「広告のアイデアを盗まれるのは、日常茶飯事だよ」:ある若手広告クリエイターの告白

広告業界という熾烈な競争社会において、広告エージェンシーのクリエイターたちがくり返し漏らす言葉のひとつに、同僚が人のアイデアを平気で自分のものにする、という苦情がある。

匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回はある広告エージェンシーの若手クリエイターに、クリエイターがなぜ他人のアイデアを素知らぬ顔で取るのか、そしてこの悪習慣を止めるために業界がするべきことは何かを聞いた。

以下、インタビューの要約だ。読みやすさを優先して、一部編集してある。

――同僚にアイデアを盗まれたことは?

何度かね。よくある話なんだ。どのクリエイターに聞いても、そういうことをしたやつを知ってるって言うよ。数年前、僕はパートナーとあるプロジェクトに取り組んだ。その仕事はクライアントと親しかった別のチームが引き継ぐことになったんだけど、アイデアは僕らのものが通っていた。でも、そのチームは僕らにひと言もなく、勝手な理屈を付けて、その仕事を自分たちのポートフォリオに加えたんだ。恥を知れ、と言いたいね。

――そうした行動を強いる背景には、何があると思う?

必死なんだろ。きつい業界なんだよ。運が良くないとやっていけないし、巡り合わせも良くないとならない。仕事をあまり取れていないエージェンシーの社員はみんな、ちょっとおかしくなっている。新規の仕事が手に入るかもしれないとなると、どうにかして自分をよく見せようと躍起になるし。それで、してもしない仕事を自分のポートフォリオに入れてもいいと勝手に思い込む。あとはまあ、単にがめついだけの連中もいると思うけど。

――賞を取ったプロジェクトは、さらに狙われやすい?

だね。ぼくが関わったあるプロジェクトでは、何人かのクリエイティブディレクターがプロデューサーに、実際にはまるで関わっていないくせに、自分たちをアートディレクターやコピーディレクターとしてクレジットしてくれと頼み込んでいた。それはカンヌでいくつか賞を取ったものなんだけど、SVPが気づいて、プロデューサーにそいつらの名前を外させた。別のプロジェクトでは、ある男にちょっとした仕事を頼んだ。そいつは、その仕事に1時間かそこらしか手伝っていないのに、賞を取った途端、自分のポートフォリオにちゃっかり加えていた。

――そういう人々は、やってもばれないと思っている?

気づかれないと思ってるんだろうけど、実際の話、誰がそういうことをしたのかはみんな知っているし、そういう連中の評判は落ちていく。広告業界は狭いからね。

――その手のことがまかり通っている理由は?

リクルーターや人事担当は面接の前に、何千ものポートフォリオに目を通す。だから、その人物の名前が本当にそのプロジェクトの制作者クレジットに載っているかどうか、わざわざ裏を取って調べている時間はない。それに、リクルーターは応募者にその手の質問はしない。僕も何度か面接を受けたことがあるけど、ポートフォリオに載っているプロジェクトでの役割について聞かれたことは一度もない。たぶんそれで、「そうか、本当はソーシャルポストしかやってないなんて、絶対にばれないぞ。おれの名前はクレジットリストにある。だから、これはオレのアイデアだと言っても大丈夫だ」と思うんじゃないかな。触れてもいない仕事を自分のものだと勝手に言うのを、この業界は良しとしている。悲しいね。

――そういう人々はそれで仕事を手に入れられている?

ポートフォリオにすばらしい仕事が載っているのを見れば、誰だって仕事をオファーしたくなるだろ。アイデアを出してないくせに、それをまとめた責任者というだけで、本来は出世するべきじゃない人間が昇進することもある。大企業の場合は、特にそう。 つまり、そいつらはろくに仕事もしないくせに、高い金だけ取る、というわけ。

――そういう人々を非難しないのはなぜ?

知らないよ。みんなそういう泥棒連中には面と向かって言わないで、困った状況なんだと、陰でぶつぶつ言うだけ。本当はそいつらの所に行って、ちゃんと話をするべきなのに。結局は、業界の文化の問題なんだ。その手の振る舞いは良くないということを業界がはっきり示さないと、この先も絶対になくならない。

――事態を変えるために業界ができることは?

非難するだけじゃ足りない。もっと本格的な会話が絶対に必要だ。クレジットリストは、貢献度の高い順に並べるべきだと思う。ブラジルでは、プロジェクトのアイデアを出した人がリストのいちばん上に載る。だから、たとえばプロジェクトの中心的アイデアを出したのが、たとえジュニアアートディレクターだとしても、その人の名前がCTOよりも上に来る。それなら、その人がプロジェクトにとってどれくらい重要なのか、リクルーターにもひと目でわかる。それと、賞を取ったアイデアの場合は特に、リクルーターはその人がキャンペーンで果たした役割について、ちゃんと聞くべきだ。そうすれば、泥棒連中はびびって、人のアイデアを勝手にポートフォリオに入れるのを考え直すんじゃないかね。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:SI Japan)