理できないという意見に同意している。
「エージェンシーが、リリース作成を自動化する何らかのプレスリリース用スタックを開発したと主張しているなら、それはたわ言だというつもりだ」と、ハリハー氏は語る。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)