[ DIGIDAY+ 限定記事 ]近い将来、データ主導のメディア購入が様変わりするかもしれない。データプライバシー規制の強化、ブラウザによるトラッキング防止機能の変更という急激な変化が主な要因だ。一部のエージェンシーはそうした理由から、コンテクスチュアルターゲティングを現状より進化させる方法を検討しはじめている。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]近い将来、データ主導のメディア購入が様変わりするかもしれない。データプライバシー規制の強化、ブラウザによるトラッキング防止機能の変更という急激な変化が主な要因だ。一部のエージェンシーはそうした理由から、コンテクスチュアルターゲティングを現状より進化させる方法を検討しはじめている。
エージェンシーたちの目標は、コンテクスチュアルターゲティングをどのように用いれば、行動ターゲティング広告のようなアドレサブルメディアに使われる強力なオーディエンスターゲティングと、同等の効果が得られるかを探ることだ。ただし、データ保護規則に抵触するリスク、ブラウザのトラッキング防止機能の今後の変更に振り回されるリスクは、回避しなければならない。
エッセンス(Essence)のシニアバイスプレジデントとしてヨーロッパ、中東、アフリカ(EMEA)でのメディアアクティベーションを統括するライアン・ストーラー氏は「我々はこの綱渡りを成功させようとしている」と話す。「我々は未来に目を向けている。今後、コンテキストは重要性を増していくだろう。ユーザーレベルのデータが少なくなった世界で、コンテクスチュアルターゲティングの重要性が増すことを前提としている」。
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コンテクスチュアルターゲティングは個人の購入意思と推測されるもの、オンラインでの行動パターンに基づく広告やコンテンツのクリックではなく、広告が表示される環境に重点を置いている。当然ながら、コンテクスチュアルターゲティングのパフォーマンスに関するメディアエージェンシーの期待は、コンテクスチュアルターゲティングが生まれた当初よりはるかに高まっている。メディアエージェンシーは現在、サイトやページの情報、サイトのカテゴリーだけでなく、記事の論調や言葉そのもの、ページの画像、さらには特定のパラグラフに至るシグナルを拾いたいと考えている。
各エージェンシーの取り組み
エッセンスでEMEAのプログラマティック責任者を務めるマット・マッキンタイア氏は、「コンテクスチュアルターゲティングの(トラッキング)機会は以前よりはるかに拡大している」と話す。「ただし、コンテキストに基づいて、意思決定を行うために集めるべき情報を知るための体系的な方法が存在しない」。
それを達成するため、エッセンスでは試験的に機械学習を導入し、言葉、論調、画像といったコンテクスチュアルターゲティングの強力なシグナルをページ上で探している。
パブリッシャーやコンテクスチュアルターゲティングベンダーが投資を強化し、メディアバイヤーがキャンペーンに必要な規模を実現できるコンテクスチュアルターゲティング機能を開発することを期待するエージェンシーもいる。
ゼニス(Zenith)のデータ、テクノロジー、プログラマティック担当マネージングパートナー、サミール・シャー氏は「欧州連合 (EU) の一般データ保護規則(以下、GDPR)やCookieの削除を考慮し、コンテクスチュアルターゲティングの開発予算が増やされている」と話す。「ただし、残念ながら、技術への投資が十分に行われているとは言えない。いまだオーディエンスベースのアプローチが重視されているためだ」。
一度は忘れ去られた技術
コンテクスチュアルターゲティングは、以前からメディアプランの一部を成していた。しかし、長らく放置されていたと広く考えられている。2018年のGDPR施行に伴って懸念が浮上し、エージェンシーが再び優先順位を上げたのだ。パブリッシャーはコンテクスチュアルターゲティングへの関心が高まっていることを喜んでいる。リスクを嫌う広告主にブランドセーフティを実現する環境として売り込むことができるためだ。ただし、エージェンシーによれば、彼らもまた自身の提供するものを発展させるためにもっと多くのことができるという。
「しばらくコンテキスト技術の話が出ることはなかった。ページ上、サイト上でしか利用できないためだ」と、シャー氏は説明する。「パブリッシャーはそのようなソリューションがあることをほとんど忘れ去り、技術が実装されている場所の成長が停滞した。それでは規模の問題が発生してしまう」。
スピード不足も課題だ。ページを分類する速度はコンテキストデータプロバイダーによって大きく異なる。一部のベンダーはキーワードでコンテクスチュアルターゲティングできる機能を提供している。ブランドセーフティの問題を回避したいエージェンシーにとっては有益だ。ただし、あるエージェンシー関係者は、広告を表示したくないニュース速報が出ても、コンテキストプロバイダーによる特定が間に合わないことがあると話している。
しかし、コンテクスチュアルターゲティングのもっとも大きな欠点のひとつは、特定の瞬間に関連づけられていることだ。特定の瞬間とは、コンテンツを閲覧する時間、ページ上で過ごす時間のことだ。ウェブ全体で顧客の行動パターンを分析することに慣れているメディアエージェンシーにとっては、この事実が頭痛の種になる可能性がある。
グループ・エムの考え方
グループ・エム(GroupM)はそうした理由から、コンテクスチュアルターゲティングそのものではなく、サードパーティcookieを使用していないキャンペーンの規模拡大に注力し、投資を強化している。グループ・エムUKの最高データ責任者のリチャード・ロイド氏は、「まさに一瞬のコンテンツ消費だ」と語る。「もっと幅広いコンテキストを見ることができたら、結論を急いでしまったことに気付く可能性がある」。
メディア購入部門がファーストパーティデータやパブリッシャーのログインデータに基づき、適切なデータを正確に特定する方法はある。「最近、ブラウザの機能変更が次々と発表されているが、これらが事態をさらに複雑化している」と、ロイド氏はいう。とはいえ、将来的には、広告ターゲティングの手法として、コンテクスチュアルターゲティングの重要性が、いまより大きくなることを同氏も認めている。
「現在、業界全体が難しい状況に置かれている」と、ロイド氏は話す。「我々はいま、いたちごっこに巻き込まれている。入手可能な機能を使いこなそうとしても、結局、ブラウザや規制当局、英国個人情報保護監督機関(ICO)による(GDPRの)施行によって排除されてしまう」。それでも、短期的な視点に立っていたら、いずれ新たな難題に直面するかもしれないとロイド氏は警戒する。ICOがGDPRによる取り締まりの強化を決定した場合、主流のオーディエンスターゲティング戦略の一部が制限されてしまうためだ。
ロイド氏はさらに、6月20日、ICOがアドテク企業に発した警告は業界全体への通告だと捉えている。「我々はひとつの事実を思い知ることになった。我々のGDPRへのアプローチは業界全体に大きな変化をもたらしたが、それでも、安全で持続可能なアプローチではなかったという事実だ」。
Jessica Daviess(原文 / 訳:ガリレオ)