まったく期待していないときに、ものすごいアイデアが忍び寄ってくる。そしてアドエージェンシーは、クリエイティブたちがひらめきを生むための環境作りにいつも苦労している。多くの場合、これはトイレにまで及んでいるのだ。今回いくつか掘り出し物が見つかったので紹介する。お楽しみあれ。
まったく期待していないときに、ものすごいアイデアが忍び寄ってくる。そしてアドエージェンシーは、クリエイティブたちがひらめきを生むための環境作りにいつも苦労している。多くの場合、これはトイレにまで及んでいるのだ。
これまでDIGIDAYでは、さまざまなアドエージェンシーのオフィスを見学してきたものの、見学にはあるスペースが除外されることがしばしばあった。それはトイレだ。アドエージェンシーのトイレから彼らの優先事項について驚くほどたくさんのことが判明するからだ。
この記事のために連絡をとったエージェンシーのなかには、内部情報に踏み込み過ぎだと判断するところもあった。もしかしたら、単純にあまりエキセントリックではないことが明らかになることを恐れ、改修工事のせいにしているのかもしれない(結局、彼らの競争心はとても強い)。しかし、今回いくつか掘り出し物が見つかったので紹介する。お楽しみあれ。
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ウェブゲリラの落書き帳
キテレツなエージェンシートイレの草分け的存在ともいえるのが、ミュンヘンを拠点にする会社、ウェブゲリラ(Webguerillas)によるもの。デザインエージェンシーのチューリップ(TULP)の思いつきで、最初の個室には、利用者の落書き行為を煽るために、油性マーカーペンが磁石で天井から吊り下げられている。極度の潔癖症には不向きな場所だろう。
そのエージェンシーは、オフィスで自己愛が強い人、または見せびらかしたがり屋のために、鏡で覆われたトイレも用意している。そして、神経質なスタッフには、文字通りトイレットペーパーで覆われているので、すぐに紙切れになる心配のない個室も別に用意している。
イソベルの官能ライブラリー
夜にはコメディシアターとして場を開放している風変りなエージェンシーのイソベル(Isobel)は、そのトイレに対して変わったアプローチをとっている。さまざまな書籍の1ページが散りばめられた壁紙に囲まれて、「トーキングトイレ」が英国人著者E・Lジェイムズの官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(50 Shades of Grey)』の一節を繰り返し音読再生する。それでも気が紛れないのなら、ボール紙で作られたC-3POの実物大の切り抜きが、コトの成り行きを見守る、もしくは静観する。その理由はいうまでもないだろう。
「創造的な世界で問題を解決していく人間として、イソベルのチームは自分たちのオフィス環境も同じ目線で捉えようとしている」と同社のマネージングパートナー、ポール・ホールド氏はいう。「重要なのは高価な『おもちゃ』を利用するのではなく、自分たちのスペースをより創造的に活用し、エージェンシーのメンバー全員を巻き込むということだ」。
デジタスLBiのタトゥーパーラー
『ポートランディア(Portlandia)』の歌詞のように、1890年代の夢は生き生きとしている。ロンドンのきらびやかでエッジの効いたエリアであるザ・イースト。そこをテーマにした、この歌にちなみ、デジタスLBi(DigitasLBi)の階下のトイレは、タトゥーパーラーをテーマにしている。タトゥーを入れて、髭でおおわれたスタッフやクライアントに馴染んでもらい、自宅にいるような気分にさせること間違いなしだ。
建物全体は、流行に敏感な人たちの聖地にある、かつて工業用ビルだった建物のあいだに位置する醸造所を改築したものだ。 そして、ジャックダウスタジオ(Jackdaw studios)によって制作された時代に逆行するデザインは、ノスタルジックな手描きの看板が特徴。
ソウルの定番のグラフティ作品
面白い事実として、リチャード・ベリーの1957年のヒット『ルイ・ルイ(Louie、Louie)』の創作はトイレットペーパーからはじまった。それはたぶん、音楽とトイレのつながりに限っていえるのかもしれないが、そんなことでエージェンシーのソウル(Soul)は、魂のおもむくままに生み出されたトイレを作り続けることを止めたりしない。壁画家でありイラストレーターでもあるケイト・フィリップソン氏に依頼し、ディスコやそのドアの音楽性にひらめきを得たアートワークで同社のトイレを装飾した。こちらのエージェンシーのトイレは「ディスコトイレ」と呼ばれ、親しまれている。
技術的に「ストリート」とはいえないものすべてを、ストリートアートで覆ってしまうことへの執着がなくなったら、そこはもうロンドンとは呼べないだろう。
スペシャリスト・ワークスの作品
CRMエージェンシー、ザ・スペシャリスト・ワークス(The Specialist Works)のオフィステーマは、「別のものに見えるもの」。卵っぽい机、木製の壁板が張られた紳士の集うクラブ風の会議室、偽の海の家(小屋)の列、その外側には(本物の)砂で仕上げがされている。
そのトイレもそれらに遠からず。イベント会場のスタンドに似せて作られたドアの後ろには、とてもファンキーな便座たちが鎮座している。
最後に、現実的なトイレの紹介
ウィーアーソーシャル(We Are Social)はマクサス(Maxus)と建物を共有しており、オフィスにはユニセックス用トイレがある。一方で、マインドシェア(Mindshare)のトイレは環境にやさしく、屋外から集められた雨水でトイレを洗い流している。