プログラマティック広告購入の増加に伴い、エージェンシートレーディングデスクモデルが登場した。しかし、トレーディングデスク本来の考え方から離れる動きが見られるようになり、透明性を欠いているとの不満がクライアントなどから寄せ […]
プログラマティック広告購入の増加に伴い、エージェンシートレーディングデスクモデルが登場した。しかし、トレーディングデスク本来の考え方から離れる動きが見られるようになり、透明性を欠いているとの不満がクライアントなどから寄せられている。
最近になって英国のエージェンシー界を去ったあるメディア幹部は、トレーディングデスクモデルを発展させてきたエージェンシーの内側と、このモデルが議論を呼んでいる理由を知ることになったという。
この幹部が匿名を条件に、プログラマティックの世界に適応するにあたってエージェンシーが懸念しているいくつかの事柄と、高い利益を上げているトレーディングデスクをいまも彼らが利用し続けようとする理由を説明してくれた。
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エージェンシーが仲介排除されることを恐れているのはわかりますが、どのように対応しているのでしょうか?
エージェンシーの存在理由は、常にそのメディアバイイングパワーにある。広告主がエージェンシーを使う大きな理由は、その交渉力だ。広告主がスカイ(Sky)のような大手メディアであっても、電通イージス・ネットワークはテレビ広告枠をスカイより安く購入できるだろう。エージェンシーにとって入札方式のメディアの問題は、そのバイイングパワーが意味をなさなくなってしまうことだ。そして、このことはエージェンシーの主な競争優位性にも当てはまる。残るのは専門性だけになるため、ほかのエージェンシーとの差別化が難しくなり、その価値は下がってしまうのだ。
現実には、この戦略はどのように進んでいっているのでしょうか?
ザクシス(Xaxis)は、あらゆる大手パブリッシャーのインベントリー(在庫)を必ず最初に見られるようにしている。そのため、広告主はアドエクスチェンジから得られるのと同じリーチを得られるが、入札をする必要はない。そして、広告主に「私たちをご利用ください。私たちなら、ヤフー(Yahoo!)やAOLのインベントリーをほかのどこよりも安く獲得できます」と言える。結局はバイイングパワーに行き着くのだ。
あなたは英国人です。英国市場のトレーディングデスクがほかの地域とどのように異なっているのか教えてください。
我々の見るところ、ほかの地域以上に、エージェンシーグループが不透明なトレーディングデスクを利用してクライアントのデジタルメディア支出を独占している。これは、英国の市場があまりに集中化しているからだ。あるメディアエージェンシーのグループが実はみな同じ屋根の下にいる場合が多い。米国では、各社が異なる場所にいるため、ほかの場所で行われている取り引きをコントロールすることは英国より難しい。
しかし、エージェンシーは、トレーディングデスクに代わるものを探しているクライアントに対して自分たちはオープンだと述べています。
エージェンシーにそんなことをする動機はない。エージェンシーのスタッフは、持ち株会社のトレーディングデスクを経由してお金を使うようにクライアントに勧めなければ解雇すると脅されている。何だかんだいっても、これが彼らのビジネスでもっとも大きな利益を生み出している部分なのだから。
エージェンシーがこれまで、メディアに対して中立であったことはない。彼らは、テレビや印刷物、ラジオで以前に上げていたよりも高い利益を得られるオプションを手に入れた。利益を上げることは、それが悪用されない限り良いことであり、トレーディングデスクでもそれは同じだ。
オムニコムグループ(Omnicom Group)が客観的なコンサルティングビジネスを構築できる、などと考えるのはバカげている。彼らは利害の衝突を避けることができない。要件をチェックさせても、結局はオムニコム傘下のアキュエン(Accuen)を勧められるのであれば、誰が1万ポンド(約165万円)も支払う気になるだろうか。
マージンの縮小への対応策として、アービトラージビジネスモデル(国や地域ごとの差異を理解して活用する戦略)が発展しました。お金を儲ける権利は誰にでもありますが、あなたの在職中にこのモデルが悪用された例を目にしたでしょうか?
一部のトレーディングディレクターは、「クソ隠し(hiding the turd)」と呼ぶ手法を実践している。どこのエージェンシーでも、クソ(turd)とは少し問題のある手段で手に入れた大金を意味する。彼らがすべきことは、そのクソを誰からも見られないようにすることだ。そのために彼らは、こぎれいなダッシュボードや売れっ子のアカウントディレクターを使って、その場しのぎの広告戦略をプレゼンする。その間に、トレーディングディレクターはお金をあちこちに移しているのだ。
テクノロジー企業も、莫大なマージンと強引なビジネス戦略を非難されています。Googleは、エージェンシーがトレーディングデスクを抱き合わせ販売しているのと同じように自社のアドテク製品を抱き合わせ販売しているのではないかと疑われています。この状況でエージェンシーを悪者扱いすることは、間違っていないでしょうか?
これはエージェントに対する攻撃ではない。彼らは広告ネットワークの多くがかつて提供していたよりも多くの価値を提供している。私が説明しようとしているのは、トレーディングデスクがあのような行動を取る理由だ。私は、彼らがバイイングパワーを維持しようとするのは悪いことではないと思っている。それは、いまの広告業界で見られる興味深いダイナミクスのひとつに過ぎない。ここから多くのニュースが生まれているのだ。
米DIGIDAY編集部注:このインタビュー記事は、ある信頼できる情報筋の見解と経験に基づいたものではありますが、その内容を裏付けるものではありません。
Chris Smith(原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Thinkstock / GettyImage