56歳のリンダ・ソーヤー氏は、広告代理店ドイチュ(Deutsch)に27年在籍し、そのうちの10年は最高経営責任者(CEO)を、最後の2年はチェアマンを務めた。ソーヤー氏は2016年末、起業への想いを抑えきれなくなり、ド […]
56歳のリンダ・ソーヤー氏は、広告代理店ドイチュ(Deutsch)に27年在籍し、そのうちの10年は最高経営責任者(CEO)を、最後の2年はチェアマンを務めた。ソーヤー氏は2016年末、起業への想いを抑えきれなくなり、ドイチュを辞めた。
2017年10月、ソーヤー氏は小学校2年生のときからの親友であるアリソン・アドラー・マッツ氏とともに、家庭向け清掃用具を販売するeコマース企業、スクラ・スタイル(Skura Style)を立ち上げた。その最初の製品である抗菌剤製スポンジは、1カ月もしくは2カ月ごとの購入で4個セット12ドル(約1300円)で販売されている。
米DIGIDAYは、ソーヤー氏に起業を決意した理由や広告業界への思いなどを尋ねてみた。インタビューの内容はわかりやすくするために要約してある。
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――清掃用具のブランドをはじめようと思ったきっかけは?
私は完全な掃除マニアだ。私は、ある日アリソンと喋っていて、ある事実に気づいて困惑した。キッチンについて考えてみたときに、革新的な側面がたくさんあるのに、台所用スポンジはどうか? 台所用スポンジが昔からずっと変わらない理由が理解できなかった。スポンジはバクテリアを引き寄せやすい。多くの消費者は、スポンジを使うたびにカウンターの上にバクテリアを塗り広げている。しかし、彼らはそれを交換することに無頓着だ。だから誰もが愛せるスポンジ、つまり美しくて非常に清潔なスポンジの作り方を考える改革に乗りだした。
――キャリアの後半で会社を興したのはなぜ?
私のなかに、起業の虫がずっと巣くっていたのが理由だ。それを解き放つのは楽しかった。ただ、数十年会社に勤めた経験は、豊富な知識や展望、幅広く多彩なネットワーク、意思決定における断固とした自信を与えてくれたので、得るものは大きかった。
――自身が所有する会社のCEOを務めることと、大きな持ち株会社に属するアドエージェンシーのCEOであることの違いは?
違いより共通点のほうが多いと思うが、eコマース企業のCEOであることは、365日24時間営業している店のオーナーになるようなものだ。
――起業して驚いたことは?
あらゆることが、最終的には私のデスクに回ってくること。多すぎる役割を担っていると、目の前のありとあらゆることに気を取られてしまう。規律をもって、大きな視点で仕事に向き合うこことが重要だ。
――小売りではなく月単位のサブスクリプションモデルのeコマースを選んだ理由は?
我々がそこにこだわる理由のひとつは、人々の習慣を本気で変えたいと思っているからだ。スポンジの頻繁な交換を本気で習慣化させたいと思っている。その点オンラインショッピングは、特に考える必要もなく玄関先に商品が届くためとても便利かつ効果的だといえる。我々はeコマースのブランドになりたかった。ブランドと出会い、そして商品の箱を開封してからのブランド経験すべてをトータルでコントロールしたい。
――ブランドに力を与えるため、広告業界での経験をどう活かしたか?
広告業界においてもっとも重要なスキルのひとつは、消費者の深いインサイトを活用する能力だ。具体的には、(消費者にとって)何が実用的かだけでなく、感情的なニーズも理解し、それを関連する文化的コンテキストのなかで最適化できる能力のこと。
我々の製品に関して調べてみると、消費者はスポンジ交換に満足していることがわかった。毎日頻繁にスポンジを使うなら、1週間以内に薄くなるだろう。そこで我々は、スポンジの表面が薄くなると、交換時期が視覚的に把握できるような工夫を施した。また、消費者はスポンジをどれだけ保管しても大丈夫かを知りたがっていた。そこで我々は毎週、掃除のヒントとともに電子メールを送り、交換時期のリマインドを実施している。
――広告業界に未練は?
私は、他人が下した経営的意思決定を受け継ぐことに疲れていた。私にとって多くの場合、クリエイティビティとは、戦略を考え出すということであり、クライアントと仕事をはじめてもいないうちに決定された、ある種の経営的意思決定を打ち負かすことだった。スクラ・スタイルでは、社内の駆け引きというぬかるみにはまり込むことは一切ない。純粋に課題と向き合って仕事を進めることができる。
――広告業界とのつながりはいまも感じる?
いまはPRやソーシャルメディアに強く依存していることもあり、多くの場面でマーケターと同じような業務に携わっている。現に、先週「ザ・ビュー(The View:米ABCテレビのトークショー番組)」で取り上げられたとき、電子メールが殺到して大変だった。そんなこともあり、まだ広告業界とのつながりを感じることはあるが、視点は以前よりもクライアント寄りになっていると感じる。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)