リテールメディアと回復したデジタル広告のおかげで、IPG傘下のマグナ・グローバル(Magna Global)は米国市場の広告収益成長予測を5%以上も上方修正し、2023年の収益を合計3370億ドル(約47兆円)とした。
今秋の最新予測では、米国経済と広告支出の両方とも「2023年はここまで、予測よりも強気である」とマグナのグローバルマーケットインテリジェンス担当エグゼクティブバイスプレジデント、ビンセント・レタン氏は話す。2023年後期に関して、広告費全体としては増加が続くと同社は予測している。
デジタルフォーマットは今後も成長すると見られており、それを支えているのが景気変動に左右される広告支出だ。景気回復で支出が増えれば、従来のメディアも成長しやすくなるだろう。そうはいっても、エージェンシー各社は、経済状況がどのように変化しても対応できるよう備えなければならないと話す。
リテールメディアの成長とデジタル広告のフォーマット
メディア・カルチャー(Media Culture)のCEOであるクリステナ・ガルドゥーノ氏は、特に今大切なのは、「リテールメディアの予算がデジタル広告に回されていることを認識し、その結果、顧客がリソースをデジタル広告に配分しやすくすることだ」と話す。また、「同時にエージェンシーは、従来のメディアオーナーと取引のある顧客に対しては、特に広告の売上がそれほど景気変動に左右されない顧客の場合、売上減退を少しでも回避できるような方法を重点的に考えなければならない。そうした顧客は、絶えず変化を続ける市場にあって、競争力を温存する必要があるからだ」と説明した。
これまでのところ、2023年はデジタルメディアのフォーマットで支えられてきた。これには検索、eコマース、SNSや専用プラットフォームのショートフォーム動画などが含まれるが、従来のメディア企業が「広告売上の減退」に苦戦する一方で、デジタルメディアでは広告支出の増加が見られるとマグナは指摘する。
2022年は低成長だったデジタル広告の収益は、この2四半期で回復した。第1四半期はSNSフォーマットが7%の成長で、第2四半期には12%上昇している(その前の2四半期はほぼ変化なし)。検索とeコマースは9%増で、主にリテールメディアの活動による。リテールメディアの支出がデジタル広告フォーマットに流れた結果、2023年の成長予測(景気変動除外)は、割合で1ポイント上昇し、5.2%に達した。この数字は、前回の6月に予測された4.2%から上昇している。
「リテールメディアが引き続き力を付けるなか、広告主はこうしたプラットフォームが提供する膨大な量の消費者情報を利用している」。そう話すのは、デジタルエージェンシーのキューカー(Cuker)でペイドメディアスペシャリストを務めるエマ・キューブス氏だ。「投資利益率向上のためにハイパーターゲティング広告を活用するデジタルメディア分野では、この動きが広告支出・売上のさらなる成長に拍車をかけると期待されている」。
また、R/GAでメディアおよびコネクション担当役員バイスプレジデントを務めるアンドリュー・ラフォン氏によれば、リテールメディアとデジタル広告フォーマットには長期的傾向が見られるという。これは特に、顧客向けに考えたメディア予算がどれだけの利益を生み出すのか、これまで以上にエージェンシー側が示さなければならないからだ。「特にリテールメディアは、クローズドループという、利益を追跡しやすくなる特性の恩恵を受けている」と同氏は説明した。
経済成長が追い風になったが、一部の分野は停滞
広告支出は第2四半期で4.4%成長し、旅行、医薬、CPG(消費者向けパッケージ商品)、リテールブランドをはじめとするカテゴリーで堅調な結果が見られた。特にCPG分野は2022年に厳しい状況に陥っていたが、ここ数カ月でインフレが落ち着いてきたことが成長回復につながったのかもしれない。
しかしながら、リテールの売上を見ると、6月の前年比が-0.6%と成長スピードにブレーキがかかっていることから、マグナは懸念を指摘する。一部の消費財ブランドがマーケティング予算を減額したのも、この鈍化が原因かもしれないという。金融やテクノロジーといった垂直市場も前年比で減少を見せている。
