収支報告のシーズンがまた巡ってきた。今回もまた、広告およびメディア業界にとって激動と言ってもいい四半期に対して、関係各社からは対照的な見解が飛び交った。 世の中が試練のときを迎えるなか、各社の幹部はこの収支報告シーズンの […]
収支報告のシーズンがまた巡ってきた。今回もまた、広告およびメディア業界にとって激動と言ってもいい四半期に対して、関係各社からは対照的な見解が飛び交った。
世の中が試練のときを迎えるなか、各社の幹部はこの収支報告シーズンの機会を利用して、投資家に向けて2023年第2四半期の数字を、頭がくらくらするような専門用語や特有の言い回しに包んで披露した。
本記事では、そのなかでも最大級の罪を犯した各社幹部と、そのコメントに焦点を当てて、その裏にある本当の意味を暴いてみたい。
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ガネット(Gannett)最高財務責任者、ダグ・ホーン氏のコメント
長引く逆風にもかかわらず、プリント広告の売上減は既存店ベースの前年比で8.9%減にとどまった。この1年では最小のマイナスだった。
〈このコメントの意味〉
ガネットのプリント広告事業に関しては、今期の数字はもっと悪くてもおかしくなかった。
Netflix最高財務責任者、スペンス・ニューマン氏のコメント
Netflixの広告全体のARM(サブスクリプション+広告)は、世界全体で広告なしのベーシックを引き続き上回っている。スタンダードも同様で、これに関しても米国内では広告なしのスタンダードを広告ありのプランが上回っている。したがって、全体的に見て、会員当たりの広告売上に満足している。
前期に引き続き、こちらの広告プラン、広告サービスを成長させることに大いに期待している。会員にとっても、弊社のビジネスにとっても喜ばしいことだ。とはいえ、(Netflix共同CEOの)グレッグ・ピーターズが述べているように、ここから時間をかけて、事業の収益とマージンの重要な追加的増加を狙っていかねばならない。
〈このコメントの意味〉
いまのところ、広告はNetflixの主軸をなす収益源ではない。
ワーナー・ブラザースCEO、デビッド・ザスラブ氏のコメント
我々は、いかなる犠牲を払ってでもサブスクリプションを追い求めるのではなく、利益をもたらす成長にフォーカスした持続可能なD2Cビジネスの構築に取り組んでいる。
〈このコメントの意味〉
一握りの忠実な顧客にフォーカスすることで莫大な収益が得られるのに、誰が巨大な購読者基盤を必要とするのか。
コムキャスト(Comcast)プレジデント、マイケル・カバナー氏のコメント
いまスポーツ市場で起きていることの一環として、コムキャストがビジネスの転換に前向きになっているという憶測が飛び交っている。これについて尋ねられてきたし、これに関する記事も目にしてきたが、私に言えるのは、そうなる確率は非常に低いということだ。ご想像のとおり、税金や少数株主、構造全般に関する大きな問題がいくつもあるからだ。
〈このコメントの意味〉
これほど大規模な契約には、調整が必要な箇所があまりにも多く、それがどんなに理にかなっていようと、とてもではないがまとめきれるものではない。
ITVのCEO、デイム・キャロリン・マッコール氏のコメント
今期は、世界金融危機以来、最悪の広告氷河期だ。
〈このコメントの意味〉
今期は、世界金融危機以来、TV放送局にとって最悪の広告氷河期だ
ペプシコ(PepsiCo)CEO、ラモン・ラグアルタ氏のコメント
我々が販売活動を行う市場の大多数で、弾力性が改善しつつあり、この状態が今年の上半期にかけて続いている。低所得層の消費者が支出の最適化に取り組むという傾向は見られるものの、消費者の多くは弊社の各カテゴリー、各ブランドにとどまってくれている。弾力性の最小化に向けたマーケティングチームやコマーシャルチームの取り組みには、目を見張るものがある。
〈このコメントの意味〉
ここ数年、ペプシコの商品は値上がりし続けているが、それでも消費者は買い続けてくれている。
ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)CEO、アーサー・サドゥン氏のコメント
インフレとは関係なく人員の上限を抑えることができている。弊社は現在、成長を上回るペースで人員の削減を進めている。AI、そして自社AIプラットフォームのマルセル(Marcel)のおかげで、労働力を本格的に最適化できるようになったからだ。その仕事に合った適性と熱意を持つ人材を見つけ、彼らに十分な研修を行い、十分な給料を払い、チャンスを与えられるようにしている。
〈このコメントの意味〉
我々は現在、人員を削減しながら成長している。AIによって、首脳陣がクライアントやほかの幹部との仕事に費やす時間が解放されている。
Roku(ロク)メディア事業部プレジデント、チャーリー・コリアー氏のコメント
弊社は特定のバーティカルに依存しすぎることを望んでいない。したがって今後も、事業を多角化して、新たな収益源を確立し、通常はM&E(メディアおよびエンターテインメント)プレースメントのみだったものを、M&E以外の広告主に提供するための新たな手段を構築している。
〈このコメントの意味〉
