- インフルエンサーマーケティングの成熟によって効果測定が厳しく求められるようになり、一部のエージェンシーではブランドリフト効果を測定するプロジェクトに取り組んでいる。
- マーケターらはインフルエンサーマーケティングの効果を他の施策と比較できるような指標を求めているが、デジタル上での活動は大半が測定可能であり、事業や広告キャンペーンの目的に応じて二次的な指標を持つべきと指摘するエージェンシー幹部も。
- AIを活用したコンテンツが増加し、インフルエンサーマーケティングにおけるコンテンツの量と質も変化している。効果測定のプロセスがこれまで以上に重要になるとともに、この領域でのAIの存在感も増すとの予測。
インフルエンサーマーケティングがホットな時期も終わりに近づき、インフルエンサー起用の価値が厳しく精査されるようになっている。そうしたなか、マーケティングエージェンシーのインフルエンサー(Influencer)は、インフルエンサーやクリエイターを使ったマーケティング施策の成否を示す指標として、ブランドリフト効果ソリューションを導入する予定だ。
ロンドンに拠点を置くインフルエンサー社はデータ測定専門のディスザット(ThisThat)と提携し、インフルエンサーマーケティング施策の投資収益率を算出すべく、自社が関与する主なキャンペーンにおけるブランドリフト効果を測定するプロジェクトに乗り出す。
ブランドリフトとは、ブランディング広告キャンペーンに接触した後の消費者の認識の変化をとらえた指標で、ブランドとの交流やブランド認知度の向上度合いを示し、その効果が、ブランドの製品売上や事業収益に影響を及ぼすとしている。
求められる成果指標の比較
多くのエージェンシーが、インフルエンサーの起用によるブランドの包摂性、ロイヤルティ、ビジネスに及ぼす影響などを評価できる従来の主要指標以外の指標を新たに見出そうとしている。インフルエンサー社のCEOであるベン・ジェフリーズ氏が企業のCMO(最高マーケティング責任者)からよく聞かれるのは、「インフルエンサーを使ったキャンペーンの成否をどうやって測定するのか?」という質問だという。
「加えてCMOたちは、インフルエンサーマーケティング施策の成果指標について、『ほかの施策の成果指標と比較検討できるのか?』という疑問を抱いており、それがインフルエンサーマーケティング予算の増加を阻む最大の要因だ」とジェフリーズ氏は語る。
インフルエンサーマーケティングエージェンシーのリンキア(Linqia)が発表した調査レポートによると、「最大の関心事は何か」という質問に対し、参加したマーケターの3分の2がマーケティング効果測定だと答えたという。
「企業がこれまでTVコマーシャルや屋外広告に使っていた予算の一部をインフルエンサーマーケティングに投じるようになるには、各種施策の効果の比較が可能な指標が必要だ」とジェフリー氏は指摘する。「そんな指標があればブランド各社は、自社のメディアプランのなかにインフルエンサーマーケティングへの投資を組み入れる確信が持てるだろう」。
効果測定の解決策は?
ジェフリーズ氏は課題の解決策として、ブランドリフト効果を指標として用いるべきだと主張する。今回の共同プロジェクトでは、ブランドの認知度、認識、影響度を測定するためインフルエンサーを使ったキャンペーンに接触した消費者を対象に、リンキアが費用を負担して調査を実施。推定費用は非開示ながら、「コスト低減のため、リンキアがディスザットとバルク料金を適用した契約を結んだ」と、ジェフリーズ氏は述べた。
「簡単にいえば、広告は一定の進化を遂げてきたが、効果測定はまだその域に達していない。だから我々が測定分野を進化させる取り組みに着手するわけだ」と、ディスザットの共同創業者であるマックス・オズボーン氏は説明する。
両社が取り組むブランドリフト効果ソリューションは、キャンペーン効果測定にあたり、ディスザットの「三次元アプローチ」を用いる。これはさまざまなプラットフォームの垣根を越えてコンテンツ、ターゲティング、配信の有効性の全体像をとらえる手法で、たとえばメタ(Meta)やTikTokなど個々のプラットフォーム限定の測定方法でターゲティングやクリエイティブの有効性を検証する、サイロ式のアプローチ(オズボーン氏言うところの「二次元アプローチ」)とは一線を画すものだ。[続きを読む]
- インフルエンサーマーケティングの成熟によって効果測定が厳しく求められるようになり、一部のエージェンシーではブランドリフト効果を測定するプロジェクトに取り組んでいる。
