Facebookの失態を(再び)受け流す、メディアバイヤーたち:動画視聴時間の過ちが再燃も

Facebookが動画視聴時間を過大に算出していた問題が発覚したのは2016年だが、過大な指標によって判断を誤ったとするマーケターが訴訟を起こしたことで、この問題が再燃している。原告は、Facebookが広告主に情報公開する1年以上前からこの間違いを認識していたと主張している。9月22日に、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が初めて報道した内容だ

水増しされた指標が「動画への方向転換(pivot to video)」に結びついたのか、そうでないのかについて、ジャーナリストによる議論が続くなかで、広告のバイヤー各社はこの訴訟に対してあまり動揺を見せていない。原因のひとつは、この訴訟によって新たな計算ミスが発覚したわけではないためだ。今回の訴訟は、単にFacebookが情報公開の前から問題について認識していたと、原告が主張しているに過ぎない。バイヤー各社は、Facebookが以前から認識していたことが証明されない限り、これまでどおりFacebookでの広告購入を実施していくことを公言してきた。

あまり懸念が広がっていない背景には、Facebookがこれまでも頻繁に過失を繰り返してきたという事情もある。2016年のスキャンダル発生時に、とある主要なホールディングカンパニーで広告部門の役員を務め、現在ではより小規模なデジタルマーケティングエージェンシーに勤めている人間に話を聞いたところ、2016年から2017年にかけてFacebookとクライアントの間では、この指標のスキャンダルについての話し合いが多く行われてきたという。同役員は今回の新たな訴訟を、株式市場による政治的問題への対処になぞらえて次のように語った。

「今回の訴訟は、すでに関係者が念頭においていた問題に対する訴訟だ。たとえば政治的に何かが起こると、誰もが株式市場に影響が出るかどうか話題にするものだ。これはすでに念頭にある出来事についての話であり、今回の件でのFacebookの問題の行方の見守り方もそれに近い。こうした問題が存在することは、もともと分かっていたからだ」。

Facebook側からの見立て

Facebookの名誉のために書いておくと、同社は過失を発見するたびに積極的に情報公開を行ってきた。また同社は測定審議会(Measurement Council)を立ち上げた。これはクライアント審議会(Client Council)を拡張した組織で、広告主がFacebookの測定手法に対するフィードバックを提供することができる。Facebookは今年のはじめにサードパーティによる審査を積極的に導入したことで、メディアレーティング協議会(Media Rating Council)から認証評価を受けている。

バイヤーは、Facebookが信頼を回復するための責任を果たそうとしていることを認識しているのだ。英国を拠点とするデジタルマーケティングエージェンシーのジニー・ゴールズ(Genie Goals)でペイドソーシャルマネージャーを務めるシモン・ジャレッド氏は、2016年のスキャンダル以降「数千ポンドの」払い戻しを受け、翌年行われたデジタルマーケティング・カンファレンスのDMEXCOでもFacebookの役員による謝罪があったと語る。ジャレッド氏は「動画の実際の視聴指標について、(Facebookからは)文字通り数え切れないほど釈明を受けてきた」と語り、いまではクライアントに対してもこの指標について報告したり、この指標を目標にすることもないと明かす。それでも同氏は今回の訴訟について賛成の立場をとっており、次のように指摘する。

「Facebookが今回の件について追求されることは非常に重要だ。こうした指標に基づいて、多額の資金を投入してきた広告主は多い」。

同氏が指摘する今回の訴訟の重要性について、Facebookの広報担当は米DIGIDAYに対して次のようなメールを送っている。「今回の訴訟によって得られるものはなく、当社はこうした詐欺の申し立ての棄却に関する申請を行った。当社はいかなる形でも、今回の問題について当社のパートナーに対して隠蔽を試みたことは無い。当社はカスタマーに対して発見した時点で過失を報告しており、問題についてヘルプセンターへ通知を行い、説明を果たしてきた」。

動じないバイヤーたち

ウォールストリート・ジャーナルの報道から現在に至るこのスキャンダルは、Facebookにおける広告購入に影響をおよぼさないとしているメディアバイヤーもいる。もともと問題となっている指標を重視してこなかったメディアバイヤー各社だ。問題となっている指標はユーザーが動画の視聴に費やした平均時間だが、今回の水増しは3秒以上視聴された場合のみを平均時間にカウントしたために発生した。この過失により、同指標は60から80%水増しされた可能性がある。

このような計算ミスはあったものの、とりわけダイレクトレスポンス広告を重視するメディアバイヤーのなかには「動画視聴」についての指標は重視していないと語る企業もある。

ソーシャル・アウトライアー(Social Outlier)の広告ディレクター、デヴィッド・ハーマン氏もまた「優れた広告主であれば、前々から動画視聴は無価値な指標であり時間や金を費やすに値しないことは分かっていたはずだ」としている。

ジニー・ゴールズのジャレッド氏は、以前は動画視聴の指標を参照していたが、いまではCPAやCPC、クリックスルー率やROAS(広告費用対効果)といったほかの指標を重視しているとし、次のように語った。

「当社では動画を多く利用している。だが動画視聴の指標を参考にしているわけではない。ほかの指標を参照し、それに基づいてクライアントに報告している。動画視聴の指標は信頼に足るものではないと感じるからだ」。

指標はこれだけではない

あるデジタルマーケティングエージェンシーの役員は、今回の水増しのせいで誤った判断を下した企業もあるかもしれないが、これが価値を測る唯一の指標であったことは一度もないと指摘する。

「全体を見て判断しなければならない。この指標が長期間に渡って過大に算出されていたことで、動画へと流れた資金は実際に増えただろう。だが、効率的なCPMや優れたターゲティング、非常にスケーラブルなオーディエンスなど、見るべき指標はほかにも沢山ある」と語る。

実際に、Facebookはいまでも「効率的なCPM」を提供し(もっともニュースフィードを取り巻く競争は激化しているが)、「優れたターゲティング」(GDPRとデータプライバシーのスキャンダルで風向きが変わったが)や非常にスケーラブルなオーディエンス(欧米での成長は鈍化しているが)を実現できるプラットフォームだ。一方で、デジタルマーケターならば誰もが知っているように、Facebookは一貫して一貫性に欠けるプラットフォームでもある。

Kerry Flynn(原文 / 訳:SI Japan)