「前年比の数字を見ると、ほとんどの分野で、自明の経済成長に伴い、支出が確実に増加していることがわかる」と、広告エージェンシーのコード3(Code3)でチーフアクティベーションオフィサーを務めるグレッグ・ウォルニー氏は話す。「しかし、経済成長はすべての分野に影響を及ぼしているわけではない。比較的高価格帯の製品を扱う一部の分野では、依然として前年比で成長が見られない状態だ」。
リテールメディアと回復したデジタル広告のおかげで、IPG傘下のマグナ・グローバル(Magna Global)は米国市場の広告収益成長予測を5%以上も上方修正し、2023年の収益を合計3370億ドル(約47兆円)とした。
今秋の最新予測では、米国経済と広告支出の両方とも「2023年はここまで、予測よりも強気である」とマグナのグローバルマーケットインテリジェンス担当エグゼクティブバイスプレジデント、ビンセント・レタン氏は話す。2023年後期に関して、広告費全体としては増加が続くと同社は予測している。
デジタルフォーマットは今後も成長すると見られており、それを支えているのが景気変動に左右される広告支出だ。景気回復で支出が増えれば、従来のメディアも成長しやすくなるだろう。そうはいっても、エージェンシー各社は、経済状況がどのように変化しても対応できるよう備えなければならないと話す。
Advertisement
リテールメディアの成長とデジタル広告のフォーマット
メディア・カルチャー(Media Culture)のCEOであるクリステナ・ガルドゥーノ氏は、特に今大切なのは、「リテールメディアの予算がデジタル広告に回されていることを認識し、その結果、顧客がリソースをデジタル広告に配分しやすくすることだ」と話す。また、「同時にエージェンシーは、従来のメディアオーナーと取引のある顧客に対しては、特に広告の売上がそれほど景気変動に左右されない顧客の場合、売上減退を少しでも回避できるような方法を重点的に考えなければならない。そうした顧客は、絶えず変化を続ける市場にあって、競争力を温存する必要があるからだ」と説明した。
これまでのところ、2023年はデジタルメディアのフォーマットで支えられてきた。これには検索、eコマース、SNSや専用プラットフォームのショートフォーム動画などが含まれるが、従来のメディア企業が「広告売上の減退」に苦戦する一方で、デジタルメディアでは広告支出の増加が見られるとマグナは指摘する。
2022年は低成長だったデジタル広告の収益は、この2四半期で回復した。第1四半期はSNSフォーマットが7%の成長で、第2四半期には12%上昇している(その前の2四半期はほぼ変化なし)。検索とeコマースは9%増で、主にリテールメディアの活動による。リテールメディアの支出がデジタル広告フォーマットに流れた結果、2023年の成長予測(景気変動除外)は、割合で1ポイント上昇し、5.2%に達した。この数字は、前回の6月に予測された4.2%から上昇している。
「リテールメディアが引き続き力を付けるなか、広告主はこうしたプラットフォームが提供する膨大な量の消費者情報を利用している」。そう話すのは、デジタルエージェンシーのキューカー(Cuker)でペイドメディアスペシャリストを務めるエマ・キューブス氏だ。「投資利益率向上のためにハイパーターゲティング広告を活用するデジタルメディア分野では、この動きが広告支出・売上のさらなる成長に拍車をかけると期待されている」。
また、R/GAでメディアおよびコネクション担当役員バイスプレジデントを務めるアンドリュー・ラフォン氏によれば、リテールメディアとデジタル広告フォーマットには長期的傾向が見られるという。これは特に、顧客向けに考えたメディア予算がどれだけの利益を生み出すのか、これまで以上にエージェンシー側が示さなければならないからだ。「特にリテールメディアは、クローズドループという、利益を追跡しやすくなる特性の恩恵を受けている」と同氏は説明した。
経済成長が追い風になったが、一部の分野は停滞
広告支出は第2四半期で4.4%成長し、旅行、医薬、CPG(消費者向けパッケージ商品)、リテールブランドをはじめとするカテゴリーで堅調な結果が見られた。特にCPG分野は2022年に厳しい状況に陥っていたが、ここ数カ月でインフレが落ち着いてきたことが成長回復につながったのかもしれない。
