メディア業界における50年で、私が学んだ12のこと:メディアスミス創業者 D・スミス氏の人生訓

本稿の筆者であるデーヴィッド・スミス氏はエージェンシー、メディアスミス(Mediasmith)のファウンダーである。

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私が30年前にメディアスミスを創立したとき、今日の意味での「デジタル」は存在しなかった。それまでの伝統的な意味でのメディアにおける20年の経験を持っていた。スチュワート・ブランドの『メディア・ラボ:MITで未来を発明する(The Media Lab: Inventing the Future at M.I.T.)』は読んだ。この本はコンピューター、エンターテイメント、メディアの「収束」について言及していたが、当時の私はそれがどう実現するか理解していなかった。

私たちの最初のクライアントがスターサイト・テレキャスト(Starsight Telecast)で、今日のインタラクティブTVガイド(IPG)として知られる形を発明したところだったのは救いだったといえる。しかし、それはインターネットが人々の目に見える形で台頭する3〜4年前のことであり、そこからさらに1〜2年が経ってようやく、我々のビジネスの必要不可欠な一部となった。当時はデジタルメディアとは呼ばれていなかった。当時は「インタラクティブメディア」と呼ばれた。

しかし、私の体験を通じて、デジタルメディアこそが将来であり、私と私の会社はたくさんのことを学ばねばならないと、私は分かっていた。そして、その学びは、まだ終わっていない。私の好奇心こそが最良の友人だった。しかし、この過去50年間を振り返ってみると、我々が克服した技術的な障害や、デジタルメディアが達成した進歩よりも、私がキャリアを通じて学んだ、もっとも重要な教訓たちが根本的に、いかに人間の本質に関することであったか、ということにもっとも驚かされる。

現在、メディア業界で働いている人々には、私のメディア業界における長いキャリアにおける体験をもとにした本稿を読んで思い出してほしい。メディアにおいて我々がもっとも大事だと考えていることは何か。それは、ほかのビジネスにも通じることだ。

1. 自分が楽しめることをやれ

自分が楽しめるようなキャリアの道を作ることは、わがままではない。自分が真に好きなことをすれば、上手になる可能性は高くなる。その場合、自分のクライアントも含めて、関わった全員に良い結果をもたらす。

また同様に、仕事のなかで楽しい時間が生まれることは、まったく問題ではないと覚えておくこと。仕事を完了させることと、楽しい時間を過ごすことは、お互いを排除する要素ではない。理想的な世界では、このふたつの領域はベン図において、まったく重なりあうだろう。

2. 長期的な視点で思考する

デジタルほどダイナミックな業界においては、短期的な思考の終わらないスパイラルに陥ってしまうことがある。そのスパイラルに抵抗しなくてはいけない。長期的な視点で思考しようと意識して努力することで、短期的な目標の優先順位を決めるときにも、自分の取り組み、努力の価値を測ることができるようになる。

ときに立ち止まって、自分に問いかけるといい。大きな視点から考えたときに何を達成したいのか。それを達成するためには3年後にはどのような形になっていないといけないか? 5年後なら? 自分の方針をそれに沿って決める。長期的に取り組んでいるのであれば、お金は最終的にはやって来る。

3. 助けられたら、人を助ける

できるときには、人を助けることをためらわない。こういったチャンスは贈り物だ。自分の行動のなかで他人のことを考え、自分の身の回りの人間の世話をすることで、自分の足下に力強い基盤を作ることになる。困難な時期が必ずやって来るものだが、そのときに、このベースは支えになるだろう。

4. 信頼できる人が誰かを覚えておくこと

その信頼できる人を自分のネットワークにキープすること。環境のせいで職場が変わってしまったり、袂を分かつようなことになってもだ。必要なときは救いを求めることをためらってはいけない。また、ミーティングや議論を断ってはいけない。何度も、自分が想定していなかった結果がやってくることに驚かされるだろう。なるべく注意と敬意を払うこと、そして学び続けること。

5. 自分のクライアントの面倒をちゃんと見なさい

契約をしっかりと守りなさい。常にだ。やると言ったことは必ずやり、可能であれば頼まれた以上の成果を渡す。自分ではシンプルな作業のつもりでも、それがほかの誰かにとっては信じられないほどの価値をもたらすことがある。そのとき、その人々は覚えているものだ。

6. 朝の力を過小評価してはいけない

自分は朝型ではないと考えている人もいるだろう。それは理解できる。しかし、しばらく朝型の生活へのシフトに挑戦していなかったら、もう一度挑戦してみると良い。それで無理でも、またあとで挑戦する。早朝は自分だけの時間だ。時間が経つにつれて、社会における話題や活動が大きくなってきて、自分の時間が他人のものになる。朝は美しい、平穏なチャンスを与えてくれる。その時間に自分にとって大事な作業を、クリアな頭で集中して行うんだ。

7. 過去は水に流して忘れる

私が学んだ教訓のなかでも、もっとも難しかったのはこれかもしれない。過去は変えられない、これはとてもシンプルな現実だ。いま何が起きているか、にだけ影響を与えることができる。いまのアクションがより良い未来につながる。仏教はこの点を正しく捉えた。

8. 正直に、隠し事がなくいるように

ビジネス取引において透明性は面倒だ。短期の収益を最大化してはくれない。しかし、これが正しいやり方だ。長期的な信頼を構築する。

9. 変化を受け入れる

2011年、マーク・アンドリーセンは私たちに「ソフトウェアが世界を食べている」と言った。彼は正しかった。それが多くの人を怖がらせた。しかし、デバイスやセンサーが世界を取り込んだように、結果が変わることはなかった。彼の観察は現実へと拡大したのだ。

誰か賢い人物が、避けられない変化のはじまりを観察したときには、それに飛び乗るといい。自分の恐怖を切り離すことが重要だ。発明を繰り返すことで、人生は面白くなる。そして、チャンスを生む。

10. ユーモアのセンスを失ってはいけない

ときにこれは難しいが、不可能ではない。困難なときにもユーモアを実践すること。自分にとっても、物事が楽になる。また、まわりの人間がもっと笑うようになるだろう。

11. 仕事だけの人間になるな

仕事とは切り離れた道のりを頭のなかに用意してくれる、仕事の外の興味を追求すること。可能であればひとつ以上持つこと。私の場合は音楽だ。私は音楽に没頭する。ギターを弾く。歌を歌うし、ほかの人にも自分と一緒に歌うように勧める。新しい歌を常に覚える。

仕事以外の何かに没頭することに時間を使うことで、解決しようとも思っていなかった問題の解決法を見つけることもときにある。我々の脳はそういう点で非常に優れている。

12. 最後に、自分に厳しくならないように

上に挙げたことすべてを、私が出来ているわけではいない。これらの教訓を学んできた。これらはノートに書いたこともある。しかし、ときに私も、あらためて学ぶ必要がある。それでも良いんだ。大事なのは教訓に取り組もうという気分でいることなのだから。

David L. Smith(原文 / 訳:塚本 紺)