「あまりにも多くのことが、なし崩しにされている」:ある 制作会社 幹部の告白

制作会社とエージェンシーは、ブランド向けコンテンツを共同で制作している。だが、そんな両者の関係がこのところ緊張感を増している。支払い期限の延長やコミュニケーションの欠如といった問題が起こっているためだ。

匿名と引き換えに率直に語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、入札の準備やエージェンシーのクライアントとの業務を担当する制作会社のプロデューサーに、彼らの仕事を困難にしている制作会社とエージェンシーのすれ違いについて話をしてもらった。

以下、そのインタビューの詳細だ。一部編集してある。

――支払い期限の延長は、エージェンシーに影響を与えるだけでなく、制作会社との関係を損なっているのだろうか?

支払い期限の延長は、多くの制作会社が長いあいだエージェンシーと争ってきた問題だ。私は3〜4年前からこうした話を耳にしている。現在では、ほとんどのケースで、当たり前のように支払期限が延長されている。以前はもっと問題視されていたが、いまやごく普通のことになっているのだ。

なかには、この問題の解決に乗り出したエージェンシーもあるが、いまでもこの問題が見られる。やっかいな話だが、もはや我々の意見を押し通せるような問題ではない。あまりにも多くのことがなし崩しにされている。広告の黄金時代には、制作会社の取り分は35%だった。しかしいまでは、ほとんどの制作会社がそれに近い取り分を確保することさえできず、あらゆる業務で価格の引き下げを求められている。

――制作会社とエージェンシーのあいだで起こっているそのほかの問題は?

私はエージェンシーのプロデューサーと打ち合わせをしたあと、彼らから入札仕様書を受け取る。そして、入札戦略をまとめ、その入札に含まれる内容を説明した5〜9ページもの分厚い入札提案書を作成する。何が含まれ、何が含まれないのかを明確にするためだ。

だが、エージェンシーのプロデューサーのなかには、この入札提案書を読んでいない人さえいる。彼らは、我々と打ち合わせた内容や自分たちが受けた接待などをすっかり脇に置いてしまうのだ。そのため、いざ仕事に取り掛かろうとする段階になって、何が含まれていて何が含まれていないのかをあれこれ質問してくる。今回の入札には含めないことが前提になっていた事柄についてもだ。

こうなる原因が、エージェンシーの仕事のペースがきわめて速いことにあるのかどうかはわからない。だが、彼らはあっという間に出世の階段を登るため、プロデューサーとしての職務を果たすうえで役立つ体験やノウハウを、まだ十分に獲得していないと思われることがある。このビジネスの経験が長いプロデューサーとそれほど長くない人とでは、仕事のプロセスに対する理解度が違う。おかげで、ときにはこちらが何度も助け舟を出すことになる。

――そのような問題がもたらしている影響は何だろうか?

私はいま、広告の撮影ではなく、イベント向けの仕事に取り組んでいる。具体的には、デジタルコンテンツの制作だ。私はこの入札提案書に、どのようなことが起こる可能性があるのか、何が費用に含まれるのか、そしてどのような点が最初のプレゼンから変わったのかを記載した。そして、数カ月かけてさまざまな予算案を検討し、ようやくこの仕事を獲得した。

だが、いまになって、我々がやろうとしていることについて、エージェンシーから次々と質問が寄せられている。このような話は、本来もっと早い段階ですべきだったはずだ。いくつかの点で、我々が入札提案書に記載した内容と、ずれが出てくるかもしれない。その結果、よくあることだが、費用やクリエイティブに変更が生じ、制作の進行が遅れることになる。

クライアントの管理やプロデューサーとの会話にまつわる多くの問題は、このようなコミュニケーション不足に行き着く。入札提案書がきちんと読まれていれば、もっと楽な状況になっていたか、もっと早くこうした話ができていたかもしれない。そうすれば、プロジェクトに取り掛かる段階で、全員が同じ考えを共有できていただろう。

――これはもっと重大な問題をはらんでいるのだろうか?

制作会社側の仕事が変化してきていると、私は考えている。かつて、エージェンシーの仕事は、受け取った入札仕様書の1行1行に目を通し、各項目を理解できるようにすることだった。そして我々が、さらに入札提案書を作成するようになった。エージェンシーが最初から入札提案書の作成に関わることも可能だったが、入札提案書はいまほど細かい規定が盛り込まれたものではなかったと思う。

ある意味で、入札提案書はちょっとした契約書のようなものだ。拘束力はないが、これからはじめようとすることに関する合意書だといえる。だが、入札提案書が読まれなくなったり、クライアントやエージェンシーから制作会社に情報が流れて来なくなったりするにつれて、制作会社が目指していることと、エージェンシーやクライアントが期待していることのあいだに、ずれが見られはじめるようになった。

――そのすれが生じた結果、何が起こるのか?

準備の段階でさらに難しい状況が発生する可能性がある。CMはたいてい準備期間が2週間しかないが、いまはそれで十分だと考えられており、3週間もあればラッキーなほうだ。そのため、期待されていることと要請されていることをすり合わせるための話し合いが必要になり、全員が合意するまで時間がかかる可能性がある。また、制作会社が今後のビジネスのことを考えてエージェンーとの議論を避けようとすれば、費用負担がさらに重くなる可能性がある。

あるプロジェクトでは、どのようなセットを組むのかについて認識のずれが生じたことがあった。我々の入札提案書が、実際にエージェンシーが望んでいる内容を十分に規定していなかったのだ。そのため、エージェンシーの望みどおりのものを提供するための費用が増え、その費用を我々が負担しなければならなくなった。

――エージェンシーの若いプロデューサーと制作会社とのあいだで発生するずれは、全体としてどのような影響をもたらすだろうか?

プロデューサーが若かったり経験の浅い人であったりすることがわかった場合は、仕事のアプローチを変える必要がある。彼らは入札提案書を全部読んでいない可能性があるため、説明をもう少し増やしたり、今後の取り組み方についてもっと詳しく話したりする必要があるかもしれない。

(エージェンシーから制作の仕事を勝ち取るための)仕事に取り組むときには、彼らとの会話をもっと増やし、実際に彼らに提供するものをひと通り説明してほしい。資料(入札仕様書や入札提案書)を送付したり、クリエイティブに関する話をしたり、実際に提供されるものに関する資料を読んでもらったりするだけでは不十分なのだ。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)