しかしながら、リテールの売上を見ると、6月の前年比が-0.6%と成長スピードにブレーキがかかっていることから、マグナは懸念を指摘する。一部の消費財ブランドがマーケティング予算を減額したのも、この鈍化が原因かもしれないという。金融やテクノロジーといった垂直市場も前年比で減少を見せている。
「前年比の数字を見ると、ほとんどの分野で、自明の経済成長に伴い、支出が確実に増加していることがわかる」と、広告エージェンシーのコード3(Code3)でチーフアクティベーションオフィサーを務めるグレッグ・ウォルニー氏は話す。「しかし、経済成長はすべての分野に影響を及ぼしているわけではない。比較的高価格帯の製品を扱う一部の分野では、依然として前年比で成長が見られない状態だ」。
デジタルフォーマットで勢いづく2024年
マグナは2024年に関しても、リテールメディアのデジタルへの流入と「余裕の上半期」を指摘し、成長予測も5%から5.6%に上方修正している。デジタル専門企業の成長予測は9.8%だが、従来のメディア企業は厳しい状況に直面しており、予測も-1.5%から-2%への下方修正が見られた。一方、景気変動に影響を与えるイベント(政治広告支出や夏季オリンピックなど)が、損失の軽減に役立つのではないかと見込まれており、メディア全体でみると、広告総収益は3640億ドル(約51兆円)、8%の上昇と予測されている。
メディアのタイプに関しては、デジタルメディアフォーマットはこれからの18カ月で、下1桁後半から2桁前半の伸び率が予測され、ほかタイプのメディアよりもよい結果を出せるとマグナは見ている。特にSNSとショートフォーム動画は、たとえばAppleのプライバシーポリシーの変更に見られるように、2022年のディスラプション(創造的破壊)から回復している。
検索とeコマースも、リテールメディアで引き続き大きな成長が見込まれており、すでにリテールメディアネットワーク(RMN)各社は検索広告の売上で30%を叩き出している。このセグメントは2023年に22%、2024年に17%もの成長が予測されており、マグナによると、検索市場全体の2024年売上予測は1430億ドル(約20兆円)に達するという。
マインドセットの変化が再成長につながる
プライバシーポリシーの環境が進化を遂げるなか、エージェンシー各社は、業績を伸ばす新たな方法を模索し続けることになる。このようなエコシステムの変化に伴い、広告計測コンサルタント会社グロース・バイ・サイエンス(Growth by Science)の創業者アンドリュー・コバート氏も、スタートアップの成長やアドテクへの投資の気運が高まることを期待している。
「パブリッシャーとリテーラーが、自社のファーストパーティデータのほうがはるかに大きな収益が見込めることを理解し始めると、より多くの企業が広告主体の収益源に活力を見出し始めるのを目の当たりにするだろう」とコバート氏は話す。
コード3のウォルニー氏も、2024年上半期ではそこまで踏み出さずに、ミドルファネルやトップファネルのビジネスチャンスを繰り返し試しておしまいというブランドについて言及している。状況が改善する下半期では、こうしたブランドもオーディエンス構築を優先させるようになり、動画やSNSの支出が増えるだろうと同氏は見ている。
「広告売上は今後も増加を続けるだろう。そうなれば、デジタルメディア企業は、CPCの上昇など指標全般で競争力を得られるような、より効率的な支出の方策を重点的に考えるようになる」とウォルニー氏は言う。「ブランドが機敏に対応できるようになればなるほど、こうしたマインドセットの変化が再成長につながるだろう」。
マグナの次回の広告支出予測は、12月上旬に発表される予定だ。
[原文:Magna raises 2023 revenue forecast to $337 billion, boosted by retail media and digital]
Antoinette Siu(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)