ソーシャルメディアに投稿された情報は、データとして有用ではない。人間は自分を良く見せようと嘘をつくからだ。そうしたデータにGoogleの検索データやAmazonの商取引に関するデータを組み合わせて初めて、それぞれのデジタル行動の目的を知ることができる。Google幹部ルディ・アンゴノ氏による寄稿コラム。
この記事は、Googleニューヨーク支社のクリエイティブ・ヘッドである、ルディ・アンゴノ氏による寄稿です。
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すでに「またデータに関する記事か?」という、うめき声が聞こえる。そんなご心配は、無用だ。私は本稿で、ROI(投資利益率)やKPI(重要業績評価指数)などについて、取り沙汰すつもりはない。
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今回、言及したいのは、あまり人に知られていないデータの別の側面についてだ。特に、ソーシャルメディアで収集された情報について、である。これらの情報には、2面性があり、偽善的で、偽装的だ。嘘の塊ともいえる。
情報を公表するとき、人は偽る
公表されている情報とは、インスタグラムに投稿された「休暇の自撮り写真」、Facebookにアップロードされた「可愛らしい赤ちゃんの動画」、あなたが「いいね!」した数、あなたが思いついた「ちょっとしたジョーク」や、食事がマズくても「美味しい」とウエイターに伝えた「罪のない嘘」などである。
もうお分かり頂けただろう。これらの情報は、あなたの気分やモノの見方、政治信条や現在抱える不安など、あなたのパブリックイメージを形成するものによって、影響を受ける。そして、これらの情報には、真実の半分しか込められていないため、少々信憑性が薄い。
ここで例を挙げよう。私がある猫の動画の投稿に対して「いいね!」をしても、それが猫好きの証拠になるとは限らない。むしろ、猫が大嫌いだ。ただ、その投稿者が最近パートナーを失ったばかりで、愛する猫だけが残されたことを知っていたとする。それをサポートする意味で「いいね!」をしたのかもしれない。
これが公表されている情報だけでは、正しい認知が出来ないという意味である。また、特に気にしていない時事について、コメントをするかもしれない。これは「私が頭の良い人間だ」ということをアピールしたいからである。話せないのにも関わらず、投稿者の言語に合わせてコメントを投稿するかもしれない。
このように公表されている情報は、限りなく偽物である。とても偽善的だ。それにも関わらず、人々は世間に情報を公表し続ける。これは人間の性(さが)なのだ。
高名な文化人類学者であるジュヌビエーブ・ベルは以前、「人間が嘘をつく理由は、自身をより良く見せ、より良い話を伝えるためだ」と話している。他者に認められ、生き残れるように指示を与える、政治的な動物の遺伝子のなせる技なのだ。残念ながら、これらの嘘が情報として捉えられている。公表されている情報は、嘘の塊なのに。
人の行動の意図を特定するには
嘘に触れるときはおおむね、その嘘をつく「意図(Intent)」に注意深くなる必要がある。行動を通じて、人間の意図を確かめる。ただし、問題となるのは「意図は常に明らかではない」ことだ。公表データの枠を越えて、情報取得の網を広げなくてはいけない。公表データ外の情報を挿し込み、それら2つの異なる情報同士を相互に参照し合わなくてはいけないのだ。
この点、検索データは良い情報と言えよう。人々は明確な意図をもって検索をするからだ。しかし、それだけでは足りない。意図と行動を取りまとめるため、ソーシャルメディア以外のデータの集積地点が必要になる。
仮に、私が可愛い猫の動画が好きだとして、それと同時に「長く付き合っているパートナーとの別れ」を検索したとしても、これらの情報を繋ぎ合わせて、私の意図を知るには情報が少な過ぎる。しかし、私がYouTubeにてペットを抱える臨死患者の動画を観ていて、また、Amazonにて飼い主が亡くなったペットたちのケアや対処法の本などを購入していると知ったならば、これらの4つのデータがより良く私の意図を浮き彫りにしてくれる。
こうした行動は、意図によって形成されたデジタル行動なのだ。公表された猫の動画に「いいね!」をした、私の行動の意図が鮮明になる。より意味が深いものになるのだ。ここで進化したアルゴリズムによるデータ予測(マシンラーニングとしても知られる)と人間の直感が結びつき、役に立つのである。
より深く知るたびに
私たちは意図と行動に裏付けされた、両方の公表されている情報を使用すべきなのである。それをしない限り、パイナップルとバナナ、どっちが本当の果物であるかを主張し合うような、不毛な討論が繰り広げられるのだ。
あなたがマーケターや政治戦略家、エージェンシープランナーや論文を書いているインターンであろうと、他人が提供した情報を鵜呑みにしてはならない。それらのデータは、大抵が嘘なのである。データを刺激し、推定し、意図を見つけ、質問をしながら話の全容と文脈を把握し、本当の見識を見つけなければならない。
使える解析ツールは、すべてを使うべきである。それらのツールがないのであれば、入手すべきだ。そうすることで信頼のおける情報に変わるのである。
Rudi Anggono(原文 / 訳:小嶋太一郎)
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