「一時は、パンフレット作りまでやらされた」:コンサル企業のクリエイティブになった元広告マンの告白

コンサルティングファーム勢は現在、広告クリエイティブエージェンシーを吸収している。クリエイティブ事業者を抱え込み、最高責任者勢、いわゆるCスイートとの関係強化を狙っていると思われる。だが、吸収されたエージェンシー幹部らにしてみれば、新たな環境への適応に苦労する場合も少なくない。

匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回は、とある大手コンサルティングファームに買収されたエージェンシーの元クリエイティブに話をうかがった。いわく、福利厚生の面ではいくつかメリットがあった一方、多大な混乱も生じたという。

以下は要点をまとめたものだ。

――買収を知ったいきさつは?

もっと大きなクライアントに売り込むには、社としてもう少し金が要るし、さらなる資金源の確保が必要だということは、少し前から知っていた。とはいえ、全社ミーティングでいきなり、うちを買うのがコンサル会社だと聞かされたときは、一同、それこそ唖然としたよ。そんな話があることさえ、誰も知らなかったから。うちのエージェンシーは独立系だったし、それが就職を決めた理由のひとつだった。だから[その]コンサル会社[と一緒になることには]、みんな不満だったんだ。それからまもなく、向こうの連中が説明に来て、何人かは結局、ほぼ毎日いるようになったんだけど、その姿を見て、みんな早くも不安になった。スーツ族の噂とか、そういうのは聞いていたけど、まさか事実とは思わなかったから。本当に四六時中、揃いも揃って、ぱりっとしたチノパンかスラックスかスーツ姿なんだよ。少しくらいこっちに合わせる努力をしてもいいだろ、という感じだったね。

――買収の理由は何だと?

コンサル会社はどこも、Cスイートを抱え込もうと躍起になっている。CEO(最高経営責任者)に、CTO(最高技術責任者)に、CIO(最高情報責任者)。ところが、CMO(最高マーケティング責任者)については、信頼に足るものを提供するのが、自力では難しい。それで、社内にエージェンシーを持てば、その不足分を補って、もう1〜2歩先に行ける、と考えたんだろう。だけど実際、クリエイティブな人間をコンサル会社の旗印の下で働かせるのは、簡単な話じゃない。コンサルの連中が持ってくる仕事はとにかくパッとしないし、たいていはつまらないから。問題は価値観の大きな違いでね、彼らの頭のなかには、自分たちがどれだけ大きな会社なのか、尺度がそれしかない。でも、エージェンシーの世界では、最大手かどうかなんて、「それが何か?」程度でしかない。だから、エージェンシーを味方に付けるには、買収するしかないんだ。

――買収から数カ月が経つが、社内の様子は?

コンサル会社がエージェンシーの仕事をいかに知らないのかが目に見えてわかるからね、ほんと呆れるよ。この業界では、同じような人間がみんな同じようなことをしていると、連中は思っている。だから当初は、「クリエイティブ」という言葉が付くものは、基本的に何でも、僕らに回ってきた。でも広告業界では、いわゆる持株会社の人たちでも、そのエージェンシーが業界のどの位置にいるのか、よくわかっている。得意なマーケティング分野がダイレクトレスポンスなのか、ロイヤルティなのか、ショッパーなのか、そのへんをちゃんと理解している。大手ブランド専門のところをCRMエージェンシーに無理やり変える、なんてことはしない。本来の姿からかけ離れたものに変えようとする、なんてことはありえない。逆に言えば、そうされてしまうと、そこからすべてがおかしくなる。

――元社員の反応は?

うちの人間はみんな、ブランドに対する世間の見方を一変させるような、やりがいのある仕事に打ち込んでいるときに、いちばん燃えるタイプだった。でも、コンサル会社の頭にあるのは、収益増のみ。つまり、はなからまるでかみ合っていないんだ。はじまってすぐに、その食い違いを目の当たりにしたのをよく覚えている。僕らはみんな、業界から注目されて、「あれは素晴らしかったね」と、話題にしてもらえるような仕事がしたかった。なのに、最初に回ってきたのは、いわゆるボトムファネルの仕事だけ。バナー広告をやらされたんだ。自分の運命は自分で決める、というそれまでの世界では、「うちはあいにく、おたくにとってベストなパートナーではありません」と、きっぱり言えていた。だけど、買収されたからにはもう、自分の運命を自分では決められない。しかも、コンサルの世界では、金は金、というのが常識だから、どんな仕事も受けるしかなくなった。一時は、パンフレット作りまでやらされたんだ」。

――退職者は?

最初の半年間、退職率はじつに6割だった。クリエイティブエージェンシーにしてみれば、それは一大事なんだ。自分が飛ばした大ヒットを知っている人がいてはじめて、社内での価値を認められる世界だから。自分の仕事を誰も見てくれなくなったら、存在していないのも同然だろ? しかも、コンサル会社の契約は、エージェンシーのそれとはかなり違っていて、何でもかんでも機密事項だし。信用という概念は、誰の頭にもない。

――手取りは増えた?

増えるはずだったんだけどね。ベース(基本給)はほぼ同じだけど、その他もろもろを全部、ボーナスとしてもらえる約束だった。エージェンシー時代は、年給8万ドル(約880万円)、ボーナスが1万ドル(約110万円)くらい。買収後は、年給が10万ドル(約1100万円)で、ボーナスとしてさらに5万ドル(約550万円)もらえる、という話だった。なのに、昇給は半年先送りになった。ようするに、大手コンサル企業の仕組みに取り込まれて、すべてをうやむやにされたんだ。ただまあ、かなり条件のいい健康保険には入れたし、新しいPCももらった。新しい携帯も。人事部の機能もかなり充実している、それは確かだ。

――昇給のほうは?

仕事がなくなっちゃったんだ。勝てそうもないピッチ(売り込み)ばかりやらされて、時間を無駄にしていた。で、仕事をしていないんだから、当然、昇給も延々と先送りにされた、と。自分が昇給に値する人間だと証明したくても、そうするすべが何もなかった。上司にはかけ合ったよ。上司の上司にも。でも、誰にもどうにもできなかった。ほんと、どうしたらいいのかね。コンサル会社にいたという経歴が[転職に]有利に働くわけでもないし。

Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)