「エージェンシーは不安定すぎて、ビジネスモデルがない」:エージェンシーの人事担当幹部の告白

この10年間に起きた広告ビジネスの急な進化は、エージェンシーの人事チームにたくさんの課題を示してきた。多くのエージェンシーが(継続的な業務の代わりに)より多くのプロジェクト単位の業務をこなし、インハウスエージェンシーと入札で競争すらするなかで、人事責任者は、そうした仕事をするのに適したタイプの人材の獲得とつなぎ止めを任されている。

米DIGIDAYは「告白」シリーズにおいて、独立系エージェンシーの人事責任者にインタビューを行い、一流のプロを採用しようとしていて直面するプレッシャーについて聞いた。この人事責任者はエージェンシーの運営も監督しているので、予算が非常に圧迫されていることを知っている。

このインタビューは編集して要約している。

──いまはエージェンシーで働いてもらうのが、さらに難しくなっているのか?

 
なっている。特に、本当に優れたコピーライターやアートディレクター、デザイナーであればインハウスやフリーランスで働くことができるので、いまでは選択肢が増えている。彼らは、バカバカしい社内政治や人の入れ替わりが激しいエージェンシーでの生活に巻き込まれたくないので、フリーランスでいたがる。金、従業員、新しい仕事がビーチの波のように押し寄せては引いていく。年を取ると、なおのこと、不安定な環境に置かれることになる。

──仕事への影響は?

人事の観点から言えば、管理が難しい。この業界の人間は、健全なワークライフバランスを維持したがる。だから、いま存在する人材をつなぎ止め、従業員ファーストで、従業員はロボットではないと認識しようとすることが、大事だ。それに、人材をめぐって、ほかのエージェンシーと競い合っているだけではもうない。クライアント側やフリーランス(での活動)とも競争している。とはいえ、人々がもうエージェンシーで働きたがらない理由はよくわかる。

──なぜそんなことを言うのか?

私には卒業したばかりの娘がいて、何かほかのことをするように言っている。(エージェンシーは)不安定すぎる。ビジネスモデルがない。誰もこの業界を理解していない。もし理解しているというのであれば、自分と相手に嘘をついている。(指定広告代理店[agency-of-record:以下、AOR] としての)大量の仕事や潤沢な経費があった日々は過ぎ去った。

(AORとしての)ふたつの仕事があったとして、そのひとつを失えば困ったことになる。レイオフの繰り返しだ。私は立場上、常に組織の大きさのバランスを取り、従業員をつなぎ止めようとして、報酬や手当の面で競争力があるようにし、予算を大幅に削減する顧客に対応している。

──エージェンシー生活が不安定になった特定の時期があったか? その時期を示してもらえるか?

おそらく1年前だ。率直に言うと、(娘は)広告業界向きの性格ではない。いつか、突然変異遺伝子が見つかり、広告業界にいる者は皆、その突然変異遺伝子を持っていることがわかると確信している。ハイリスク・ハイリターンの業界で、忍耐力が高くなければならない。かなり変化してきたが、変化しきれていない。この業界が1年後にどのようになっているのか誰にもわからない。誰かが飛び降りるのを待っているシーソーに乗っているように感じる。

──広告ビジネスがそれほど不安定な時に優秀な人材をどうやって引き付けるのか?

求めている人材を見つけるのに、これまでより時間が掛かる。(望ましいと思う優秀な人材の)母数がどんどん小さくなっているように思える。最近雇った女性は、エージェンシーの慌ただしい仕事ぶりにうんざりしていたので、当社を選ぶか、クライアント側に行くか、天秤にかけていた。

チャンスを与えてくれるよう口説くことに努めなければならない。皆に言っている。ここでは従業員を最優先している、入れ替わりが激しい状況にはならない、と。だが、過去にはレイオフをしたし、ひどいものだった。誰が解雇されるか事前に知っているのは嫌なものだ。

──すべてのエージェンシーが従業員を最優先すると言っているわけではないのか?

従業員を最優先しないほかのエージェンシーで働いていたことがある。二度とああいうことはしたくない。大勢の従業員を解雇する立場にいるより、ウーバー(Uber)のドライバーをしているほうがいい。私には重荷だ。

私の仕事でいちばん大変なのは、何もかもわかっていて、そのバランスを取らなければいけないことだ。クライアント、もしくは仕事の一部を失う場合に、私が真っ先に考えるのは、従業員を失わなければならないのか、ということだ。スプレッドシートに記載された数字として従業員を見ているわけではない。従業員は、住宅ローンや賃貸料、子どもを抱えている。

──プロジェクト単位の仕事への移行で従業員にとってはそれがさらに厳しくなるのか?

従業員数に見合っていることが大事だ。仕事は次々に舞い込む。現時点では目が回るほど忙しいが、そのうち仕事が途絶えるだろう。当社は大勢のフリーランサーと契約している。忙しくなると、多くのフリーランサーで従業員の不足を補っている。

──ビジネスの変化する性質以外に、人事担当のもっとも大変な部分は何か?

いろいろな性格の人間に対応している。セラピストになった気分がする時もある。皆の活力に1日中対応するのは難しいし、それについて誰にも話せない。そんなことをすれば、信頼を裏切るだけになる。それがおそらく、エージェンシーで働いていてもっとも難しいところだ。人事担当の友人のグループがいるが、皆が互いに愚痴をこぼしている。

だが、従業員が抱える問題を聞くのは、感情的に疲れるとしても、ここでの私のもっとも重要な職務だと思う。現場で行動に表すより、遠慮なくここに来て私のオフィスで吐き出してほしい。私たちはすべてを個人的な話として受け止めるが、九分九厘、私たちとは何の関係もない。よかれと思ってのことだと常に考えてほしい。必ずしも私たちのことではないのだから。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)