2年ごとに、政治広告はホリデーシーズン関連の初期のプランニングやバイイングに入り込む。それは、ホリデーシーズン前のセールを推進する小売業者、玩具メーカー、ファストフードレストランなどに影響を及ぼす。だが、今年は、第4四半期の広告市場の様相がかなり異なる。その概要を本記事にまとめた。
政治関係のメディアプランニングとホリデーシーズンのメディアプランニングが、かつてないほど競合し、年末に向けたメディア支出の巨大な波を生み出しつつある。
2年ごとに、政治広告は、ホリデーシーズン関連の初期のプランニングやバイイングに入り込む。それは、ホリデーシーズン前のセールを推進する小売業者、最新のイノベーションを売り込む玩具メーカー、プレゼントの買い物ついでに手早く飲食することを促すファストフードレストランなどに影響を及ぼす。
だが、今年は、第4四半期の広告市場の様相がかなり異なる。その理由は、好ましいものもあれば、そうでないものもあり、以下がその概要だ。
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- 非難の応酬がエスカレートした政治環境のため、ホリデーシーズン関連の広告主の一部が、中間選挙が終わるまでキャンペーンを控える可能性がある。
- 中間選挙に向けて、多くの政治資金がデジタルメディアプラットフォームと一部のローカルメディアプラットフォームのインベントリー(在庫)を使い果たしたことで市場が逼迫し、広告料金が上昇している。
- コネクテッドTVとストリーミングの豊富なインベントリーが、ラジオや地元の印刷物など、無視されつつある従来型メディアにこれまで支出してきた広告主を引きつけつつある。
- 長引くサプライチェーン問題が、従来この時期に予算を増やしていたホリデーシーズンのマーケターが予算を削減する原因となっている。
- ホリデーシーズンのマーケターが、冷え込んだ経済環境を反映して、「もっと購入してください」から「厳しい状況なのは分かっているので、節約をお手伝いします」へと、メッセージを変更する必要がある。
- 当然ながら、(中間選挙が)接戦の場合は特に、より多くの政治資金が広告市場に溢れかえる。アドインパクト(AdImpact)によると、2022年の選挙広告への支出は、2020年の大統領選の90億ドル(約1兆3100億円)から増加して約97億ドル(約1兆4100億円)になる見込みだという。
「まさに、ホリデーシーズンの第3波のよう」
「ホリデーシーズンの津波のなかに足を踏み入れるような感じだ」と、グループエム(GroupM)とザ・アンド・パートナーシップ(The&Partnership)の傘下でメディアやコンテンツ、コマースを手掛けるエージェンシー、エムシックス・アンド・パートナーズ(mSix&partners)の最高経営責任者(CEO)を務めるキム・シビロ氏は言う。「これまでに見てきたホリデーシーズンや政治サイクルとは違い、そこには多くの要因がある。プレイブックはない。顧客やインベントリー、(顧客の)政治観に左右されるだろう。今四半期には我々も忙しくなる」。
ホリデーシーズンの広告主のメディアバイイングは、小売り関係の顧客がホリデーシーズン後の広告でセールを提供し、ホリデーシーズン中にもらったギフトカードを使うチャンスを提供するため、時間の経過とともに長期化してきた。「まさに、ホリデーシーズンの第3波のようになっている」とシビロ氏は付け加えた。だが、そうした時期には、小売企業や、場合によっては高級ブランドでさえも、散財ではなく節約支援のメッセージを送るように気を付ける必要がある、とシビロ氏は注意を促した。
厳しい状況に強いられる従来型メディア
今回、従来型メディアはいつも以上にダメージを受けている、と分析会社ボレル・アソシエイツ(Borrell Associates)のCEO、ゴードン・ボレル氏は指摘する。自動車ディーラーや家具店、空調設備会社のような、従来型メディアをよく利用していた広告主にほかの支出先があるのも、その一因だという。
「従来型メディア企業にとっては厳しい状況だ。通常は、ラジオやTVの限られたインベントリーが目詰まりをおこすため、ほかのタイプのローカルメディアにある程度の波及効果があった。OTT(インターネット配信)が、そうした圧力を緩和する新たな動画チャネルを開設したため、今はそういうことが起きていないようだ。だから、放送局以外のメディアには波及効果がない」と、ボレル氏は言う。
従来型ローカルメディアは、デジタル、特にSEM(サーチエンジンマーケティング)とソーシャルに「かなり収益を奪い取られてきたと思われる」ため、政治関連ではない予算の獲得に苦労している、とボレル氏は付け加えた。さらに、ボレル・アソシエイツが最近、中小企業を対象に行った調査から、そうしたデジタルオプションは、広告主に最も質の高いリード(見込み客)をもたらすことが明らかになったという。
大統領選が行われるわけではないので、全国レベルではそれほど変化の影響は感じられていない。
ある大手持株会社エージェンシーで国内投資を担当する幹部はオフレコで、これまでの選挙年とあまり変わらないと述べた。「選挙年には、ホリデーシーズンの大きな支出は、いつも選挙後に始まる」と同氏は言う。「今年のホリデーシーズンの支出に関する、より関連のある変動要因は経済およびサプライチェーンで、経済状況による削減がある程度見られる」。
[原文:Massive political advertising clashes with holiday media buying, creating a ‘tsunami’ effect for Q4]
Michael Bürgi(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:黒田千聖)