暗号通貨、 インフルエンサーマーケティング と出会う:Google & Facebook への広告禁止の末

Appleやマクドナルド(McDonald’s)、NBAといった企業のキャンペーンを手がけている、インフルエンサーマーケティング・エージェンシーのバイラルネーション(Viral Nation)には、ここ6カ月に渡り、新しいタイプのクライアントたちが押し寄せている。

ありとあらゆる無名の暗号通貨を取り扱う、仮想通貨企業だ。

バイラルネーションの共同創設者のジョー・ギャグリース氏によると、社内に「暗号通貨を支持する人」自体は沢山いるものの、企業としては扱わないことを決めたという。

同氏は、「詐欺と本物を見分けるのが難しく、関与するつもりはない。まっとうな企業や人間もたくさんいる業界であることは分かっているが、当社としてはパートナーのインフルエンサーや、インフルエンサーのオーディエンスたちの安全を確保し、リスクから遠ざけるべきだと考えている」と語る。

「暗号通貨系のYouTuber」

いまやインフルエンサーマーケティングと暗号通貨は、お互いの存在をはっきりと認識している関係だ。ブランドとインフルエンサーをつなげるテック系プラットフォームのindaHash(インダハッシュ)は、「暗号通貨系のYouTuber」と提携し、宣伝を行なったICO(Initial Coin Offering/新規仮想通貨公開)を終えたばかりだ。同社のCEO、バーバラ・ソルティシンスカ氏は、インスタグラムやYouTubeといったプラットフォームのインフルエンサーのなかには、新しい仮想通貨やICOを勧める見返りに、数千ドルから数万ドル(暗号通貨で支払われる場合だが)の報酬を受け取るケースが増えているという。

これは別に最近はじまったことではない。2017年末の急激な価格上昇にともない、暗号通貨のインフルエンサーは注目度を増してきた。FacebookやGoogle、Twitterといったソーシャルメディアが質の低い暗号通貨の広告を禁止してもなお、業界の人間の手に余るほどの暗号通貨ブームは、別の方法で成長を続けている。

ソルティシンスカ氏は「インフルエンサーに説明することが重要」だと語る。同氏は8万人のフォロワーを持つクリプトラブ(Crypto Love)、2万8000人のフォロワーを持つクラッシュクリプト(Crush Crypto)、4万4000人のフォロワーを持つクリプトバース(Cryptoverse)をはじめとするYouTubeチャンネルとの20分ほどの動画インタビューをいくつも行っている。この動画インタビューは、ひとりがこちら側に向かって長時間、熱心に話す形式が大半だ。「Facebookの広告では、10分や1時間の動画のように説明するのは難しい」と語るソルティシンスカ氏は、YouTubeこそが暗号通貨のニュースを求めて「皆が訪れる」場所であり、5万人規模のフォロワーがいるチャンネルの重要性を指摘する。

さらに同氏は本物の偽りのないコンテンツを保つことを重視しており、「自分たちがコンテンツに一切影響力を及ぼさないことを明言しておくことが重要だ。信頼できる動画を作って欲しいのだから」と語っている。

インフルエンサーの役割

ビットコインフォービギナーズ(Bitcoin for Beginners)の設立者、ケビン・ティン氏はYouTubeチャンネルを通じて初心者が暗号通貨をどうやって探しはじめればいいかという点から情報を提供している。だが暗号通貨系のYouTuberが皆、情報提供を重視しているわけではない。新しい通貨やICOを「レビュー」と題して勧め、見返りに報酬を受け取っている人間も多い。なお、このように報酬を受け取った場合、米連邦取引委員会(FTC)が公開を義務付けているスポンサード行為に該当する。ほかにもICOを実施した企業の役員にインタビューを行うYouTuberもいる。

