コロナ禍により、 リモートワーク やリモート会議への切り替えが進むなか、とりわけ内向的で口数の少ない社員は、以前よりも社内で目立つのが難しくなってしまった。
リモートワークが世間に浸透しつつあるなか、一部の従業員は上司に自らをアピールすることに苦戦している。
コロナ禍により、リモートワークやリモート会議への切り替えが進むなか、とりわけ内向的で口数の少ない従業員は、以前よりも社内で目立つのが難しくなってしまった。
外向的な従業員の場合、オンラインであろうと対面であろうと、人と活発に交流することができる。一方、内向的な従業員はプロジェクトチームから漏れたり、頑張りに気付かれず昇進の機会を逃したりする。
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ブログメディア、『ア・ワーク・オブ・ソート(A work of thought)』の著者として知られる、職業心理学者のカーステン・ゴッドフリー氏も、現在のリモート環境は内向的な従業員にとって不利だと指摘している。リアルなオフィスでは、上司と連絡を取り、話し合いを持つのが簡単だった。しかしTeamsやZoom会議では、たとえ重要な意見であろうとも適切なタイミングで述べるのが、より困難になる。
「内向的な人間は、集団のなかでじっと耳を傾け、周りの意見を理解した上で、適切なタイミングで発言する傾向がある」とゴッドフリー氏は語る。「この種の行動パターンは、時には無関心と捉えられることも少なくない。しかし実際には単に控えめで、期を待っているに過ぎない」。
「無理に外交的になる必要はない」
ゴッドフリー氏は、頑張りが認められないと心配している人は、個別のオンライン会議や、会議の最後に全員がひとりずつ意見を述べるといった「ルール作り」を提案することを薦めている。また「会議で発言できるよう準備するために、事前に議題について尋ねておくことも効果的な手法だ」と同氏は語る。 「無理に外向的になる必要はない。自分に合った状況を作ることが大切だ」。
ニューヨークに拠点を置くエージェンシー、TBWAワールドワイド(TBWA Worldwide)の人材開発部門で、グローバルディレクターを務めるロンダ・ジョージ・デニストン氏も、これに賛同する。「苦慮しようとも、それぞれの強みを活かした形で、周囲との関係を構築すれば良い」と同氏は述べる。「内向的な人でも、ひとりずつ個別であれば深く、有意義なつながりを築くことができるだろう。自身の得意なやり方で最善を尽くすべきである」。
同氏は、同僚や上司と気軽にやり取りできないために苦労することもあるが、リモートワークがむしろさまざまなチャンスを生み出す可能性があると指摘する。リモートワークでは、会議やオフィスでいかに同僚より目立つかではなく、各人がいかに迅速かつ質の高い仕事ができるかに焦点が当たりやすいからだ。
ツールの採用も手段のひとつ
モントリオールに拠点を置くデジタル屋外広告のグローバル企業、ハイブスタック(Hivestack)でCMOを務めるニッキ・ホーク氏は、長年にわたりリモートで従業員をマネジメントしてきたが、彼らすべての努力を把握するのは、実際のところ容易ではないと語る。
「8月にハイブスタックで仕事をはじめたとき、すぐに目についた部下がひとりいた。彼女はオンラインでの自身の見せ方が非常に上手く、チームプレイヤーであることをホーク氏にアピールしていた。リモート会議中も、カメラを常にオンにしていた」とホーク氏は語る。「私は、積極的に参加することの重要性を、ほかの従業員にも教えなければならなかった。なぜなら、マネージャーは誰が問題解決力があるのか、誰が効果的にコミュニケーションが図れるのか知っておく必要があるからだ。だがそれは簡単ではない」。
そこで同社では、Slackなどのコラボレーションツールを導入。これが内向的な従業員にピッタリとはまり、有効に機能したという。さらに、現在同社では、社内全体で交流を活性化させるため、Zoomを使ったソーシャルイベントも開催している。
また、「今後オフィスへの復帰を開始するにあたって、リモートワークを継続したい従業員が取り残されないように注意することも必要だ。仕事終わりの飲み会や、直接顔を合わせたネットワーキングは復活するだろうが、オンライン会議でのコミュニケーションは引き続き進めていきたい」。
上司は常に考える必要がある
結局のところ、従業員に対する見落としが発生するか否かは、各社の経営スタイルや企業文化に依存するところが大きい。上司は、部下それぞれの性格を認識し、成果や意見を把握するだけでなく、在宅で働いている人についても考慮しなければならない。また、表立って関心を表明していない従業員に関しても、最適なコミュニケーションの仕方、もしくはプロジェクトやポジションがあるかもしれないので、常に考えを巡らせる必要がある。
グルー・アドバタイジング・アンド・パブリック・リレーションズ(Glue Advertising and Public Relations)のCEO、シンディ・マクレス氏は、従業員全員を可視化することはリーダーの大切な役割だと語る。
「上に立つ者こそ、努力が必要なのはいうまでもない」と同氏は指摘する。「私は少なくとも、週に1度はシニアリーダーと個別に電話で話をする。私の直属の部下は、1日中チームメンバーと連絡を取り合っているので、彼らの助言に基づいて、メンバーの昇進や昇給、ボーナスを決めている」。
グルーでは、毎週月曜日にオンラインで報告会議を行っている。この会議では、チームの全員がプロジェクトや、サポートが必要な部分について意見を述べるよう求められている。
「これが、職場の人間関係構築を図るうえで非常に重要な場となっている」とマクレス氏は語る。「全員が発言をするため、どのような性格の従業員であっても見落とされることはない。あわせて、より広範囲にクライアント企業も巻き込んだブレインストーミングも行っている。これも、創造的なアイデアを生み出すうえで効果的だ」。
[原文:‘Managers need to know someone is engaged’ Getting noticed virtually has gotten harder]
STEVE HEMSLEY(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)
Illustrated by IVY LIU