ガートナー ジャパンは2月21〜22日に「ガートナー カスタマー 360サミット 2017」を開催した。「顧客エンゲージメントの最新トレンドとビジネスへの影響」と題されたセッションには、ガートナー リサーチ部門 マネージ […]
ガートナー ジャパンは2月21〜22日に「ガートナー カスタマー 360サミット 2017」を開催した。「顧客エンゲージメントの最新トレンドとビジネスへの影響」と題されたセッションには、ガートナー リサーチ部門 マネージング バイス プレジデントのジーン・アルバレス氏が登壇した。アルバレス氏は人口統計学上のダイナミズム、大都市化、マイクロマルチナショナル (超小型多国籍) 企業の台頭、求められるカスタマーエクスペリエンスの変化が、新興企業群の台頭を呼び起こし、エスタブリッシュメントが優位性を失う可能性を指摘した。
新興企業は予測以上に速いペースで古い企業に取って代わる。アルバレス氏はイェール大学リチャードフォスター氏の言葉を引用し「2020年までにS&P企業の75%がまだ聞いたことのない企業になる」と話した。
要因となるトレンドにはどのようなものがあるか。アルバレス氏は新興市場を引き合いに出す。「以前はBRICS(ブラジル・ロシアインド・中国)が注目されたが、現在はMINT(メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコ)が注目されている。政治的な不確実性はあるが、成長市場だ。MINTで生まれる新しい中所得層に対して、どう顧客エンゲージメントを生み出すべきか。ネスレはMINTの需要に対応するためネスカフェを一袋で販売している」と語った。
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アルバレス氏は世界にデモグラフィック(人口統計学的属性)のゆらぎが生じていることを指摘した。主に新興国で起きる人口統計のダイナミズムが、世界のデモグラフィック全体を変えようとしている。
*7年後にインドの人口が 中国の人口を追い抜く
*2020年、全世界の中所得層人口は2倍の32億人に達する
*40の地域で労働人口が10%減る
富裕国も新興国も都市化
アルバレス氏は世界規模のトレンドとして再都市化を指摘する。都市は郊外への拡大を目指してきたが、今後は都心部回帰傾向を強めるということだ。
*2020年までに世界人口の55%が都市に集中する
*2020年までに600の都市が人口100万人を越す
大都市化の利点としては、インフラ資源が集中し効率性が高まり、人材確保が容易になる点などを挙げた。「Googleはシカゴの中心地に拠点をつくり、人材確保が容易になった。Ebay、Google、シスコはシリコンバレーの郊外にオフィスをつくったが、いまは郊外から都市に戻ってきている」。
アルバレス氏は個人の力の高まりを指摘する。「クラウドファンディングで集められた額は960億ドル(約10兆5000億円)に上った。Facebookの全利用者は16億人に達するが、ソーシャル上で『あなたのプロジェクトに貢献したい』と人が自ずから組織することが起きている」。
Airbnb的な超小型多国籍企業の台頭
「かつての多国籍企業のイメージは超大企業だったが、現在は、マイクロマルチナショナル(超小型多国籍)企業の台頭している。Airbnbの時価総額は250億ドル(約2兆8000億円)を超えている。何も所有しておらず、クラウド上で運営されている。彼らは『経験』を売っている」。

出典:ガートナー(2017年2月)
アルバレス氏は「機械の時代」には2020年までに労働市場の破壊的な変化 (自動化など) によって510万の仕事が消滅する可能性に言及した。「雇用市場への影響は強大だ。Foxccon(鴻海科技集團)の工場が完全に機械化されると大量の雇用が失われる可能性がある。それから世代の変化も大きい。2025年には全労働人口の75%は新世紀世代になる」。
そしてアジアが世界経済の中心であり、よりそうなる。「2020年までに世界の経済活動の4割がアジアで起きる。2015年に中国企業は海外で607社を買収した。欧米企業はアジアの多国籍企業と顧客獲得で競争をはじめており、アリババ、テンセントの2大テクノロジー企業を代表として、優秀な人材とアイデアの源泉としての中国が台頭した」。
デバイスメッシュのなかにいる人間
アルバレス氏は「デバイスメッシュ」という考え方を披露した。「人中心のコンピューティングから、接続されるデバイス群のメッシュ(網目の織物)に囲まれた人にシフトした」。

出典:ガートナー(2017年2月)
これはIoTの概念に似ており、ネット接続されたスマートホーム、スマートカー、スマートシティなどの機会に到達する。無数のセンサーが「Amazon Go」という新しいショッピング体験を生み出したことにも触れた。
デバイスメッシュのなかで重要なのは、顧客の個々の問題を解決する自律型のエージェントだという。
そしてモバイルアプリの先にも言及した。「モバイルアプリが重要であることに変わりはないが、2021年にかけてクラウドサービスとスマートなポストアプリ・インターフェイスに支えられたマルチデバイス・アプリがUXを変革する。AR/VRという新しい没入型のインターフェイスも登場した」。
Written by 吉田拓史/Takushi Yoshida
Photographed by GettyImage