FUTURE OF WORK

「9時5時」勤務の見直し、コロナ禍が拍車をかける:「誰にも与えられた実験の機会だ」

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パートタイムやフレックスタイムなど、柔軟な働き方を求める声は、エージェンシー幹部のあいだで、徐々にではあるが確実に高まっている。新型コロナウイルス感染症の大流行が始まった当初、大きく揺らいだワークライフバランスについて、再評価が進められている。

コロナ禍が勃発した春先に、多くのエージェンシーが従業員の勤務時間の短縮に踏み切った。強制的であれ自主的であれ、コストを削減し、人員整理や一時帰休を回避するためには必要な措置だった。当初、この時短勤務は、コロナ禍による経済的な圧迫を乗り切るための短期的な解決策として採用されたが、ここにきて、雇用者も被雇用者も、伝統的な9時5時勤務に縛られない、新しい時間の使い方を模索しはじめた。

当然、利益率の圧迫に苦しむ多くのエージェンシーは、恒久的な時短勤務の機会をより多くの従業員に広げることで、一定の経済的メリットを期待できる。本格的な方針変更は時期尚早としながらも、一部のエージェンシーは、従来的な9時5時勤務を望まない多様な人材を惹きつけるために、パートタイム勤務やフレックスタイム制の拡充を積極的に検討している。

エージェンシーの幹部たちは、強制的な時短勤務の措置が解かれ、通常勤務に戻った後も、家族と過ごす時間を増やしたい、あるいは自分の好きなことに打ち込みたいなどの理由から、時短勤務の継続を願い出る従業員が増えるのではないかと見ている。

「皆、勤務時間の短縮を機に、自分の時間は自分で管理すべきと考えはじめた。それでも良い仕事はできるし、ただ週単位または月単位の時間割が変わるだけだと考えている」。こう語るのは、電通イージスのメディア部門で、グローバルオペレーションズオフィサーを務めるトム・エイミスカル氏だ。

「もはや少数派ではない」

勤務時間を減らすこと、在宅で働くこと、あるいは子どもを迎えにいくために早退することにつきまとう否定的なイメージは、この9カ月間で鳴りを潜めた。「そうする人々はもはや例外ではないし、かつてあった後ろめたさもいまはない」と、エイミスカル氏は述べている。「長年、フレキシブルな働き方をしてきた人々からは、上司や同僚に気づかれぬよう、裏口からこっそり退社していたと聞いている。そういう日常の何気ないプレッシャーもいまではすっかり払拭された」。

M&Cサーチ(M&C Saatchi)では、現在、ロンドンのオフィスで働く175人の従業員のうち、10%がパートタイムだ。最高経営責任者(CEO)のカミラ・ケンプ氏は、パートタイムやフレックスタイムを希望する従業員が増えるなか、来年、この数字はさらに上昇するだろうとみている。このような柔軟な働き方を望む新規求職者を積極的に勧誘する計画もあるという。さらに、週何日かを在宅、残りの日を出社というバイブリッドな働き方を恒久的に導入することも検討している。

「コロナ禍以前、パートタイムやリモートワークはあくまでも変則的な働き方だったが、いまでは当たり前の慣行だ」と、ケンプ氏は言う。「[コロナ禍以前から]柔軟な働き方を積極的に推進する企業は数多くあるが、そのような主張はもはや少数派ではない」。

多様な働き方は有益である

生産性が大きく落ちていないという点でも、痛みはない。パートタイム勤務が増えても、同社のプレゼン能力に支障はないようだ。実際、ケンプ氏によると、同社は、今年行われた競合プレゼンのうち、80%近くの案件を獲得している。プレゼンの勝利をリモートワークやパートタイムの増加のみに帰することはできないものの、生産性の低下など、当初危惧していた悪影響は見られないとケンプ氏は述べている。

週5日、1日8時間の労働は、コロナ禍勃発のずっと前から、ミレニアル世代やZ世代の働き手のあいだではすでに敬遠される傾向にあった。従来的な9時5時勤務の週40時間労働をやめて、個人の事情に合わせた働き方を許容することは、何カ月も学校に通えない子どもたちを世話する親たちだけでなく、子どもはいなくても、趣味や副業に時間を使いたい人々にも有益であることが判明している。

「週40時間労働は10年後には存在しないだろう」。こう指摘するアマンダ・ゲッツ氏は、ティール(Teal)のCMO(最高マーケティング責任者)として週2.5日勤務するかたわら、女性向けの高級CBDオイルを販売するハウスオブワイズ(House of Wise)を経営し、同時に3人の子どもを育てている。「コロナ禍のおかげで、クリエイター経済が台頭し、10年後の未来が前倒しでやってきた。現在の企業経営では、明確な業績指標を設けて、目標を達成することができるなら、会社が従業員の時間をまるごと所有する必要はない」。

「みな一蓮托生の状況だから」

それだけではない。強制的なリモートワークの実施で、通勤費が不要となり、誰もがそれぞれの優先事項を再考し、何千ドルもの交通費を節約することのメリットを評価するようになった。「このさきずっと、週4日勤務で5日目を休みにしたいという要望がすでに出されている」と電通イージスのエイミスカル氏は明かす。「みな一蓮托生の状況だからこそ、今年は誰もがこのような働き方を試してみることが許される」。

もちろん、パートタイム勤務はすべての職種に適しているわけではない。それでも、パートタイムであれリモートであれ、あるいは典型的な9時5時勤務でないフレックスタイムであれ、より柔軟な働き方に道を開くことは、優秀な人材を引き留め、あるいは新規に採用するうえで、必要不可欠と考えるエージェンシーも現れている。「弾力的な勤務制度は、多様な人材を集めるうえで、大きな強みになるだろう」。クリエイティブエージェンシーのウイ・アー・ソーシャル(We Are Social)でピープル&カルチャー・コミュニケーションズ部門のグローバルディレクターを務めるエマ・カミング氏はそう語る。

「経営に関わる幹部クラスになると、男女比の偏りが大きくなる。パートタイムで働く選択肢がないため、多くの女性は同じ職位や職責で職場復帰することが難しいからだ。このような問題への対処も進むだろう」。カミング氏は最後にそう言い添えた。

[原文:‘People have had permission to experiment’: Pandemic expedites rethink on 9-to-5 work structures

JESSICA DAVIES(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)