11月22日にロンドンで米DIGIDAYが開催したDIGIDAY HOT TOPICで、メディアバイイングの透明性に関する非公開セッションが行われた。ここでは、広告主とエージェンシーの双方にとってメリットのあるモデルを、どのようすれば広告主に受け入れてもらえるかについてエージェンシー役員が話し合った。
メディアバイイングで透明性が叫ばれるようになって久しいが、エージェンシー役員は広告主が本当に透明性を望んでいるのか確信を持てずにいる。広告主がこれまで多額の投資を行ってきたメディアの徹底調査が必要なためだ。
11月22日にロンドンで米DIGIDAYが開催したDIGIDAY HOT TOPICで、メディアバイイングの透明性に関する非公開セッションが行われた。このセッションはチャタムハウスルールで進行し、広告主とエージェンシーの双方にとってメリットのあるモデルを、どのようすれば広告主に受け入れてもらえるかについてエージェンシー役員が話し合った。同セッションにおける発言の一部を以下に記載する。
完全な透明性についての現実
「多忙ななか、クライアントのために大きなリソースを割いて、コストと戦略の双方について分析を行ったとしよう。だが、Googleがバックエンドについて変更を行えば、目標が完全に変わってしまう。それまでの労力はすべて水の泡だ」
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「ブロックチェーンについて騒がれているが、広告業界では絶対に普及しないだろう。完全な透明性など誰も望んでいないからだ」
「本当の透明性は、保険など、ビジネスモデルにおいて透明性が効果を発揮する業界でしか実現しえない」
「透明性をいう言葉を耳にしない日はない。あまりにも当たり前のように使われるようになったことで、透明性によって何が得られるのかを理解していない広告主ブランドも見かけるようになった。透明性を要求したので具体的に何をしてほしいのかを尋ねると、『わからないが、他社はどういった要求をしているのか?』という始末だ」
「透明性を回避するには、金の使われ方を知るために時と金を費やすのではなく、メディアバイイングの結果に着目することだ。たとえば150円の投資に対し170円のリターンが得られてさえいれば、メディアによる機械的なディテールについてクライアントは実際のところ気にしていない」
「透明性がまるで広告業界の問題に対する万能薬のように語られてしまうのは危険だ。この問題点をあげればきりがない。たとえば広告主が中小企業で、予算もなければ見合うだけのデータもないのに、透明性のあるアドテクを確立するのは適切なのだろうか?」
「クライアントには提供できる情報は、私が知ることができる範囲のものだけだ。自分が知らない情報について把握している分には良いが、得られない情報について把握できない場合があり、それによって非常に困難な状況に陥ることがある」
「英国外でads.txtにもとづくインベントリを増やすのに苦労している。そのため確認のとれたインベントリ以外からリスクを承知で購入する必要が生じている」
プラットフォームの不都合な真実
「Facebookからどれほどデータが漏洩しようとも、Facebookへの投資は続いている。Facebookにはオーディエンスがいて、活用しないというのは非常に難しい選択だ。厳然とした対処をしようにも板挟み状態になっているのが実情だ」
「GoogleやFacebookは必要な透明性を確保できていない。これはここに集まった全員が同意するだろう。それでも予算の60%は両プラットフォームに投じられている。オーディエンスがいるから投資が行われる。相手がふっかけているのは分かっているのに、誰もが利用せざるを得ないというのが現状だ」
「Amazonはこちらがアトリビューションを把握できるように支援をはじめた。これは驚くべきことだ。FacebookはAmazonと比べてこちらが抱える問題の把握と対処が遅く、柔軟性に欠けている」
「最近、使用額が一定未満の全クライアントに対し、Googleがサードパーティによるデータにアクセスできないようにした事例があった。こちらはそうした全業務を行ってきた。非常に優良なサードパーティのデータ提供企業を探し出したのに、Googleの決定ですべて水泡に帰したのだ」
「プログラマティックに購入をすすめるため需要側で単一のプラットフォームを、という話は多いが、かならずしも可能ではない。たとえばAmazonのデータを使用したいというクライアントがいれば、Amazonの技術を使用しなければならない」
業界はGDPRの待機状態
「GDPRで困ったことになったというケースはあるのか? 誰もが知りたがっているはずだ」
「私たちがクレームに当たるかどうかの判断を行うときに影響力があるのは、パブリッシャーからの直接の申し立てと、サイトのロングテール部分を担当するDSP(デマンドサイドプラットフォーム)からの申し立てだけだ。DSPが(インベントリのうち)ある対象をクレームでないと判断したときや、コンセント・マネージメント・プラットフォーム(CMP)を認識していないときは難しい状況になる。DSPがインベントリをクレームでないと主張したために取引がダメになったことがある。それをサプライヤーに伝えるわけだが、サプライヤーは混乱する。DSPのエラーの場合もあれば、それ以外に原因がある場合もあるからだ。そういったトラブルシューティングは日常茶飯事だ」
「GDPRの問題は、専門家がいないこと、基準がないこと、そして勧告はあったものの集団訴訟に至ったケースはないことだ」
「GDPRの主要な理念は素晴らしいが、問題点も山積している。あまりの問題の多さに絶望することも多いが、GDPRを受け入れて前に進んでいくしかない」
Digiday Editors(原文 / 訳:SI Japan)