この広告事業の減速は痛い。広告主の幅を広げて、広告費をもっと呼び込む必要がある。
パラマウントグローバル(Paramount Global)CEO、ボブ・バキッシュ氏のコメント
業界として、このようなこと(2023年のハリウッドストライキ)を防ぐための合意に至らなかったのは、非常に残念だ。クリエイティブコミュニティとの協力関係は、健全な映画産業にはなくてはならないものだ。我々も、よいタイミングでの問題解決を願いながら、先へと続く道を見つけることに全力で取り組んでいる。同時に、映画ファンなどに対しても、この中断を最小限に抑える責任が我々にはある。
〈このコメントの意味〉
このようなシナリオでは、金を持っている者がルールを決める傾向がある。
オムニコム(Omnicom)CEO、ジョン・レン氏のコメント
柔軟性を維持することは、年間を通じて一貫したテーマだった。洗練された大企業にとって、コロナ禍によるマイナスの影響はどれも御し易いものと言える。この危機と対峙できるようにと、世界各国で政府による支援が行われたからだ。それが終わると、当然のことながら、その業界に合わせて、さまざまなかたちでビジネスの順応が迫られるようになった。消費者に金銭的余裕はまだ残っているが、その行動に変化が起きていることは確かだ。
〈このコメントの意味〉
コロナ禍がピークを迎えていた当時は、緊急時対応プランと、メディアの柔軟性が勝負のカギを握っていた。そしていま、迅速なターンアラウンドやスケジュールの短縮など、柔軟性のさらなる強化がマーケティングの成否を決めるようになっている。
IPG CEO、フィリップ・クラコフスキー氏のコメント
現時点では、弊社の今年の見通しが収益変化率の回復を前提としたものでないことを指摘しておく。
〈このコメントの意味〉
IPGの今年の見通しを決めるのは、近い将来に売上が回復するかどうかではない。売上がすぐに回復しようがしまいが、我々は自分たちの戦略を重視する。
アルファベット(Alphabet) CEO、サンダー・ピチャイ氏のコメント
YouTubeショートは現在、1年前の15億人から増加し、20億人超のログインユーザーに毎月視聴されている。
〈このコメントの意味〉
TikTokを追い越して、YouTubeショートが月間ユーザー数のトップの座はもらった。
Snapchat(スナップチャット) CEO、エバン・シュピーゲル氏のコメント
より高い収益成長率を実現するために、我々は3つの優先課題に集中して取り組んでいる。ひとつ目は、自社のプロダクトに投資して、コミュニティの成長を維持し、エンゲージメントを深めること。2つ目は、自社のダイレクトレスポンス事業に大型投資を行い、目に見える広告費用対効果をパートナーにもたらすこと。そして3つ目は、より強靭なビジネスを構築するために、新たな収益源を開拓して高水準の成長を多様化することだ。
〈このコメントの意味〉
もっと上手く稼げるようにする必要がある。
メタ(Meta)CEO、マーク・ザッカーバーグ氏
Facebookとインスタグラムのリールの再生回数は、1日当たりで2000億回を超えている。リールのマネタイズも順調だ。弊社アプリの年間売上のランレートは現時点で100億ドル(約1兆4560億円)を超えており、昨年秋の30億ドル(約4370億円)から増加している。
〈このコメントの意味〉
メタはもうすぐ、ショートフォーム動画からも大金を稼げるようになるはずだ。
ウーバー(Uber) CEO、ダラ・コスロシャヒ氏のコメント
現在、弊社の広告事業の圧倒的大部分を占めているのは、ウーバーのマーケットプレイスで高いポジションを獲得し、生産性を高めることを目指して入札を行なっている中小企業だ。彼らが手にする広告費用対効果は7~9倍であり、したがってこれは、莫大な利益を生む、極めて健全な支出といえる。この支出は、中小企業がウーバーのプラットフォーム上にビジネスを築くことを実質的に可能にしている。非常に喜ばしいことだ。
〈このコメントの意味〉
ウーバーには、広告という儲け続けるためのプランがある。
クリテオ(Criteo)CEO、メーガン・クラーケン氏
弊社は今期も、ハッシュ化メールの入札増加を記録し、将来に期待が持てる成果を上げることができた。米国における、あるトップパブリッシャーパートナーのケースでは、SafariブラウザのトラフィックのCPMに140%近くの増加が見られた。そしてこれが、ハッシュ化メールが同パートナーの認証ログインユーザーのターゲティングシグナルとして有効化されたのちに、メディア費の前年比で70%の増加を生む一因となった。
この例が示すのは、弊社のパブリッシャーパートナーはサードパーティCookieがChromeとAndroidで非推奨になっても、事業の継続に自信を持てるということだ。
〈このコメントの意味〉
サードパーティCookieの代わりを探しているのなら、ハッシュ化メールを選んでおけば間違いない。
[原文:Here’s what ad and media execs really mean when commenting on a whirlwind Q2]
Seb Joseph(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)