広告支出は、2010年代のような1桁台半ばの成長水準に戻りつつあるのかもしれない。それでもクライアントは、第4四半期の広告支出に漠然とした不安をもって臨まずにいられないと、エージェンシー幹部たちは述べている。
消えない不安は、複数の問題が絡み合って引き起こしている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行、労働問題、脚本家と俳優のストライキ、そしてインフレが長引いていることで、業界は緊急時の対応策を推し進め、契約に条項を追加して柔軟性をもたせることで、何か起こったときに対応しやすくしている。
マーケティングプランと広告予算に関しては、少なくともここ2年間は、このような柔軟性の推進が常態化している。クライアントの広告支出は、今年いっぱいは横ばいとみられ、大幅に増えることもなければ、大幅に減ることもないと、6人のエージェンシー幹部は米DIGIDAYに語った。
テレビとストリーミングが大きな焦点に
「総じてクライアントは、今年は厳しい年と考え、インフレも厳しいという前提で第4四半期に臨もうとしている」と、DTCAエージェンシーであるレイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)の統合メディア投資およびプランニング担当エグゼクティブバイスプレジデント、ロビン・コーエン氏は話す。
業界の専門家は、広告主がターゲットオーディエンスにリーチするために、リニアテレビやデジタル動画、たとえばYouTubeやストリーミング広告などに投資すると予想している。今なお脚本家と俳優のストライキが続くなかでも、リニアテレビやデジタル動画はマーケティング予算において外せない要素であり、今後もそうあり続けるというのが、エージェンシー幹部らの一致した意見だ(ハリウッドのストライキがテレビビジネスに及ぼす影響についての詳細はこちら)。
プログラマティックのコンサルティング会社エーアイ・デジタル(AI Digital)のCEO兼創業者であるスティーブン・マグリ氏は、「第4四半期の広告支出において、テレビとストリーミングは引き続き大きな焦点となるだろう。スポーツ中継やそのほかの大きなイベント番組が放映される11~12月の時期は特にそれが言える」と、米DIGIDAYに寄せたメールで述べている。
レイン・ザ・グロース・エージェンシーのコーエン氏によると、クライアントは引き続きストリーミング広告を購入しており、ポーズ広告(動画が一時停止されたタイミングで画面いっぱいに表示される静的なブランド広告)や小売業者に誘導するバナー広告などのインタラクティブ性をテストしているという。
また同エージェンシーによると、クライアントは今年、平均して予算の60~70%をリニアテレビに費やしているという。「クライアントにもよるが、この数字は2022年の広告支出から横ばいか、若干減少している」とコーエン氏は言う。同氏によると、ストリーミング広告とリニアテレビ広告が両輪となっているのは、「(リニアテレビが)CPMの観点から見てコストが低く、マスリーチが可能だからだ」と話す。とりわけ今は、テレビ業界が広告費の獲得に苦戦するなか、ネットワークが割引を提供している。
広告支出は、2010年代のような1桁台半ばの成長水準に戻りつつあるのかもしれない。それでもクライアントは、第4四半期の広告支出に漠然とした不安をもって臨まずにいられないと、エージェンシー幹部たちは述べている。
消えない不安は、複数の問題が絡み合って引き起こしている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行、労働問題、脚本家と俳優のストライキ、そしてインフレが長引いていることで、業界は緊急時の対応策を推し進め、契約に条項を追加して柔軟性をもたせることで、何か起こったときに対応しやすくしている。
マーケティングプランと広告予算に関しては、少なくともここ2年間は、このような柔軟性の推進が常態化している。クライアントの広告支出は、今年いっぱいは横ばいとみられ、大幅に増えることもなければ、大幅に減ることもないと、6人のエージェンシー幹部は米DIGIDAYに語った。
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テレビとストリーミングが大きな焦点に
「総じてクライアントは、今年は厳しい年と考え、インフレも厳しいという前提で第4四半期に臨もうとしている」と、DTCAエージェンシーであるレイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)の統合メディア投資およびプランニング担当エグゼクティブバイスプレジデント、ロビン・コーエン氏は話す。
業界の専門家は、広告主がターゲットオーディエンスにリーチするために、リニアテレビやデジタル動画、たとえばYouTubeやストリーミング広告などに投資すると予想している。今なお脚本家と俳優のストライキが続くなかでも、リニアテレビやデジタル動画はマーケティング予算において外せない要素であり、今後もそうあり続けるというのが、エージェンシー幹部らの一致した意見だ(ハリウッドのストライキがテレビビジネスに及ぼす影響についての詳細はこちら)。
