PwCあらた有限責任監査法人は7月「ビッグデータを活用した新たな経済指標」(経済産業省「IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業」)のセミナーを開催した。セミナーでは、PwCあらた有限責任監査法人、野村證券などが経 […]
PwCあらた有限責任監査法人は7月「ビッグデータを活用した新たな経済指標」(経済産業省「IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業」)のセミナーを開催した。セミナーでは、PwCあらた有限責任監査法人、野村證券などが経済産業省「IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業」の一環として、新しい指標に関する試験・調査を実施している。
ジーエフケー(GfK)マーケティングサービスジャパンの石川斗志樹氏は「POSデータによる商業動態統計(家電専門大型店)の迅速化、高度化に関する取り組み」に関して発表した。現状の商業動態統計を代替する新指標のテストに関して説明した。現状の商業動態統計に対し、POSデータによる指標を利用することで、速報性や正確性を高められるかを調べたという。
対象分野としては網羅性の高い家電市場を選び「POS家電量販店動向指標」とした。GfKによると、同社の収集するPOSデータは家電大型専門店店頭市場すべてをカバーし、国内家電メーカーのほぼすべてにサービスを提供する。家電市場における標準データベースという。
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GfKは世界90カ国で約42万5000社の小売業者からPOSデータを収集しており、日本では3000店舗以上のPOSを扱い、1年間で4兆円弱の販売金額規模となる統計データを構築。1日あたり500万〜1000万レコード、商品マスタに100万の属性情報を収集しているそうだ。
現行の調査方法が調査票手入力である一方、POSデータにはマニュアルの作業が存在しない。経済統計を速報化できる可能性が示された。現状が月次集計だが、週次集計し、締め日の翌木曜日に公表される。
速報化が意思決定をスピーディにする
石川氏は統計公表を週次化することで、直近の市場動向を把握し、製販計画を行えると指摘。耐久消費財のなかで市場規模が大きい製品の動向を把握することにより、季節商材関連の製販計画に利用可能と考えられると分析する。企業は製販、マーケティングの意思決定を迅速化でき、在庫に苦しむことがなくなる可能性がある。
地区別のPOS家電量販店動向指標により、週次で消費動向の地域差を捉えられる。不調な地区では流通企業が翌週からプロモーションを行うことで販売機会損失を減らすことができる。音楽フェス、離島マラソンなどのイベントが消費を伸ばすことを補足し、将来的にはイベント関連がもたらす販売への影響を予測することが可能かもしれない。
石川氏は商業動態統計の要因分析と高度化に関する取り組みも紹介した。POSデータから得られる数量、平均価格データにより需要予測をつくれる。オープンデータとPOSデータを掛け合わせたり、気象情報と販売動向の相関性を調べたりすることにも言及した。時系列データや気温データを使用した家電量販店市場の予測数値は、販促・広告への投資の最適化や適正な人員配置、生産量調整による在庫の適正化などに利用されることが期待できる。
利活用の幅が拡大するPOSデータ
たとえば、悪天候の際に販売額の落ち込みを予測できれば、小売店はリアルタイムでクーポンをどの程度配るべきかを判断できる。降水が長引く場合は自社ECサイトに誘導するオムニチャネル戦略を採れる。
エアコンのような季節空調は気温による動態変動が大きく、年によってバラつきが大きくなる。エアコン販売と平均気温間には高い正の相関があることがわかったという。
石川氏はいままでのPOSデータはミクロな視点で利用されてきたと説明した。通常のPOSでは、価格戦略、売れ筋の把握、マーチャンダイジング、インストアマーチャンダイジングに活用されていた。ID-POS(購入者を識別できるPOSデータ)では、顧客属性分析、同時購買/リピート率、店頭プロモーション効果測定、オムニチャネル戦略などに利用される。
しかし、これからのPOSデータはマクロな視点で利用されると石川氏は説明する。さまざまなデータとのフュージョンにより、全体市場分析、地区別・都道府県別・街区別分析、業態別分析、チャネル別分析(リアル店舗/オフライン)という形で、消費動態分析/経済動向分析へと利活用の幅が拡大する。
Written by 吉田拓史
Photo by Shutterstock