「差別化のポイント」:エージェンシーがアドテクとの交渉に力を入れている

アドエクスチェンジの数が縮小するなか、エージェンシーがアドテクベンダーとの交渉の仕方を変えている。サプライチェーンの仕組みの透明性をクライアントに保証する取り組みとして、手数料とプランの構成を変更しているのだ。

この記事のために話を聞いたエージェンシーやアドテクの幹部6人によると、プログラマティックの平均的な広告主がインプレッション購入に使うアドエクスチェンジの数は、この1年半で約50から約30に縮小しており、なかには10に減っているケースもある。

メディアプランのエクスチェンジの数が少なくなると、まだ残っているアドテクベンダーからすると、エージェンシーが大幅に魅力的に見えはじめる。こうして、従来は会っていなかった2つの陣営が協議するようになっている。デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)は全般的に、エクスチェンジやサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)と一緒に会われる傾向がある。というのも、後者が販売するインプレッションに入札するのが、前者のテクノロジーだからだ。

これは、コモディティ化が進んだプログラマティック市場でエージェンシーが稼ぐことができる、めったにないチャンスだ。プログラマティックは、問題はあるものの引き続き広告予算を集めており、広告への入札後にお金がどうなっているのか見えるようになれば、投じる額は増えるだろうと広告主たちは話している。「プログラマティックのサプライパスのキュレーションがクライアントへの貴重なサービスになり得ることにエージェンシーが気づきはじめた」と、トラストX(TrustX)のプレジデントでCEOのデビッド・コール氏は語る。

透明性を求めるがゆえ

エージェンシーネットワークのエンジン(Engine)はこの2019年の年頭、広告主に代わってサプライをキュレーションする方法として、独自のアドエクスチェンジを立ち上げた。エンジンは、アドエクスチェンジとしての取り分をバイヤーと交渉している。独自のDSPを使ってパブリッシャーのインプレッションに直接入札すれば、キャンペーンの入札価格について、パブリッシャーに至るまですべてが見えるようになる。結果、バイヤーには、リーチしたユーザーにリーチするのにかかったコストが全部見えると恩恵があり、パブリッシャーには、CPMが上がることによる恩恵がある。エンジンはエクスチェンジを運営していることで、自社の公開手数料を引いたものをパブリッシャーに保証できる。バイヤーによって、また、サプライをどのようにキュレーションしたいかによって、オークションのログといった追加の検証を提供して入札の妥当性を証明することができる。

エンジンは、マネージドサービスのクライアントのためにリーチを拡大するため、サードパーティーのSSPやエクスチェンジとも仕事をしているが、エンジン傘下のエクスチェンジのCEOであるマイケル・ザカースキー氏によると、契約パブリッシャーを増やし、ダイレクトサプライで独自のダイレクトデマンドを実施する方向だという。従来は、バイヤーはDSP経由で購入していて、ドメインとともに支払う金額がわかっていたが、そのうち仲介者への手数料がいくらで、パブリッシャーに渡るのがいくらなのかはわからなかった。「あのモデルを変えて、インベントリー(在庫)の本当の金額とかかる手数料の両方がバイヤーに見えるようにすることに力を入れている」と、ザカースキー氏は語った。

エージェンシーはこれまで、あいだに入るアドテク業者を回避しようと、さまざまな戦術を展開してきた。たとえば、グループ・エム(GroupM)、オムニコム(Omnicom)、電通(Dentsu)をはじめとするエージェンシーは2018年、多くの時間を費やして、プログラマティックのインベントリーのサプライソースに近づくさまざまな方法を編み出した。しかし、イーベイ(eBay)のジェフ・スミスによると、実際にどこまで専門知識があるのかという問題が残った。「ほとんどのバイヤーは、オークションがどのように機能しているのか、時間をかけて理解することに関心がなかった」と、同氏はいう。

影響力の確保も狙い

独自のエクスチェンジを運営する余裕や勢力があるエージェンシーばかりではなく、アドテクベンダーと直接一緒になって影響力を行使したいというところもある。DSPのマージンを締めつけたエージェンシーが、今度はサプライサイドのベンダーを追いかけている。

たとえば、グッドウェイ・グループ(Goodway Group)は2月にパブマティック(PubMatic)との協定をまとめた。そこでは、パブリッシャー側には通常あるようなテック税が課されず、代わりに、パブマティックで取り引きされるすべてのメディア購入についてグッドウェイ・グループ側がまとめて手数料を払うという条件だった。エージェンシーが払う額が増えるのと引き換えに、パブマティックは実質的に支払われる額が減ることに合意した。ほかのエージェンシーも、ほかのSSPとのあいだで同様の協定をまとめようと取り組んでいる。

「エージェンシーがSSPと直接、手数料を交渉するようになってきている」と、イーベイでEMEAにおけるアドテクとイノベーションのディレクターを務めるジェフ・スミス氏は語る。「サプライチェーンの双方におけるオークションの仕組みと手数料について透明性を保証できるとクライアントに言えることが、エージェンシーの差別化のポイントになっている」と同氏はいう。

苦境に立たされるSSP

こうした協定の問題は、SSPが微妙な苦境に陥ることだ。悲観的なパブリッシャーは、エージェンシーとSSPのあいだのこうした取り引きが、キックバックの煙幕に見えるかもしれない。SSP手数料の公開されない大口割引をエージェンシーが手にするのだと。そうするとメディアオーナー側は、パブリッシャーに近づくという話は、じつは購入側が手数料を値切るための策略なのではないかと考える。それでも、SSPはエージェンシーに物欲しそうな視線を送り続けている。

ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)、スポットX(SpotX)、テラリア(Telaria)、オープンX(OpenX)のようなところは、パブリッシャー企業の獲得だけでなくエージェンシーと広告主も味方につけるように取り組む事業開発チームの強化に資金を投じている。「我々がパブリッシャーに入っていき、我々のテクノロジーがサイトの広告をどのように買うのかについてパブリッシャーに教育しているのと同じように、SSPがエージェンシーや広告主と会って、SSPがどのような機能なのかを説明している」と、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)のEMEAにおけるパートナーシップ担当ディレクターのジョエル・リブジー氏は話す。「SSPは、自社テクノロジーの仕組みをバイヤーに説明するのに多くの時間を使うようになり、プラットフォームのデモも行っている」と、同氏は語った。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)