TikTokが、9月20日までに米国事業を売却するか、トランプ米大統領が8月6日に署名した大統領令がもたらす結果(米企業との取引禁止)を受け入れるかの岐路に立たされた(※原文記事は8/12公開。その後出された8/14の大 […]
TikTokが、9月20日までに米国事業を売却するか、トランプ米大統領が8月6日に署名した大統領令がもたらす結果(米企業との取引禁止)を受け入れるかの岐路に立たされた(※原文記事は8/12公開。その後出された8/14の大統領令では、90日以内の米国事業売却を求めている)。これを受け、メディアバイヤーらは、TikTokプラットフォームでクライアントのマーケティング活動に投資するのを控えている。
TikTokが米国で事業を継続できる可能性について、大統領令が発令されるまでは「多くの広告主が慎重ながらも楽観的な見方を示していた」と、ネクスター・デジタル(Nexstar Digital)でソーシャル担当アカウントディレクターを務めるメーガン・ラオ氏はいう。「だが、9月末まであらゆることが不透明になったため、我々は計画を延期し、TikTokの今後の見通しが明らかになるまで別のプラットフォームを利用するよう勧めている」。
メディアバイヤーらは、TikTokが引き続き米国でサービスを運営し、米企業との取引を継続できるようにするために、期限内に事業を売却する可能性が高いと楽観視しているようだ。だが同時に、トリラー(Triller)やインスタグラムの「リールズ(Reels)」など、TikTokの競合プラットフォームをテストする広告主が増えると予想している。「第4四半期の予算を急いでTikTokに注ぎ込もうとしている企業はない」と、あるメディアバイヤーは語った。
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「ブランドは常に新しいコンテンツが作られることを望むため、より安定性の高い既存のチャネルへの取り組みを強化している」と、ショッピングアプリの「キックバック(Kickback)」を手がけるマーケット(Markett)のCEO、フランキー・バーンスタイン氏はいう。「我々はコンテンツクリエイターと長い時間を過ごし、インスタグラムでの取り組みに注力している。(インスタグラムの)フォロワーに投資したほうが、9月になっても確実にその投資に見合った価値を得られるからだ」。
Facebook広告ボイコットの影響
一方、TikTokですでにキャンペーンを展開中の広告主は、今から9月半ばまでまだ十分な時間があるため、TikTokから広告費を引き上げずにキャンペーンを継続する可能性が高いとバイヤーらは見ている。また、7月に起こったFacebookの広告ボイコット運動の影響で、マーケターはソーシャルプラットフォーム予算の投資先を臨機応変に変えることに以前より慣れたようだ。
「あのボイコットは、マーケターにとって、大きな出来事が起こったために大急ぎで行動を取らなければならないような状況に備えるきっかけとなった」と、ハバス・メディア(Havas Media)のデジタル戦略担当エグゼクティブバイスプレジデント、サルギ・マン氏は話す。「マーケターは、(すばやく)ほか(のプラットフォーム)を調査し、評価できる体制を以前より整えている」。
とはいえ、広告主がTikTokに費やしている金額はFacebookに支払っている金額とは程遠いため、TikTokから広告費を引き上げるのはFacebookと比べてはるかに簡単だ。同じように、広告主が得られるビジネス成果という点で、TikTokの重要性はFacebookにははるかに及ばない。
再びブランドセーフティへの懸念
また、広告主がTikTokから一斉に離れるような事態は起こっていないものの、今回の大統領令をきっかけに、広告主は再びブランドセーフティの懸念に目を向けている。しかも、彼らが懸念しているのは、広告の横に表示されるコンテンツの種類をほとんどコントロールできないといった、新しいプラットフォームによくある問題だけではない。消費者がデータプライバシーに敏感になるなかで、TikTokの信頼性に関するリスクも懸念するようになったと、メディアバイヤーらは述べている。
TikTokの米国での事業がマイクロソフト(Microsoft)やTwitterなどに買収されれば、TikTokのブランドセーフティの問題を解決するのに役立つだろう。
「我々は今、状況を見極めるために様子見をしているところだ」と、メディアおよびマーケティング分野の独立系コンサルティング企業エビキュイティ(Ebiquity)で北米担当マネージングディレクターを務めるジェド・マイヤー氏はいう。「ブランドの立場から見れば、TikTokがマイクロソフトのような優良企業の手に渡ることが望ましい。そうなれば、広告主はデータプライバシーの問題が解決されることに確信をもてるようになり、TikTokに投資するようになるはずだ」とマイヤー氏は語った。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)