- マーケターらはインフルエンサーマーケティングの効果を他の施策と比較できるような指標を求めているが、デジタル上での活動は大半が測定可能であり、事業や広告キャンペーンの目的に応じて二次的な指標を持つべきと指摘するエージェンシー幹部も。
- AIを活用したコンテンツが増加し、インフルエンサーマーケティングにおけるコンテンツの量と質も変化している。効果測定のプロセスがこれまで以上に重要になるとともに、この領域でのAIの存在感も増すとの予測。
インフルエンサーマーケティングがホットな時期も終わりに近づき、インフルエンサー起用の価値が厳しく精査されるようになっている。そうしたなか、マーケティングエージェンシーのインフルエンサー(Influencer)は、インフルエンサーやクリエイターを使ったマーケティング施策の成否を示す指標として、ブランドリフト効果ソリューションを導入する予定だ。
ロンドンに拠点を置くインフルエンサー社はデータ測定専門のディスザット(ThisThat)と提携し、インフルエンサーマーケティング施策の投資収益率を算出すべく、自社が関与する主なキャンペーンにおけるブランドリフト効果を測定するプロジェクトに乗り出す。
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ブランドリフトとは、ブランディング広告キャンペーンに接触した後の消費者の認識の変化をとらえた指標で、ブランドとの交流やブランド認知度の向上度合いを示し、その効果が、ブランドの製品売上や事業収益に影響を及ぼすとしている。
求められる成果指標の比較
多くのエージェンシーが、インフルエンサーの起用によるブランドの包摂性、ロイヤルティ、ビジネスに及ぼす影響などを評価できる従来の主要指標以外の指標を新たに見出そうとしている。インフルエンサー社のCEOであるベン・ジェフリーズ氏が企業のCMO(最高マーケティング責任者)からよく聞かれるのは、「インフルエンサーを使ったキャンペーンの成否をどうやって測定するのか?」という質問だという。
「加えてCMOたちは、インフルエンサーマーケティング施策の成果指標について、『ほかの施策の成果指標と比較検討できるのか?』という疑問を抱いており、それがインフルエンサーマーケティング予算の増加を阻む最大の要因だ」とジェフリーズ氏は語る。
インフルエンサーマーケティングエージェンシーのリンキア(Linqia)が発表した調査レポートによると、「最大の関心事は何か」という質問に対し、参加したマーケターの3分の2がマーケティング効果測定だと答えたという。
「企業がこれまでTVコマーシャルや屋外広告に使っていた予算の一部をインフルエンサーマーケティングに投じるようになるには、各種施策の効果の比較が可能な指標が必要だ」とジェフリー氏は指摘する。「そんな指標があればブランド各社は、自社のメディアプランのなかにインフルエンサーマーケティングへの投資を組み入れる確信が持てるだろう」。
効果測定の解決策は?
ジェフリーズ氏は課題の解決策として、ブランドリフト効果を指標として用いるべきだと主張する。今回の共同プロジェクトでは、ブランドの認知度、認識、影響度を測定するためインフルエンサーを使ったキャンペーンに接触した消費者を対象に、リンキアが費用を負担して調査を実施。推定費用は非開示ながら、「コスト低減のため、リンキアがディスザットとバルク料金を適用した契約を結んだ」と、ジェフリーズ氏は述べた。
「簡単にいえば、広告は一定の進化を遂げてきたが、効果測定はまだその域に達していない。だから我々が測定分野を進化させる取り組みに着手するわけだ」と、ディスザットの共同創業者であるマックス・オズボーン氏は説明する。
両社が取り組むブランドリフト効果ソリューションは、キャンペーン効果測定にあたり、ディスザットの「三次元アプローチ」を用いる。これはさまざまなプラットフォームの垣根を越えてコンテンツ、ターゲティング、配信の有効性の全体像をとらえる手法で、たとえばメタ(Meta)やTikTokなど個々のプラットフォーム限定の測定方法でターゲティングやクリエイティブの有効性を検証する、サイロ式のアプローチ(オズボーン氏言うところの「二次元アプローチ」)とは一線を画すものだ。
この三次元アプローチは、業界、プラットフォーム、ペイドリーチといった切り口で何百というタッチポイントから収集したデータに基づき、広告キャンペーンのブランドリフト効果を総合的に評価できる。また、「かなり高額な料金設定の従来のソリューションに比べ、低廉なコストですむというメリットがある」とオズボーン氏は言う。「さまざまなタッチポイント間で同一条件による比較が可能になる」。
さまざまなタイプのインフルエンサーと組む