ティン氏のもとにも、企業から商品やサービスのレビューの依頼が来るという。通常、報酬はイーサリアム(Ethereum)かビットコイン(Bitcon)で持ちかけられるそうだ。いまのところ、ティン氏はビーチェーン(VeChain)、エレクトロニアム(Electroneum)、イオタ(Iota)、バージ(Verge)、トロン(Tron)という仮想通貨のレビューを行ってきた。

同氏は、「別のやり方をとるインフルエンサーは多い。私のやり方はレビューというより、導入やプロジェクトの概要の紹介として取り上げている。この通貨が良い、悪いと言うことはないし、点数をつけるようなこともしない。スポンサードコンテンツかどうかにかかわらず、自分の動画内でそういった取り上げ方をしたことはない」と語る。

コミュニティの健全性のため

ティン氏は、金を稼ぐことは動機のひとつだが、コミュニティ全体の健全性のためにやっている側面が大きいという。ティン氏は12の仮想通貨を保有、HODL(ホールド)している。HODLは業界用語で、仮想通貨を買い、あまり取引することなく長期間保有する人を指す。同氏は、仮想通貨が非常に多いのは、完璧な仮想通貨が存在しないからだという。そして知識を伝えるコンテンツを作ることで、仮想通貨に真剣に投資している人たちが改善点や、より良い機能を作る役に立つはずだと語る。

そして、それが暗号通貨の広告がソーシャルメディアで禁止された理由のひとつでもある。麻薬の押収や通貨の盗難といった見出しに関連するものを除いても、暗号通貨は毎日のようにメディアに大きく取り上げられている。だが、一般市民のあいだでの暗号通貨の事業や技術に関する教育や理解は大きく遅れている。圧倒的な興味の大きさに対して業界はあまりにも未成熟なのだ。

ギャグリース氏は「インスタグラムのストーリーに載せてくれれば数千ドルを支払う、といって近づいてくる企業はいくつもあった。次にヒットする通貨として紹介して、彼らのプラットフォームに誘導して通貨を買わせたいという話だ」と明かす。また暗号通貨の広告はソーシャルプラットフォームで禁止されたが、暗号通貨のゴールドラッシュの勢いはあまりにも強く、企業の宣伝欲求を押し止めるには至らないという。

「考えうるあらゆる草の根タイプのアフィリエイトマーケティングや報酬が展開されているはずだ」と、同氏は指摘する。

そのうえで、上手な、そして正しいやり方であれば、インフルエンサーがこの理解度のギャップを埋められる可能性はある。

「ICOへのリターンは減る傾向」

暗号通貨の普及はいまだ最初期の段階にあり、参入には依然として大きな障壁がある。たとえばいくつかのウォレットが必要になる場合がある。暗号通貨のなかにはユーザーの自国通貨では交換できないものもあり、別の通貨の口座を作らなければならないことも考えられる。ほかにも暗号通貨のフォークが行われたときには、「新しい通貨」をどうやって請求するかも知っていなければならない。

インフルエンサーマーケティング企業のフォー(Fohr)のCEO、ジェームズ・ノード氏は、「理論的に見て、インフルエンサーは新しい商品やアイデアに多くの人が慣れ親しむのに役立つ存在だ。オーディエンスから信頼されている人間が暗号通貨のようにややこしく尻込みさせるようなものについて話すことは有益だし、それによっていずれ普及やより深い理解につながっていくかもしれない」と語る。

ハリボテの事業を恥知らずに宣伝する行為がエコシステムに悪影響を及ぼすのは間違いないが、そういったものは市場がいずれ淘汰するはずだとティン氏は語る。また同氏は、昨年、ICOが一大ブームだった頃は投資家は投資で大きなリターンが得られたかもしれないが、違法な事業への認識が広まりつつあるなか、そういったことは起きなくなるだろうと分析しており、次のように語った。

「すでにICOへのリターンは減る傾向にある。これは市場がICOで多くのでたらめがまかり通ってきたことに気づいた証だ」。

Tanaya Macheel(原文 / 訳:SI Japan)