「皆、振り回されている」:緊急事態宣言 解除後の対応に追われるエージェンシーたち

コロナ禍を受け、国内の広告主は新たなキーメッセージの開発や、戦術の見直しなどを迫られている。その影響で、一部のエージェンシーからは、業務量が増えたことにより、現場が疲弊しているという声が聞かれる。

日本で働く、あるデジタルマーケティングマネージャーは、所属する外資系エージェンシーで、この4月から新設された、コロナストラテジー(コロナ対策部署)のリーダーを務めている。デジタルマーケティングチームのマネージャーと「兼任」という形でだ。また、日系の大手総合代理店でプランナーを務める人物も、自粛後における戦術の見直しといった、クライアントからのリクエスト対応に追われているという。

前述したデジタルマーケティングマネージャーは、我々のメール取材に対してこう回答。「コロナの影響で広告主の売上が落ちたこともあり、はじめは仕事が減ると思っていた。しかし、業務量は増える一方だ」。

受け入れざるを得ない

取材に応じてくれたデジタルマーケティングマネージャーは現在、自動車メーカーの広告主を担当している。「このコロナストラテジーの部署ができて以来、仕事とプライベートの境目がつかず、緊急事態宣言解除後も、定時を過ぎまで仕事をしている」と同氏。

「私も含め、ほかのスタッフの業務量も以前の倍は増えた。通常のクライアントワークに加え、コロナ禍の影響でクライアントの業績が伸び悩むなか、改善策の提示に追われている」。

加えて、クリエイティブに込めるメッセージに関しても、「我々は生活者の健康にも気遣っている」という姿勢が、生活者に伝わるようなアウトプットを求められるという。「また、『いま、プロダクトを買いたいと思わせるのではなく、将来的に買いたいと思わせたい』というリクエストも多い。クリエイティブに配慮したいのは山々だが、とにかく時間がない。ブレインストーミングを行うのさえ難しいのが現状だ」。

また、広告主の要求は、そもそもの契約に含まれない事項であることもあるという。「本音をいうと、『そもそもの契約にある業務外のことはできない』『忙しすぎてもう少し期限を延ばして欲しい』など、いいたいことは多い。しかしクライアントを失うのは避けたい。なので、基本的にはすべての要求を受け入れざるを得ない」。

こんなことははじめてだ

また、ある日系の大手総合エージェンシーでプランナーを務める人物も、5月以降徐々に業務量が増え、6月は「休日も返上するなど、入社以来もっとも残業が多かった」と述べる。同氏は現在、主に大手一般消費財メーカーのメディアプランナーを務めている。

「4月初旬から2〜3週間は、クライアントの動きが止まったことで、コロナ前と比較して業務量が半分以下になった。というのも、緊急事態宣言が出され、プロモーションのためのイベントも開催できなくなり、広告主側でも一度、予算や諸々の戦術の見直す必要があったからだ」と同氏。「ひとり暮らし、かつ在宅ワークということもあり、最初のうちは仕事がない上に人とも直接会えないので、気持ちが沈むことが多かった」。

だが5月に入ると、コロナ禍の影響で、クライアントのEC経由の売上が徐々に伸びてきた。これを受け、その成果を更に伸ばすための対応を求められるようになったという。「私のクライアントが扱っているプロダクトは主に一般消費財なので、自粛期間中の売り上げが落ちることはあまりなかった。しかしこの頃から、EC事業の対応を中心に、業務が増えつつあった」。

そして6月になると、緊急事態宣言が開けたことにより、アフター自粛における戦術策定で、広告主からさまざまなリクエストが飛んで来るようになった。「仕事があるのは嬉しいが、最近では、休日を返上して対応することもある」。

皆、コロナに振り回されている

このプランナーを務める人物によると、同氏が勤める大手総合エージェンシーでは、エンターテイメント系のクライアントなどの担当者も、現在はイベントが開催できない代わりに、オンラインイベントの開発などに追われているという。また、ほかの業界担当者に関しても、緊急事態宣言の解除を受け、自粛ムードが徐々に収まるなか、新たなキーメッセージの開発や再考が求められている。

「いまはどこの部署も、コロナ対応に追われている。広告主も我々エージェンシーも、皆コロナに振り回されている」。

Written by Kan Murakami
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