多くの広告主が自分たちのブランドストーリーを伝える方法としてブランデッドコンテンツに関心を示している。しかし、多くのブランドにとってパブリッシャーの助けを得てブランドを宣伝するのは未知のことだ。大手メディアエージェンシーはこうしたコンテンツキャンペーンのためにコンテンツスペシャリストをさらに増やしている。
ピュブリシスメディア(Publicis Media)のクライアントが、ブランデッドコンテンツを含むキャンペーンの実施を望むと、スパークファウンドリー(Spark Foundry)のコンテンツショップのスタッフがストラテジスト、アカウント、広告バイヤーに加わってキャンペーンを計画する。タレントの選出、動画のセッティング、最終カットのレビューなど、コンテンツの制作段階で、スパークファウンドリーのさまざまなソーシャル、パブリッシング、およびデジタルのエキスパートが関与するようになる。
多くの広告主が自分たちのブランドのストーリーを伝える方法としてブランデッドコンテンツに関心を示しており、パブリッシャーたちは普通のコンテンツのように見えるキャンペーンに自らの編集ノウハウを利用し、収益を上げることに魅力を感じている。しかし、多くのブランドにとってパブリッシャーの助けを得てブランドを宣伝するという考えは未知のことであり、多くのメディアエージェンシーはコンテンツ制作の経験がないため、そうしたキャンペーンには複数のフォーマットに分かれたコンテンツがたくさん含まれている。キャンペーンのクライアント、エージェンシー、一般的なデジタルディスプレイ広告よりもパブリッシャーのコンテンツスタジオといったクリエイター間でさらに多くのやり取りが必要になる(そして、彼らの苦悩やあとから関与してくる部門は、最終的に利益に干渉するようになる)。
大手メディアエージェンシーはこうしたコンテンツキャンペーンと争うためにコンテンツスペシャリストをさらに増やしている。スパークファウンドリーはピュブリシスのコンテンツ制作をけん引している。電通イージス(Dentsu Aegis)のカラUSA(Carat USA)には、こうしたキャンペーンの管理に携わるプロジェクト管理、制作、ジャーナリズムの経験を持つ約30人のコンテンツ専門家からなるチームがある。ホライゾンメディア(Horizon Media)もこの方向に移行している。パブリッシャーも、そのような役割に対応する中規模のエージェンシーの台頭を認識しはじめている。ある者は、彼らが取引しているエージェンシーの半数がその役割を担うスタッフを設けているという。
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「これまでは、隣のチームに丸投げすれば、問題を解決して、投げ返してくれていたかもしれない。壮大な計画があるつもりでいて、結果的にすべてうまくいかないことほど最悪なことはない。我々は、こうした重要な情報交換の会議でそれらを取り除いていく。ブランデッドコンテンツスタジオとは顔を突き合わせて話すので、電子メールや伝言ゲームは生じない。反対されれば、通常は話し合いで解決する」と、スパークファウンドリーのバイスプレジデントであり、ブランドコンテンツのクリエイティブ責任者のエリン・ボーゲル氏は語った。
ブランドは業務支援を必要としている
「これまでエージェンシーは、こうした予算が低いキャンペーンに対して、費用を追加するだけの価値があるとは考えていなかった。だが、ブランドはエージェンシーに対して、この職務を作り出すよう働きかけもしている」と、本件に関して話す権限を持たない大手ブランドのシニアコンテンツエグゼクティブは述べた。
「クライアントはキャンペーンの効果を知る必要があり、パブリッシャーに何をさせるべきかについては迷っている。クライアントはどう判断してよいかわからないので、エージェンシーの助けをあてにしている。パブリッシャーとの新しい関係に興味を示すことや、結果を最大化し苦悩を最小限に抑えるための専門知識の習得に、ブランドの誰もが関心をもっていることをエージェンシーは認識していると思う」と、このエグゼクティブは語った。
過去数カ月で、これらの役割はプロセスのさらに早い段階で関与しはじめている。カラUSAでは、これまでのようにパブリッシャーを決定してからコンテンツスペシャリストを関与させるのではなく、提案段階のクライアント会議からすでに参加させている。カラUSAのチーフストラテジーオフィサー、アンジェラ・スティール氏は、変革を推し進めることは、エージェントが消費者をもっと良く知り、さらに細かくターゲットを絞ったキャンペーンを開発する必要性が高まっていることを認識することだと述べる。
「我々はより的確に個人をターゲティングできるが、それはコンテンツがそれらの個人とより密接に関連している必要があることを意味する」と、スティール氏は述べた。
理論的には、もっと多くの専門家が交渉に臨むのが良い。パブリッシャーはそれを歓迎すると、スティール氏は語り、「歓迎すべき変化だと思う。今後は、よりはっきりと定義されたコンテンツ要件が得られるだろう。彼らは方向性と特定性をこれまでも切望してきた。アセットには25の異なるバージョンがあるかもしれない。これまでは、3つから5つほどバージョンがあったのかもしれない。つまり、それは彼らにパーソナライゼーションを達成するための方向性をもたらしているのであり、我々は早い段階で承認の前提条件を得ることができる」と、スティール氏は述べた。
パブリッシャーとの摩擦
パブリッシャーの観点では、これには多くの利点がある。クライアントの視点を理解し、クライアントにそのキャンペーンを販売することを助けてくれる人間とのコンタクトが増える。
「コンテンツ作成は、彼らの経験には含まれないのだから、それは意義がある。ときにはこのようなチームの顔ぶれは、非常に役に立つ。なぜなら、彼らは我々と同じ業界言語を話すので、物事が早く進む。かつては経験ゼロのエージェンシーと仕事をしたものだった」と、ワシントンポストのWPブランドスタジオ(WP BrandStudio)の責任者、アニー・グラナシュタイン氏は語った。同氏はそのプロセスのもっと早い段階で関与するエージェンシーを見てみたいという。
しかし、ときにはエージェンシーの担当者が実際にクリエイティブの経験がなく、その業務のために選ばれたエージェンシーの他部門の人材に過ぎないケースがあると、パブリッシャーらはいう。この融合のなかにさらに多くの人間が関与することも、かつてはパブリッシャーによって管理されていたプロセスにエージェンシーが入り込む際、パブリッシャーとの間に緊張を生んでいる。
NBCニュース・ブランドスタジオ(News Brand Studio)のバイスプレジデントでありクリエイティブディレクターのマイク・ラッカー氏は、「ブランデッドコンテンツチームを持つあるエージェンシーは、我々にとって本当に素晴らしい仲介者となり、クライアントに対する我々の計画をバックアップしてくれた。関与することを望むクライアントもいて、我々は無限のフィードバックループにはまり、そのクライアントのエージェンシーチームは役に立たなかった。彼らにその機能がある場合、我々の仲間になるだろう。その対極が、彼らが独自の価値を発揮することについて懸念を抱く場合だ」と述べた。
別のパブリッシャーコンテンツスタジオのエグゼクティブは、「彼らをコンテンツの天才として見る者もいる」と、鼻であしらった。
「ほとんどの場合、パブリッシャーはその価値を認めていると思う。反対する者たちもエージェンシーの新しいタイプのメディアチームに慣れはじめている。これまでは、自分たちはエディターであり、オーディエンスを知っており、自分たちがカスタムコンテンツを作ると話していた。我々が同じことを達成しようとしているという信頼が生まれると、状況が好転する」と、ボーゲル氏は語った。