インフルエンサーマーケティングがビジネスとして成熟するにつれ、エージェンシーの戦略も進化し、ブランドや広告キャンペーンの目的によって、どのタイプのインフルエンサーを起用すべきかといった視点を取り入れるようになった。広告効果も、インフルエンサーとキャンペーンの組み合わせにより異なってくる。
ニューヨークに本社を置くエージェンシーのレイザーフィッシュ(Razorfish)の経験では最近、中堅のクリエイターやソーシャルメディアユーザーをマーケティングに起用する意向を持つ企業が増えてきたという。ブランドの多くがすでに、トップクラスのプロのインフルエンサーと契約しているという事情もあるだろう。レイザーフィッシュの消費者/コンテンツ経験部門担当のエグゼクティブバイスプレジデントであるクリスティーナ・ローレンス氏によると、各社の動きは、ブランドのビジネスチャンスの拡大とソーシャルメディアプラットフォームにおける多様性向上に向けて、インフルエンサーマーケティングミックスの最適バランスを模索しているためだという。
ローレンス氏はクライアントに対し、さまざまなタイプのインフルエンサーと組むよう助言しており、インフルエンサーとして生計を立てているプロだけでなく、マイクロインフルエンサーや、ニッチオーディエンスに人気があり特定のブランドとの相性がいいクリエイターも推奨している。
「インフルエンサー候補といってもいろいろで、以前当社がキャンペーンで協業した女優のケイト・ハドソンのような著名人に加えて、地方の有力インフルエンサー、たとえばある業界に特化した知識を持っている人、特定のトピックやコミュニティを代弁する人なども含まれる」とローレンス氏は言う。
デジタルで表現される活動はなんでも測定可能
インフルエンサー効果測定の二次的指標としては、利用者の声、アドボカシー、アーンドメディアへのブランド露出につながるパートナーシップなどがある(ローレンス氏はこれらを「よりソフトな指標」と呼んでいる)。しかし、どの指標を採用すべきかは、最終的には事業や広告キャンペーンの目的しだいだ。
「我々は、パフォーマンス重視の考え方をする必要がある。デジタルで表現される活動はなんでも測定可能だからだ」とローレンス氏は語る。「キャンペーンの成果を測定・分析し、どんなインフルエンサーやパートナーシップがマーケティング活動に最大の貢献をしているかを洗い出さなくてはならない」。
たとえば事業上の目標として「ブランド認知度向上」を測定する場合、広告のオーガニックビューやエンゲージメントの集計結果が鍵になる。ソーシャルコマースが普及しつつある今、売上とクリックスルー率も、インフルエンサーマーケティングの成果を測る指標となる。
「企業にとってインフルエンサーはいま、新たな店舗の入口のような存在となっている」とローレンス氏は言い添える。
増加するAIを活用したコンテンツ
ジェネレーティブAIを取り入れるインフルエンサーの増加を受けて、TikTokやインスタグラムなどのソーシャルメディアは、今後もAI搭載アルゴリズムを活用しながら成長していくとみられる。結果として広告コンテンツの量とパーソナライゼーションに変化が生じ、マーケティング効果測定のプロセスがこれまで以上に重要になるだろう。
コンサルティング会社のリッピンコット(Lippincott)でエクスペリエンス/イノベーション/エンジニアリング部門のシニアパートナーを務めるトム・アイェーロ氏はこう語る。「AI生成コンテンツがクリエイターの注目を集めているが、実際、影響力は非常に大きい。TikTokとスナップ(Snap)はこの分野をさらに強化していく構えのようで、AIツールの組み込みにより、並のクリエイターでも短時間で容易にコンテンツを制作できる環境を整えている」。
ローレンス氏もAIの影響については同意し、「各種ツールの台頭により広告コンテンツの量と質が変わっていくだろう」と述べた。AIの信頼性に関しては未知数が多いとはいえ、AIツールを実験的に利用するクリエイターたちが生み出すコンテンツの量はこれからも増えていくとローレンス氏はみている。「今後、コンテンツ制作量が増加するのは明らかだ。AIはクリエイティブコンテンツ制作における支援ツールとして、人間の能力を後押ししてくれるだろう」。
[原文:Influencer agency adopts brand lift metrics across campaigns to address measurement challenges]
Antoinette Siu (翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)