インフルエンサーマーケティングにおいて、いくら支払うかというのは難しい問題だ。業界で広く知られているような基準というのもない。
しかし、最近ではエンゲージメントに応じて、インフルエンサーへの報酬額を決定する、という方法をエージェンシーたちは開発しつつある。
インフルエンサーマーケティングにおいて、いくら支払うかというのは難しい問題だ。業界で広く知られているような基準というのもない。
そのおかげで、初期のインフルエンサーたちは巨額の手数料を要求して美味しい思いをしたようだ。フォロワー数が多いインフルエンサーは、高い手数料を要求できることが多い。
しかし、最近ではエンゲージメントに応じて、インフルエンサーへの報酬額を決定する、という方法をエージェンシーたちは開発しつつある。
Advertisement
エンゲージあたりのコスト
エージェンシーとインフルエンサーによって導かれる形で、ブランドは「フォロワー数の少ない方がエンゲージメントは良く、そのため費用対効果の高いキャンペーンにつながる」という考えに同調しつつある。それでも巨大なフォロワー数にいまだ魅了されているブランドは多いと語るのは、エンゲージメントあたりのコスト算出法を開発した、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム、ソーシャルサークル(Social Circle)のディレクターであるジョー・フリール氏だ。
「我々はあらゆるタイプのエンゲージメント基準をもって測定を行い、それぞれのエンゲージメントに対して適切な価値を、異なるプラットフォームごとに割り当てる、ということをしている」と、フリール氏。例として、Vine上でのビュー数とYouTube上でのビュー数が違った意味をもつことを挙げた。
「そのため、インフルエンサーたちと報酬額について話をするときに、彼らがもたらすだろうエンゲージメントが、どれくらいのレベルなのかを推測して、それを彼らが要求する報酬額と照らし合わせることで、エンゲージメントあたりのコストがいくらであるかを算出することができる」。
市場での価格はピークに
フリール氏はこのモデルはまだ進化途中であると説明。そのうえで、すでに彼らが獲得できたチュッパチャップス(Chupa Chups)とパビリオンブックス(Pavillion Books)の新しいビジネスにおけるカギとなっていると話した。
「インフルエンサーの影響力にお金を払って活用することは、より安心感をもたらしてくれる。だが、我々がクライアントに対して透明であること、そして、彼らがインフルエンサーを使うことに対して、しかるべき注意を払うべきだと理解してくれることは重要だ」。
6カ月に及ぶ調査の後、ソーシャルサークルは英国とヨーロッパにおける、エンゲージメントあたりのコスト(コストパーエンゲージメント)の業界スタンダードは、5ペニーから20ペニー(約6円から約21円)のあいだと結論づけた。価格はしばらく着実な上昇を続けていたが、最後の数カ月で横ばいとなりはじめた。米国の場合はインフルエンサーが多いため競争も激しく、業界スタンダードは、エンゲージメントあたり2ペニー(2円)だ。
フォロワー数よりもビュー数
インフルエンサーエージェンシーであるファンバイツ(Fanbytes)は、ディズニーやアディダスといったクライアントをYouTube、Snapchat(スナップチャット)のインフルエンサーとつなげており、またコストパーエンゲージメントでの報酬請求を行っている。エンゲージメントの測定はフォロワー数ではなく、ビュー数で行っているという。
ファウンダーであるティム・アーモ氏は「インフルエンサーたちを成功に導くのはオーディエンスだと、彼らに示さないといけない。ビュー数が生死を分けるのであって、フォロワー数ではない」と主張。ファンバイツのインフルエンサーたちのコストパーエンゲージメントは、10ペニー(約14円)から1.10ポンド(約155円)のあいだとなっている。
だが、フォロワー数からエンゲージメントへの移行は正しい動きだとソーシャルエージェンシーのエグゼクティブたちはいうが、これをセールスに応用するのはまた違う問題だ。「セールスと適合させるのは新しいプラットフォームにとって、常に難しい仕事となってきた」と、語るのはフリール氏。インフルエンサーマーケティングが、いかに収支に影響を与えるのかに関するデータがもっと必要だ。
もうひとつの問題は標準化である。それぞれのエージェンシーが自由に測定方法やフォーマットを作っている状況で、このような歴史の浅い業界が、業界水準というものを策定できるか想像しがたい。
バナー広告化への懸念
スタンダードとなる基準策定にも懸念はある。エージェンシー、1000ヘッズ(1000heads)のグループ開発ディレクターのマイク・デービッドソン氏は、それによってインフルエンサーマーケティングが、より商取引のような業界に変化してしまう危険性を警告した。
「商品を扱ってくれるインフルエンサーとのパートナーシップを、バナー広告と同じように認識してしまうことには、危険性が備わっている。それは質よりも量を重要視する測定法だからだ。スタンダード化された報酬体系が導入されることで事態が混乱し、クリエイティブではなく、ただの商取引といった側面が大きくなるかもしれない」と、デービッドソン氏は米DIGIDAYに語った。
しかし、インフルエンサーのなかには、この動きからメリットを得る人もいるだろう。「報酬に関する決まったスタンダードがないので、内容は毎回大きく異なる。ブランドと何週間にも渡ってやり取りを続けたあとに、まったく報酬が発生しないとはじめて明かされることもある。そういう場合は本当に不満がたまる」と語るのは、12万人のYouTubeチャンネル購読者を擁する、日本のスタイルに情熱を注ぐファッションブロガーのベッキー・クルーエル氏。報酬に関して業界のスタンダードが確立されると、そのようなケースは減るのかもしれない。
Image from Beckii and YouTube Japan 公式チャンネル
Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)