MFA(made-for-advertising)サイトの業界標準の定義がいまだ定まらないなか、メディアエージェンシー最大手のひとつであるグループエム(GroupM)が、この問題の解決に自ら乗り出し、潜在的なMFAサイトを洗い出すべく、自社の運用型広告の掲載先サイトを徹底的に調べはじめた。
このような取り組みに着手した最初のメディアバイイングエージェンシーを自任するグループエムは、英国の「m-List」をはじめ、同社が事業展開するすべての市場のすべてのインクルージョンリストにMFA対策を追加した。インクルージョンリストは、広告枠の仕入れ先としてあらかじめ承認したウエブサイトを一覧化したもので、買いつけ担当者がクライアントのプログラマティック広告予算の投資先を選定する際に活用される。
最近、MFAサイトに自社の広告が表示されることを懸念するマーケターが増えており、バイヤーにはこうしたドメインを回避するべきというプレッシャーがかかる。
業界の定義は未だ不在
グループエムのインクルージョンリストに含まれるパブリッシャーのドメインは、現在、ジャウンスメディア(Jounce Media)のMFAリストと照合されるようになっている。ジャウンスメディアはプログラマティック広告のサプライチェーンマネジメントを支援する企業で、そのMFAリストは6つのKPIに基づいて毎日更新される。このリスト、およびジャウンスが使用するMFAサイトの判定基準は、本来業界団体が定めるべき普遍的な定義の代わりに広告業界で広く採用されている。グループエムはジャウンスのMFAリストのベータ版をこの6月から試験運用している。
ジャウンスメディアを創設したクリス・ケイン氏はこう説明する。「ジャウンスにとって、MFAが指すものは明らかだ。グループエムは我々のリストなら使っても大丈夫だと判断した。そもそも、このリストは誰にとっても同じものだ」。
グループエムはジャウンスメディアがMFAリストを作成する基準について発言権を持たない。しかし、グループエムで運用型広告の投資をグローバルに統括するローリー・レイサム氏によると、ジャウンスメディアとMFAリストに記載されたパブリッシャーのあいだで、警戒対象となった理由を確認するための議論が行われるという。これまでのところ、グループエムのインクルージョンリストに記載されているパブリッシャーに関する限り、突然ジャウンスのリストに載せられたというケースは起きていない。
「明らかに、業界としてのMFAの定義はまだない。グループエムでも明確化の努力はいまも続いている」とレイサム氏は話し、こう続けた。「さしあたり、ジャウンスと連携して、彼らの定義の改善に取り組んでおり、排除の対象となったドメインについて疑問があれば、異議を唱えてその理由を説明してもらう」。レイサム氏によると、こうした議論があれば、グループエムのインクルージョンリストでパブリッシャーの扱いを変更するにしても、そのメディアを所有する企業に理由を伝え、透明性の改善を促すことができるという。
インプレッションが購入につながる、という考えは非現実的
毎日更新されるジャウンスのMFAリストをグループエムの審査プロセスに追加することで、グループエムのインクルージョンリストの更新頻度も上がるとレイサム氏は言うが、グループエムがこのスピードを社内に反映できるか否かは不明だ。現在、同エージェンシーのm-Listは約50社から60社のパブリッシャーが運営する6000前後のドメインを網羅するのだが、このリストは四半期単位でしか更新されない。さらに、リストの規模に関しても、一定数に維持する努力はなされておらず、ジャウンスから提供されるMFAリストをもとに、必要に応じてパブリッシャーの追加や削除を行っている。
グループエムは運用型広告事業から自主的にMFAを排除しはじめた最初のメディアバイイングエージェンシーのひとつというだけではない。従来、MFAサイトはいわゆる「虚栄の指標」、たとえば高いビューアビリティや動画視聴完了率、あるいは最底辺のインプレッション単価(CPM)を最大の売りにしてきた。しかし、こうしたインプレッションが消費者の商品購入に直結するのかと言えば、それは単に疑わしいだけでなく非現実的なのではないか。現在の広告業界において、グループエムはMFAサイトの効果に疑義を唱える先駆者ともなっている。
MFA(made-for-advertising)サイトの業界標準の定義がいまだ定まらないなか、メディアエージェンシー最大手のひとつであるグループエム(GroupM)が、この問題の解決に自ら乗り出し、潜在的なMFAサイトを洗い出すべく、自社の運用型広告の掲載先サイトを徹底的に調べはじめた。
このような取り組みに着手した最初のメディアバイイングエージェンシーを自任するグループエムは、英国の「m-List」をはじめ、同社が事業展開するすべての市場のすべてのインクルージョンリストにMFA対策を追加した。インクルージョンリストは、広告枠の仕入れ先としてあらかじめ承認したウエブサイトを一覧化したもので、買いつけ担当者がクライアントのプログラマティック広告予算の投資先を選定する際に活用される。
最近、MFAサイトに自社の広告が表示されることを懸念するマーケターが増えており、バイヤーにはこうしたドメインを回避するべきというプレッシャーがかかる。
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業界の定義は未だ不在
グループエムのインクルージョンリストに含まれるパブリッシャーのドメインは、現在、ジャウンスメディア(Jounce Media)のMFAリストと照合されるようになっている。ジャウンスメディアはプログラマティック広告のサプライチェーンマネジメントを支援する企業で、そのMFAリストは6つのKPIに基づいて毎日更新される。このリスト、およびジャウンスが使用するMFAサイトの判定基準は、本来業界団体が定めるべき普遍的な定義の代わりに広告業界で広く採用されている。グループエムはジャウンスのMFAリストのベータ版をこの6月から試験運用している。