プログラマティックのコンサルティング会社エーアイ・デジタル(AI Digital)のCEO兼創業者であるスティーブン・マグリ氏は、「第4四半期の広告支出において、テレビとストリーミングは引き続き大きな焦点となるだろう。スポーツ中継やそのほかの大きなイベント番組が放映される11~12月の時期は特にそれが言える」と、米DIGIDAYに寄せたメールで述べている。
レイン・ザ・グロース・エージェンシーのコーエン氏によると、クライアントは引き続きストリーミング広告を購入しており、ポーズ広告(動画が一時停止されたタイミングで画面いっぱいに表示される静的なブランド広告)や小売業者に誘導するバナー広告などのインタラクティブ性をテストしているという。
また同エージェンシーによると、クライアントは今年、平均して予算の60~70%をリニアテレビに費やしているという。「クライアントにもよるが、この数字は2022年の広告支出から横ばいか、若干減少している」とコーエン氏は言う。同氏によると、ストリーミング広告とリニアテレビ広告が両輪となっているのは、「(リニアテレビが)CPMの観点から見てコストが低く、マスリーチが可能だからだ」と話す。とりわけ今は、テレビ業界が広告費の獲得に苦戦するなか、ネットワークが割引を提供している。
メディア投資は年間を通じて一定
今年は低調な出だしだった世界の広告支出が、これから加速に転じるとの予想にもかかわらず、全体としてマーケティング予算にはいまだ厳しい目が向けられている。ただし、ホリデーシーズンと出費が増える時期であることを考えれば、第4四半期に数字が伸びるのは業界の常識だ。米DIGIDAYで報じた記事によると、2023年の広告支出は米国で3600億ドル(約53兆1460億円)に達し、2022年から5%増加すると予想されている。
一方で、買い物客は自由に消費しており、今年の米国経済は昨年より好調だと判断している。米商務省の最近のリポートによると、7月の小売売上高は予想を上回り、6月から0.7%増となった。またイーマーケター(eMarketer)は、今年のホリデーシーズンの小売売上高を4.5%増と予想している。昨年のホリデーシーズンの小売売上高(前年比4.8%増)をやや下回る程度の伸び率だ。
それでも広告主は、2023年が経済的に波乱に満ちた年となっていることを踏まえ、年末に向けて予算に対して細かく柔軟なアプローチをとっており、これは直近の数年間と似た流れだ。この記事のために米DIGIDAYが話を聞いたエージェンシー幹部6人からも、第4四半期に向けてクライアントの支出が大幅に増えたり減ったりしているとの声は聞かれず、メディア投資は年間を通じて一定している。実際、クライアントとそのエージェンシーパートナーは、インフレが引き続き業界全体の懸念事項となっているなかで、同じ広告予算から可能なかぎり大きな効果を得ようとしている。
今年のホリデーシーズンには希望がある
「率直なところ、我々はしばらく前からこの分野にいて、このように柔軟性の高いアプローチをとってきた。物事は変化していくものであるし、確信がもてないことに必ずしも固執したくはない」と、コラボレーティブなクリエイティブエージェンシーのスパーク(SPARK)でマーケティング担当シニアディレクターを務めるナシラ・バブーラム氏は話す。同氏によると、クライアントはデジタル、ストリーミング動画広告、ソーシャルメディアなどのメディアチャネルに対して、今年に入ってからの投資を維持しているという。ただしクライアントの広告支出について、それ以上の詳細は明らかにしなかった。
たとえ予算に監視の目が向けられているとしても、バブーラム氏のエージェンシーでは、クライアントに広告支出の削減を勧めていないという。ホリデーシーズンに向けて広告支出を削減するブランドは、景気が回復してきたときに、それに追いつくためにより多くの出費をすることになるかもしれないからだ。広告エージェンシーの幹部らは、2008年の不況時に支出を維持したクライアントを勝者の例として挙げることが多いため、これはなじみのあるアドバイスだ。
VMLY&Rコマース(VMLY&R Commerce)のグローバルコマースディレクターであるジェームス・ギャランド氏も同様の見解を示し、ブランド認知キャンペーンに大きく投資するブランドは、「市場平均を超える確実な長期の市場シェア拡大を得ることになる」と指摘している。
まだ1桁台ではあるが、広告業界のニューノーマルとなった広告支出は、アドエージェンシーのバークレー(Barkley)で最高戦略責任者を務めるクリス・カーデッティ氏に希望の光をもたらしている。今年の第2四半期までに、クライアントはここ数年と比べ、もっと先までの計画を立てようとするようになったという。「昨年は実際、予算に関しては必要不可欠なものに絞る状況だったかもしれない。しかし今年は、ホリデーシーズンに適度な期待が持てる状況にあり、マーケターもそれに合ったメディアプランを組んでいる。予算はまだ厳しく監視されているが、そこには希望がある」と同氏は語った。
[原文:Marketers are ‘hopeful yet reasonable’ ahead of Q4 and holiday season]
Kimeko McCoy(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)