[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ここ数年、広告主とエージェンシーは、ブランドセーフティを確保するため、冒涜語や中傷語のような特定のキーワードを含むコンテンツの上に広告が表示されないようブロックしてきた。だが、キーワードリストのなかには、単体では害のない言葉だが、文脈によっては炎上の原因になるものもある。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ブランドセーフティは、依然として唯一の明快な解決策のない、やっかいな問題だ。もっともシンプルに思える対策でさえ、想像以上に複雑なのだ。
ここ数年、広告主とエージェンシーは、冒涜語や中傷語のような特定のキーワードを含むコンテンツの上に広告が表示されないようブロックしてきた。キーワードリストのなかには、単体では害のない言葉だが、文脈によっては炎上の原因になるものもある。
物議をかもすコンテンツに広告が表示されることを恐れ、「ゲイ」などの単語がキーワードリストに入れられることがある。広告主はヘイトクライムを扇動するコンテンツに広告を表示させたくないのだ。しかし、リストに入れることで、広告主はこうした単語を含むすべてのコンテンツ、たとえばゲイのセレブのプロフィールからも身を引くことになり、特定のオーディエンスを排除することになりかねない。
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「一般に、キーワードはまだ精度の低いツールだ」と、ハバスメディア・ノースアメリカ(Havas Media North America)でプログラマティック担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるアンドリュー・グッド氏はいう。
VICEの決断とその先
VICEは最近、キーワードの精度が低すぎて使い物にならない問題を取り上げた。5月1日に行われたニューフロント(NewFront)でのプレゼンで、今後は「ゲイ」「アジア人」「ムスリム」「気候変動」「移民」「肥満」といったキーワードを含むページへの広告掲載ブロックを行わないと発表した。
エージェンシー幹部は、VICEがこの問題への方針を示したことを歓迎しつつ、個々のパブリッシャーが広告主の利益に基づいてこうした判断を下すことを警戒している。「ブランドセーフティは、これまでもいまも主観的な問題だった」と、グッド氏は述べ、広告主はキーワードで思考停止せず、全体像を見るべきだと主張した。
そうはいっても、キーワードリストは今後も広告主のブランドセーフティ対策の重要要素であり、グッド氏の言葉を借りれば、「唯一のフィルターではなく、最後のフィルター」だ。しかし、その効果を確かなものにするためには、もっと精緻に運用し、広告主は「ゲイ」という単語を含むすべての記事を避けるのではなく、軽蔑的に使っているコンテンツへの支持表明にならないようにする必要がある。「本当に重要なのは意味の組み合わせだ」と、グループ・エム(GroupM)でブランドセーフティ担当マネージングパートナーを務める、ジョー・バロン氏はいう。
「次のステップは感情分析」
グループ・エム、ハバスメディア、ピュブリシスメディア(Publicis Media)などのエージェンシーは、広告認証企業と提携して、クライアントのブランドセーフティを守る目的でキーワードリストを利用する際、文脈を正確に解釈するための取り組みを進めてきた。こうした動きは数年前にはじまった。彼らは広告主のキーワードリストに意味分析を適用し、同じページの別の単語を検索してキーワードの使用文脈を読み取っている。「次のステップは感情分析だ」と、バロン氏はいう。
認証ベンダーは感情分析により、コンテンツが特定のキーワードに対してポジティブかネガティブかを評価し、それをもとに広告を掲載するかブロックするかを決定する。バロン氏によれば、「認証会社が導入している新しいアプローチでは、キーワードそのものではなく、それに対する感情のニュアンスを特定できる」。
感情分析は、記事に込められた感情がポジティブかネガティブかの両極端でなくても利用できる。中立的とカテゴライズされる場合もあり、この場合ほとんどのクライアントは掲載を許可するだろうが、リスク回避的な広告主は掲載を見送ると、バロン氏は説明する。
感情分析にも特有の問題
しかし、感情分析にも特有の問題がある。記事のポジティブ、ネガティブ、中立を判断するためには、記事そのものよりも広範な情報が必要になる場合がある。たとえば記事に寄せられたコメントや、記事に添えられた写真や動画のメタデータなどだ。認証ベンダーは「感情分析のツールは持っているが、パブリッシャーの協力がなければメタデータを一貫して入手するのは難しい。それがなければ、感情分析の理想的な精度を達成できないかもしれない」と、ピュブリシスメディアエクスチェンジでデジタル投資・基準担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるイェール・コーエン氏はいう。
感情分析の結果を正確なものにするために必要な情報量を考慮すると、広告主のキーワードベースの対策に大規模に導入するには、「膨大なコンテンツ分類が必要で、現実的ではない」と、バロン氏は話す。
しかし、ブランドセーフティ面で不当な評価をされない保証があるなら、パブリッシャーにもこうしたコンテンツ分類に協力する動機はある。「すべてのパブリッシャーを平等に扱うため、我々は共通の分類エンジンを探し求めている」と、バロン氏は述べた。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)
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