ジャウンスメディアを創設したクリス・ケイン氏はこう説明する。「ジャウンスにとって、MFAが指すものは明らかだ。グループエムは我々のリストなら使っても大丈夫だと判断した。そもそも、このリストは誰にとっても同じものだ」。
グループエムはジャウンスメディアがMFAリストを作成する基準について発言権を持たない。しかし、グループエムで運用型広告の投資をグローバルに統括するローリー・レイサム氏によると、ジャウンスメディアとMFAリストに記載されたパブリッシャーのあいだで、警戒対象となった理由を確認するための議論が行われるという。これまでのところ、グループエムのインクルージョンリストに記載されているパブリッシャーに関する限り、突然ジャウンスのリストに載せられたというケースは起きていない。
「明らかに、業界としてのMFAの定義はまだない。グループエムでも明確化の努力はいまも続いている」とレイサム氏は話し、こう続けた。「さしあたり、ジャウンスと連携して、彼らの定義の改善に取り組んでおり、排除の対象となったドメインについて疑問があれば、異議を唱えてその理由を説明してもらう」。レイサム氏によると、こうした議論があれば、グループエムのインクルージョンリストでパブリッシャーの扱いを変更するにしても、そのメディアを所有する企業に理由を伝え、透明性の改善を促すことができるという。
インプレッションが購入につながる、という考えは非現実的
毎日更新されるジャウンスのMFAリストをグループエムの審査プロセスに追加することで、グループエムのインクルージョンリストの更新頻度も上がるとレイサム氏は言うが、グループエムがこのスピードを社内に反映できるか否かは不明だ。現在、同エージェンシーのm-Listは約50社から60社のパブリッシャーが運営する6000前後のドメインを網羅するのだが、このリストは四半期単位でしか更新されない。さらに、リストの規模に関しても、一定数に維持する努力はなされておらず、ジャウンスから提供されるMFAリストをもとに、必要に応じてパブリッシャーの追加や削除を行っている。
グループエムは運用型広告事業から自主的にMFAを排除しはじめた最初のメディアバイイングエージェンシーのひとつというだけではない。従来、MFAサイトはいわゆる「虚栄の指標」、たとえば高いビューアビリティや動画視聴完了率、あるいは最底辺のインプレッション単価(CPM)を最大の売りにしてきた。しかし、こうしたインプレッションが消費者の商品購入に直結するのかと言えば、それは単に疑わしいだけでなく非現実的なのではないか。現在の広告業界において、グループエムはMFAサイトの効果に疑義を唱える先駆者ともなっている。
メディアマネジメント企業のエビクイティ(Ebiquity)で最高戦略責任者を務めるルーベン・シュラーズ氏は、「広告業界最大手のプログラマティックバイイングシステムのひとつに、ジャウンスのテクノロジーが連携されたことは大きな進展であり、ほかの企業も追随する可能性が高い」と米DIGIDAYに語っている。
「この取り組みがうまく運べば、MFAサイトには大きな打撃となるだろう」と、シュラーズ氏は話す。「グループエムが扱うメディア予算は支出全体の4分の1を大きく上回る。過度に誇張された虚栄の指標に頼る時代は終わりつつある」。これは、レイサム、ケイン両氏にも共通する意見のようだ。
匿名で取材に応じたあるメガエージェンシーの幹部は、「メディア評価の際に、広告が氾濫している状態、いわゆるクラッターを探せば、MFAはもっと容易に発見できるし、多くの場合回避できる」と指摘している。「誤解を恐れずに言えば、MFAの決め手の95%近くはおそらくこのクラッターだ。我々のブランド、あるいは我々が扱うクライアントが消費者と接触するのにふさわしいサイトを考えるとき、クラッターの認められるサイトの価値は大きく下がる」。
その反面、「ブランドはエージェンシーに、エージェンシーはDSPに、価格の引き下げを強く迫る。この傾向がすぐになくなるとは思えない」とケイン氏は述べている。
「バイヤーはMFAにお金を使うべきではない」
バイヤーにMFAを敬遠させる何かがあるとすれば、それは全米広告主協会(ANA)が6月に公開した報告書によって、MFAに多くの注目が集まったことかもしれない。こうした注目こそが、運用型広告キャンペーンの成果を評価する方法に真の変化をもたらしうると、ジェウンスメディアのケイン氏は述べている。
同氏はさらにこう続ける。「バイヤーは金を使うこと、あるいは使わないことによって、自らの意思を表示しなければならない。それがグループエムのやっていることだ。MFAが存在するのは、彼らのビジネスが金になるからだ。バイヤーが金を払わなければ、MFAは衰退する」。
シュラーズ氏もこの意見に同調し、こう付け加えた。「ピュブリシス(Publicis)、電通、IPG、オムニコム(Omnicom)らが追随しないはずがない」。
本稿の公開までにコメントを得られなかったメガエージェンシーもあるが、彼らの多くが(MFA問題の解決に向けた重要な第一歩となる)MFAの定義づけに注力するだけでなく、実際にMFA対策を講じてもいる。ジャウンスメディアと協議している、あるいはすでに協力をはじめているエージェンシーもあるが、二酸化炭素排出量の測定を支援するスコープ3(Scope3)のような企業も、MFAの根絶や回避にひと役買うかもしれない。
匿名で取材に応じた別のメガエージェンシー幹部もこう語っている。「市場では、サプライチェーンの透明化や可視化に対する要求が大きくなっている。クリス・ケイン氏やジャウンスメディアが提唱する方法論は、いずれも適切と言えるだろう」。
[原文:GroupM is removing MFAs from its inclusion lists]
Kayleigh Barber, Michael Bürgi and Ronan Shields(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)