ものが売れるには特定のマーケティングが貢献しているとする考え方は急速に広まっているが、マーケターの多くはまだラストタッチアトリビューションを利用している。今回の「インターネットの謎」シリーズでは、購入につながる多くの要素を無視しているにもかかわらず、ラストタッチアトリビューションが利用され続ける理由を探る。
アトリビューションが注目を集めているが、広告バイヤーはいまでもアトリビューションについて愚痴をこぼしたがる。
アドエージェンシー、トンブラスグループ(The Tombras Group)でコネクションプランニング担当シニアバイスプレジデントを務めるケビン・バンバルケンバーグ氏は、「クライアントによく言っていることだが、何かが機能しているかどうかを判断するのにクリックデータを利用すると伝えなければならないときはいつでも、少なからず苦痛だ」と述べている。
ものが売れるには特定のマーケティングが貢献しているとする考え方は急速に広まっているが、マーケターの多くはまだラストタッチアトリビューションを利用している。ラストタッチアトリビューションとは、コンバージョンにいたった顧客に最後に広告を提示したチャネルが、その売上に貢献したと考えるやり方だ。今回の「インターネットの謎」シリーズでは、購入につながる多くの要素を無視しているにもかかわらず、ラストタッチアトリビューションがいつまでも利用される理由を探ってみよう。
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データの分散化
マルチタッチアトリビューションは、販売につながったすべてのイベントを追跡してデータを収集するもので、当然与えられるべきところに貢献度を割り当てるという点では、ラストタッチより効果的だ。だが、実際にやるとなると難しいものでもある。マルチタッチ(やその他の高度なアトリビューションの形式)で難しいことのひとつは、広告バイヤーは複数のデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)を使ってインベントリー(在庫)を購入していて、同じユーザーからのデータがあちこちのプラットフォームに重複して散らばっていることが多いため、そうしたデータをまとめるのが非常に大変な点だ。広告効果測定企業インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)の分析担当バイスプレジデントのトラビス・ラスク氏は、そのように説明する。
アドターゲティング企業ビアント(Viant)の最高マーケティング責任者(CMO)ジョン・シュルツ氏によると、複数のタイプのデータを生のまま大量に保管しているデータレイクを活用すれば、広告業者があらゆるデータをひとつにまとめるのが楽になるという。だが、そうしたデータをきちんとまとめて分析するために、広告主はデータの専門家の手助けを必要とする。
壁に囲まれた庭園
FacebookやGoogleは、広告主が自分のデータを完全な形で見られないようにしていることで悪名高い。広告主がこうした人気プラットフォームにおけるユーザーの行動を追跡できないため、販売に対する貢献度の割り当て方にズレが生じる、とラスク氏は言う。
大手のソーシャルプラットフォームは十分なデータを入手し、サードパーティーの力を借りることなく独自のやり方で貢献度を割り当てられるので、広告主は、そのプラットフォームのモデルが本当に公正なのかと疑問を抱いてきた。こうしたプラットフォームは、ラストクリックが奨励されるような種類の広告からも恩恵を受けているのだ。
DSPであるシンプリファイ(Simpli.fi)の最高経営責任者(CEO)フロスト・プリオロー氏は、ラストタッチを採用したバイヤーは貢献度を割当やすい有料検索やサイトリターゲティングのような戦術に予算を割り当てがちになると述べている。行動ターゲティングやジオフェンシングのように、消費者が購入を決定する前に広告業者が実行する戦術は、ラストタッチが使われると、広告予算を回してもらえなくなる可能性がある。
「(ラストタッチを利用することで)いずれにせよ何かを購入する顧客に対して多くの費用を投じられ、まだ意思決定のプロセスにある顧客に対しては予算が十分使われない」とプリオロー氏は語る。
最大の問題は惰性
モバイルアトリビューションの新興企業オープンアップ(OpenUp)のCEO、アシュウィニ・アンブラジャン氏は、ラストタッチが広く利用され続けている理由について、単純に便利だから、そして、消費者が購入前に遭遇するほかのマーケティング手法をきちんと評価するための正しいデータを入手することは広告業者には難しいからだと述べている。
広告計測企業ピクサレイト(Pixalate)のCEOを務めるジャラル・ナシールによれば、クロスデバイス計測や高度なアトリビューションテクニックが一般的になろうとしているが、そうした洗練されたサービスを実行、監視できるようになるまでにはまだ時間がかかるし、努力も必要だろうという。加えて、アトリビューションベンダーがベンダー料金を増額することもあり得る。だが、より良いアトリビューションがより効果的なメディアプランニングにつながり、ひいてはより多くの販売につながるなら、理論的には、その料金は十分に回収できるはずだ。
データにアクセスできないことと技術的な限界によって、ラストタッチは業界に定着し続けてきた。しかし、アトリビューションを認めるうえで超えるのがもっとも難しいハードルは、広告業者にルーティンを変えさせることだ。
「(ラストタッチを)誰もが非難したがる」とラスク氏。「だが、状況を変えようとするものはほとんどいない」。
Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)