Google傘下のアドサーバー企業DoubleClick(ダブルクリック)は2016年4月13日(米国時間)、純広告と自動取引される広告を競争させる「ダイナミックアロケーション」を、ほかのアドテク企業にも開放するテストをしていると明らかにした。米媒体社で導入の進んでいるヘッダー入札に対抗する施策とみられる。
この取り組みが加速し、ディスプレイ在庫取引に競争が拡大すれば、パブリッシャー(媒体社)の収益最大化を助ける可能性もある。しかし、現状テストが始まったに過ぎないため、注意深く動向を追う必要がある。
Google傘下のアドサーバー企業DoubleClick(ダブルクリック)は2016年4月13日(米国時間)、純広告と自動取引される広告を競争させる「ダイナミックアロケーション」を、サーバー側でほかのアドテク企業にも開放するテストをしていると明らかにした。米パブリッシャー(媒体社)で導入の進んでいるヘッダー入札に対抗する施策とみられる。ディスプレイ在庫取引における競争が拡大し、媒体社の収益最大化を助ける可能性もあるが、テスト段階であり注意深く動向を追う必要がありそうだ。
ダイナミックアロケーションとは?
媒体社はおおむねGoogleのDoubleClick for Publishers (DFP) のアドサーバーを利用している。在庫の自動取引はさまざまなプレイヤーがひしめいているが、Google運営のアドエクスチェンジであるDoubleClick Ad Exchange(AdX)は、DFPと密接に関係しているため、ほかの取引所、アドネットワークに比べて極めて優位性がある。AdXでは、過去の平均価格により最低落札価格(フロアプライス)が設定され、その最低落札価格付近で落札される例が多い。
Googleはダイナミックアロケーションという仕組みで、DFPを利用する媒体社に純広告とAdX案件を競争させられるようにしている。現状、媒体社の広告枠販売では、営業マンの手売りである純広告がもっとも高い価格をつける場合がほとんどだ。ただ、仮にオーディエンスデータが付加価値を生み出し、AdX案件が純広告より高い価格をつけた場合は、ダイナミックアロケーションはAdX案件を優先する。これは純広告と自動取引の在庫を、同じ土俵で競い合わせることを意味するが、GoogleはこのメカニズムをAdXにのみ認め、ほかのエクスチェンジには認めていない。すなわち閉鎖的で、Googleにきわめて優位な仕組みと言っていいだろう。
Advertisement
2015年から米媒体社の間で、加速度的に広まったヘッダー入札(ヘッダー・ビディング)は、DFPに広告リクエストを送る前に、バイヤーにいくら払いたいか、確認することで、AdXに価格上昇圧力を与える手法だ。米媒体社の間では、DoubleClickと他ベンダーのヘッダー入札を併用することで、在庫価格の最大化を目指すことが一般的になりつつあった。
ページのヘッダーからサーバーサイド?
Googleは今回、ヘッダー入札がページのヘッダー部分で促すバイヤー間の競争を、アドサーバーのインテグレーション(統合)によりサーバー側で行うことを目指している。このようにダイナミックアロケーションをほかのアドテクベンダーに開放するならば、SSP/エクスチェンジがGoogle対抗策として提供したヘッダー入札の強力な対抗馬になりうる。このテストにはアドテク大手のルビコンプロジェクトとインデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)が協働しているという。
「DoubleClick Publisher Blog」によると、Googleプロダクトマネジメント担当取締役のジョナサン・バラック氏は、ダイナミックアロケーションのテストについて、ヘッダー入札の拡大がロード時間に影響を及ぼすことを示唆し、ユーザー体験を損ねないことと媒体社の収益化を理由に挙げた。
我々のゴールは媒体社が広告により繁栄し、持続的なビジネスを創造することを助けることだ。モバイルへの転換が進むに連れて、パブリッシャーは収益を最大化するため、もっとも関連性が高く、高額な広告を挿入するのに、コンマ数秒の猶予しか与えられなくなった。もし余計に1秒かかるならば、直帰率は58%も高くなるからだ。そのため、サーバーサイドの統合により、ユーザー体験を犠牲にすることなく、パブリッシャーの収益を拡大するふたつの施策の開発を進めてきた。
ふたつの施策のもうひとつが、数カ月前にベータ版の開始を発表していた、First Look(ファーストルック)だが、Googleはこのサービスをすべて媒体社を対象にするとも発表した。ファーストルックはリアルタイム入札前に、承認を与えられたバイヤーがパブリッシャーの在庫情報を知ることができ、状況によっては100%の在庫を購入できるようにする。Googleがエコシステム内に取引を集めておく施策ともとれるだろう。
Written by 吉田拓史
Photo by Photo by Integrated Change(Creative Commons)