匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう、DIGIDAYの告白シリーズ。今回は、持株会社が所有するメディアエージェンシーの内情に詳しいエグゼクティブが、クライアントたちはANAによる透明性レポートから受けたショックから、いまだに立ち直れておらず、信用はかつてないほど低いと語る。
マージンの圧縮と新たな競合相手のために、エージェンシーたちは逆風にさらされている。
匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう、DIGIDAYの告白シリーズ。今回は、持株会社が所有するメディアエージェンシーの内情に詳しいエグゼクティブが、クライアントたちはANA(Association of National Advertisers:全米広告主協会)による透明性レポート(Transparency Report)から受けたショックから、いまだに立ち直れておらず、信用はかつてないほど低いと語る。
読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
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――エージェンシーとクライアント間のもっとも大きな緊張とは?
メディアと、おそらくはクリエイティブ側でも同様に、かつてクライアントとエージェンシー間の信頼関係は、これほど低くなかった。2年半前のANAによる報告によって、「わかりました、はっきりさせましょう。これが我々のビジネスモデルと詳細です」と、基本的に誰もが報告するようになった。しかし、それでは不十分だった。
――それは、なぜ?
なぜなら、透明性とは確保しづらいものだからだ。透明性には段階がある。たとえば、あるケースでは、契約内容を見て請求するものと、請求しないものについて率直に共有する。つまり、我々が20%のマージンを取るということをかつては伝えていた。それは、グロス・メディアアカウントの20%なのか、それともネット・メディアアカウントの20%なのか、その区分けは曖昧だ。我々はすべての秘密を開示してこなかった。そして、一部のクライアントに対して手の内をすべて見せたとしても、それはその契約を一度調整したことを意味していた。
――クライアントは現在、どれくらい詳しく契約を精査している?
基本的に、みな疑心暗鬼になっている。そして、「事の成り行きが見えないので、騙されているにちがいない」という。特にデジタルメディアでは、ANAの報告によりすべてが複雑になり、DSP、SSP、PMPなどが関わる新しいプログラマティックバイイングに対し、みな首を横に振り、理解しているふりをしている。しかし、状況を理解している人たちは巧みにそれらを利用した。便乗値上げがあったことは確実だ。大手持株会社が便乗値上げをしていたとは思わないが、クライアントが認識している以上のものを得ていた。莫大なマージンを取った広告インベントリベンダーやセラーが存在していた。
――クライアントたちが悪戦苦闘しているのはなぜ?
クライアントたちはその仕組みをまったく理解していなかった。そして彼らは自分たちの予算を管理する方法を知らない。誰に説明責任があるのだろう? 基本的には、弁護士がプログラマティックトレーダーに同席し、それを法律用語に落とし込んでいく必要がある。誰もそれをしてこなかった。たとえ善良な人であっても、依然として騙されていることに気づく。オーナーシップとまだ実現していない説明責任の割り当てがある。
――だが、信頼を失ったのはエージェンシーだ。
信頼を失ってしまったのは、エージェンシーにとって最初の致命的な間違いだ。透明性が話題になった当初は、彼らも信頼を得ていた。彼らはそれを認識すべきだった。エージェンシーの透明性は十分ではなく、そのため恥の上塗りを招き、プロダクト制作と請求書は突き返された。何が起こったのか? エージェンシーは返金し、次回から請求金額を半額にするといったのだ。彼らは不利な条件に同意した。たとえば、クライアントが30%請求され、経費は24%であることがわかると、エージェンシーは請求を30%から15%に引き下げた。エージェンシーは過剰に補償し、過剰に謝罪した。その後、彼らは未熟な人材を配属しはじめ、質の高い業務を請け負うことをやめた。
――これを機にコンサルタントたちの評判がよくなっている。
アクセンチュア(Accenture)やBCGといった企業のことだろう。3年前を振り返ってみよう。ブランドがアクセンチュアを雇い、「エージェンシーは信用できないから、監査を実施したい」といったとしよう。その監査人は契約上の曖昧な点を明らかにする。監査が実施されれば、すべてのファイルが提示される。そして、彼らはそれを見てこういうだろう。「あなたたちはつけこまれている。エージェンシーは100万ドルを支払うべきだ」と。そうしたことが数多く発生した。そして、コンサルタントは、「これは儲かる商売だから、自分たちがエージェンシーに取って代わろう」というのだ。
――つまりコンサルタントたちの勝ち?
問題は、クリエイティブの立場からいえば、それは悪夢みたいに感じられるということだ。彼らのなかにはコミュニケーション業界での職業経験を持つものがいるかもしれない。問題解決に関して幅広い経験があるかもしれない。しかし、コンサルタントたちは全員がMBAを取得したオペレーションを可能にし、そこからより良い将来を導き出す人たちだ。
――つまり、これからどうなる?
いまは不確かな時代だ。メディアはうまくやっている。我々は目標を達成している。彼らは我々がズルをしていることを見つけ、その後、また我々を呼び戻すといった感じだ。いまや我々は何でもやる。彼らを再び失望させることはできない。実際に行われている作業の評価が下がっている。その職業に対する敬意がまったく欠けているのだ。