「白人の同僚たちによって、ダイバーシティのご意見番にされている」:アドテク企業の黒人シニアエグゼクティブの告白

とあるグローバルアドテク企業――黒人スタッフのうち、社内ではもっともキャリアの長いこのエグゼクティブは、疲れ果てていた。

ジョージ・フロイド氏が警察官に殺害された事件がきっかけで、人種差別がいかに社会に深く根を下ろしているかを精査する動きが、数週間にわたり広がっている。これを受け、ある黒人シニアエグゼクティブの下には、白人の同僚たちからアドバイスを求める声が殺到しているという。

しかし同氏は、会社内における人種差別関連の問題をたったひとりで解決するプレッシャーを感じているという。匿名を条件に、業界の裏事情を赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズ、本稿ではこのエグゼクティブに、不本意にも自分の会社で非公式なダイバーシティインクルージョン関連のアドバイザーなってしまったことへのストレスを語ってもらった。以下のインタビューは、読みやすさのために若干の編集を加えている。

──もっともキャリアの長い黒人エグゼクティブであることは、あなたの職場では何を意味する?

さまざまな角度からリクエストが飛んでくる。自分の会社が、どのようによりダイバーシティとインクルージョンを持つことができるか、その課題に影響を与える機会を持てることには感謝している。しかし、今回のような悲惨な事件が起きないと、社内の関心を高めることができなかったのは、非常に残念だ。社内だけでなく、社外の業界人からも、どうしたら良いか私にアドバイスを求める白人がとても多い。本当にフラストレーションを感じている。

こうした、社会に構造的に根を下ろしている偏見は、黒人が生み出したわけではないのだから、黒人たちだけで問題を解決することを求めないで欲しい。私に意見を求めるのなら、彼らがそれぞれリサーチをした上で、社会が前進するために何をすれば良いか、自らの考えを持って話しに来てくれたらと思う。

──白人の同僚からは、どのようなことを尋ねられるのか

質問の内容はさまざまだが、いまのところ彼らの質問は、以前から取り組まれるべきだったことに関する内容が多い。たとえば、黒人の従業員を見つけるのは難しいため、雇う黒人の数を増やすにはどうしたら良いか、といった質問を何度も尋ねられたが、これは全く事実ではない。また、彼らのカンファレンスでスピーチをしてくれる黒人のエグゼクティブたちを見つけるには、どこを探したら良いかといった具合だ。これらの質問をしてくるエグゼクティブたちが、アドテクにおける問題を解決するのと同じ思考で取り組んでいれば、そもそもこんな会話は起きていないだろう。データを使ってグローバルビジネスを構築した人たちが、こんな質問をしてくるんだ。

同じように、データを中心に据えた考え方で、会社として人種差別に対応するべきだ。ダイバーシティ関連の数字を公表することは良いスタートだろう。しかし、これ自体は完璧な回答ではない。数字は雇用に際して、より良い判断をするプレッシャーを生んでくれることは間違いないが。

──黒人であることが原因でキャリアが遅れることはあった?

黒人だから昇進できなかったという、具体例を提示することは必ずしもできない。しかしキャリアの初期から、出世をするためには、多くの同僚たちよりも2倍働いて、常にベストの状態を示す必要があるとわかっていた。人々は一緒にいて安心で、居心地の良い人を雇い、出世させる傾向にある。どんなアドテクベンダーでも、Webサイトの「About Us」のページに行けば、ダイバーシティが欠如していることが見て取れる。特にエグゼクティブレベルでだ。

──困難な状況のなか、どのように現在のキャリアを築くことができたのか?

勤勉さに代わる物はない。人種、性別に関係なく、上に進みたければそれに向かって一生懸命働く必要がある。そうはいっても、私のキャリアを振り返ると、何度も周囲に安心してもらうために自分を曲げなければいけないことがあった。それによって、私の自分らしさ、もしくは居心地の良さが犠牲になるとしてもだ。これはよく「コードスイッチング(言語や習慣などの変更を行うこと)」と呼ばれるが、残念なことに、白人が大多数を占める業界において、黒人は頻繁にコードスイッチングを行っている。しかし、年齢を重ね昇進していくと、コードスイッチングをする必要性を感じなくなる。私も、いまは毎日仕事で完全な自分を見せることができている。

──年齢を重ね昇進していくと、昇進の機会は次第に減っていく。こういったことは体験するか?

それは、確実に心配事のひとつだ。出世するにつれて、さらに上に登るチャンスは少なくなり、競争も激しくなる。

──アドテク業界において、マイクロアグレッション(悪意の無い、無意識な小さな差別行為)を通し、人々の無意識の偏見を体験することはあるか? もしあれば、説明してもらえるか。

もちろんある。ふたつ例を挙げる。

白人の同僚と(食事や飲み会などに)出かけることがあるが、ほかの白人男性が加わった際、彼は白人の同僚には「Hi(やあ)」や「How you doing?(調子はどう)」といった(通常の)挨拶をするのに対して、私に対しては「my man(兄弟よ、友よ、といったくだけた表現)」と、ぎこちないスラングを使ってくる、といった具合だ。

今年、高級なホテルで業界カンファレンスに出席していた。そのロビーで、白人男性4人と私を含めたクライアントミーティングに出席していた。そのミーティング中に、関係ないホテルの宿泊客(年配の白人男性)が私だけに向かって、「ここはコンシェルジュデスクですか?(高級ホテルなので、黒人の宿泊客はいないだろうという無意識から来る発言)」と尋ねてきた。

SEB JOSEPH[原文:‘My white colleagues are looking to me for answers’: Confessions of a Black ad tech exec

(翻訳:塚本 紺、編集:Kan Murakami)