フォロワー水増し問題、NYTの暴露記事で「炎上」本格化:クライアントをなだめるエージェンシーたち

インフルエンサーマーケティングはこれまで、現実的なものかどうか、疑いの目を向けられてきた。詐欺やボット、怪しい拡散行為に関するニュースは、しばしば報じられている。

ニューヨーク・タイムズ(New York Times:以下、NYT)は去る1月27日、その流れにダメ押しするかのような特集「フォロワーファクトリー(The Follower Factory:フォロワー工場)」を掲載。インフルエンサーマーケティング問題がどこまで広範囲に及んでいるのかを明らかにするこの暴露記事が、マーケティング上層部にも読まれ、大きな波紋を呼んでいる。

ここ最近、「中抜き」の圧力に晒されている、エージェンシーにとっては喜びの瞬間だ。これを機に、自分たちの価値を証明しようと躍起になっている。

喜ぶエージェンシー

「週末はずっと、会社のSlack(スラック)で対話していた」。インフルエンサーマーケティングエージェンシー、コレクティブリー(Collectively)の共同創業者であるアレクサ・ トーナー氏はこう述べ、顧客が同氏のチームの「能力」を試し、業務について適切な質問をしてくると予想していると付け加えた。とはいえ、コレクティブリーにとってそれは問題ではない。「顧客は安心感を求めているが、誰もが知っている問題が最上層部の人々にある程度伝わることになるので、これは朗報だ」。

バイアコム(Viacom)に年初に買収されたインフルエンサーマーケティングエージェンシー、フーセイ(WhoSay)では、NYTの記事が公開された週末に、プレジデントのロブ・グレゴリー氏がチームに対して、顧客が質問してくるだろうと注意を促した。同氏にとっては「回答は容易」だった。同社は、提携しているインフルエンサーに送ったアンケート「Statement of Authenticity(真正性の申告)」を宣伝している。このアンケートで、偽のフォロワーを金で買ったことはないと誓うよう、インフルエンサーに求めているのだ。「こういう瞬間が大好きだ」とグレゴリー氏はいう。

インフルエンサーマーケティング用の効果測定サービスを提供するアハロジー(Ahalogy)の共同創業者兼CEOのボブ・ギルブレス氏は、NYTの記事のようなもののおかげで、トップクラスのブランドのマーケターがついに、独自のインフルエンサーマーケティングの実績やパートナーについて厳しい質問をしはじめると語る。

今回のスキャンダルは、ブランドが従来のPRやソーシャル関連のエージェンシーをカットし、インフルエンサーマーケティングエージェンシーともっと直接取引する必要があることを証明している。「PRエージェンシーのビジネスモデルは、広告エージェンシーよりももっと破壊的な力にさらされてきた。PRエージェンシーは、大手顧客に提供可能な、もっと支払い請求ができるサービスを見つけようと努力している。我々が行っているような厳しい審査を行うためのデータと人的資源を持っていなければならない」と、フーセイのグレゴリー氏はいう。

統合化というトレンド

だが、エデルマン(Edelman)のように、インフルエンサーマーケティング活動を行っているエージェンシーは、それとは逆の思いを抱いている。インフルエンサー戦略およびプログラミングを担当する米国の責任者シビル・グリーブ氏は、「非戦略的なインフルエンサーマーケティングの時代が終わりつつある」さらなる証拠だと指摘している。ブランドは今後、別会社とサイロ化しておくのではなく、インフルエンサーマーケティングを含んだもっと完全な戦略を求めるだろう。「業界が進んでいる方向をよく物語っている」とグリーブ氏は語った。

詐欺の問題は一般的でよく知られており、NYTの記事はそれを1カ所にまとめたにすぎない、とグリーブ氏はいう。基本的には、インフルエンサーのフォロワーとコメントを組み合わせて膨らませた数字である「リーチ-エンゲージメント」や、実際に投稿を見た人数ではなく、投稿を見る可能性がある人数を表すとされる「ポテンシャル(潜在的)インプレッション」のような指標から、すべてわかっていたという。

トレンディング・ファミリー(Trending Family)のCEOで、YouTubeに100万人強のフォロワーがいるインフルエンサーのジャスティン・ムーア氏は、ブランドが「リーチ」指標離れを加速して「エンゲージメント」に注力し続ける転換点になると述べている。その「エンゲージメント」がどんなものになるかは議論の余地があるが、熱心なコメント投稿者がいるマイクロインフルエンサーへの関心の高まりがその証明だ、とムーア氏はいう。

もっぱらエージェンシーと提携し、少ないながらもブランドと直接取引をしているムーア氏によると、個々の事例に基づくと、いわゆるインフルエンサープラットフォームに掛かる圧力はすでに増しているという。「プラグアンドプレイ」方式のインフルエンサーキャンペーンの手段として昨年人気が高まったセルフサービス式プラットフォームではなく、 「フルサービスのインフルエンサーエージェンシーを重視するエージェンシーが増えていく」、とムーア氏は予想する。現在、最高マーケティング責任者(CMO)はインフルエンサー詐欺にいっそう注意を払っているが、審査関連サービスの利用が必須になるだろう。

これを機に「必須」分野へ

ある意味で、今回の騒動は、昨春のブランドセーフティ危機を彷彿とさせる。ブランドセーフティ危機のときには、「スリーピング・ジャイアンツ(Sleeping Giants)」のようなTwitterアカウントのせいで、マーケターは最終的に、アドテクの根本的システムに注意を払わなくてはならなかった。そうしたシステムが原因で、「ブライトバート(Breitbart)」のような「オルタナ右翼」サイトなど、望ましくないサイト(または、望ましくないところだと知らなかったサイト)に広告が掲載される結果になったからだ。また、マーケターの多くの幹部は、こうしたサイトに表示された広告をめぐって公然と怒りを示し、保険会社オールステート(Allstate)などのブランドは、広告掲載の仕組みや掲載場所について完全な情報開示が行われていないと率直に認めた

問題は、これがインフルエンサーへの支出削減を示しているのかどうかだが、ほとんどの者にとっては、それを示唆するものではない。プロによって実行されたインフルエンサーキャンペーンの効果と、その結果となるKPIは、必ずしもCMOまで知れ渡っていない、とグレゴリー氏は指摘する。「中上層部レベルでは、よく勝利のハイタッチが交わされている」が、上層部ではそれほどではない、とグレゴリー氏はいう。「これがCMOに伝われば、インフルエンサーマーケティングが調査テーマになるのに十分なくらい主流であると気づかざるを得ない」。

今後は、有料メディアに向けた動きが継続し、オーガニックなフォローはパズルのごく小さな一部にとどまるだろう、と業界の幹部たちは話す。また、「オーディエンスの規模は重要だが、それほど影響力はない」とコレクティブリーのトーナー氏は語った。

「インフルエンサーの観点から言えば、『YouTubeの厳しい広告規制』と、遺体動画を投稿したローガン・ポール氏の大炎上とのあいだの、相次ぐひどいPRのようなものだ。だが、それでも、それとは別に、インフルエンサーとの協力への関心は高まってきた」とトレンディング・ファミリーのムーア氏はいう。4年前、ムーア氏の売り上げの90%は広告収入だった。現在は90%がスポンサー収入だ。「インフルエンサーマーケティングは、今後1年半のあいだに表舞台に飛び出し、切り捨て可能な予算のカテゴリーから必須の予算のカテゴリーに移行するだろう」と、ムーア氏は語った。

Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)