8月24日にリリースされたGoogleとシンガポール国営投資会社テマセク・ホールディングスによるリサーチ『e-conomy SEA』は、東南アジアのインターネット経済が2025年に2000億ドル(約20兆円)を超えると予測する。
8月24日にリリースされたGoogleとシンガポール国営投資会社テマセク・ホールディングスによるリサーチ『e-conomy SEA』は、東南アジアのインターネット経済の規模が2025年に2000億ドル(約20兆円)を超えると予測している。
牽引役はeコマース。リアルの小売業の5倍の速度で拡大しており、2025年に880億ドル(8兆8000億円)規模に達する。このうち、人口2.5億のインドネシアは52%にあたる、460億ドル(4兆6000億円)を占めることになる。
シンガポール、タイ、マレーシア以外の東南アジア諸国でのインターネット接続の拡大は著しく、今後10年、東南アジアはインドと並んで、世界最速のインターネット利用者拡大が予測されている。
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東南アジアのインターネット企業も成長しており、ゲームのガレナ(Garena)、マーケットプレイスのラザダ(Lazada)のシンガポール勢に加え、インドネシアのライドシェアGo-jek(ゴジェク)、マレーシアのライドシェアGrab(グラブ)など多様化。今後インターネットジャイアントが生まれることになりそうだ。
以下スライドのサマリーをまとめた。
世界最速のネット利用拡大、膨れるEC
▽東南アジアは世界で最速のインターネット利用拡大地域(5年間の年平均成長率14%)。ネット利用者は2億6000万人が4億8000万人に増加。月平均380万人増加する。
▽東南アジアのインターネット経済は2025年に2000億ドル(約20兆円)に達すると予測される。寄与するのは、主にeコマース市場で、10年間で年平均成長率は32%と予測される。オンラインメディア(年平均成長率18%)、オンライン観光業(同15%)が続く。
▽東南アジアのリユースを除くeコマース市場は2025年までに880億ドル(約9兆円)に達すると予測される。10年間で年平均成長率7%。1200億ドル(約12兆円)に達するオフライン小売業に対し、成長速度が著しい。
▽東南アジア特有3つのファクターがeコマース市場の要因。①急成長する若年層人口、7割が40歳以下。②大型小売店が少ない。1人あたりの店舗数は米国の3分の1。フィリピンやインドネシアの遠隔地の島々は小売店へのアクセスが難しい。③中間層の急拡大。
▽取引数の拡大は最大の成長ドライバー。10年間で年平均27%の予測。インターネットへのアクセスできる人が増え、オンライン上で商品のアベイラビリティ(入手しやすさ)が拡大する。
▽すべての東南アジアの国のeコマース市場が50億ドル(約5000億ドル)超の規模に達する。オンライン観光業は2025年に900億ドル(約9兆円)台に達する(年平均成長率15%)。ホテルと航空が770億ドル(約7兆7000億円)で85%を占める。なかでも格安航空(LCC)が成長の大半を占める。ライドシェア市場は13億ドル(約1300億円)に拡大する。
「インフラ」不足など5つの課題
▽人材 / エンジニアリング。シニア開発者、最高エクスペリエンス責任者(CXO)の欠如により、スタートアップは中国、米国の海外在住エンジニア依存せざるを得ない。
▽決済メカニズム。現状は現金に勝る、拡張性のある電子決済は存在しない。マーチャントのリスクとコスト。
▽インターネットインフラ。法的、地理的な制約により、インターネットが遅く、ネット利用率が低い。民間資金を活用したスキームに寄るネットインフラの整備が必要。
▽物流インフラ。各国政府は道路・鉄道網を整備する必要がある。
▽消費者の不信感。消費者は詐欺のようなさまざまなセキュリティ問題によりオンライン上の取引を心配している。
▼調査手法
Googleは検索クエリ、クリックのデータ。国別インターネット利用データ、国別スマートフォン普及率を提供。テマセックはベンチャーキャピタルとスタートアップのアクティビティ。エキスパート59人(VC、スタートアップ、アナリスト、銀行など)へのインタビュー。世銀、国連、EIU、各国政府などの各種データを利用。
Text by 吉田拓史
Photo by Thinkstock