測定における情勢が変化するなか、テレビ広告業界は独自の「バベルの塔」の構築に取り組んでいる。広告主とTVネットワークは、広告購入の今年のアップフロントサイクルで、ニールセン(Nielsen)に代わる測定プロバイダーを第2(場合によっては第1)の「通貨」として採用する計画を進めている。
測定における情勢が変化するなか、テレビ広告業界は独自の「バベルの塔」の構築に取り組んでいる。
ニールセン(Nielsen)による支配が何十年と続くなか、広告購入の今年のアップフロントサイクルで、広告主とTVネットワークはそれに代わる測定プロバイダーを第2(場合によっては第1)の「通貨」として採用する計画を進めている。しかし、それを行うことにより、TV広告販売の「共通語」の分裂というリスクがともなう。つまり、TV広告のバイヤーとセラーが複数の測定プロバイダーをサポートするようになると、万能な流暢性(fluency)を維持できる方法を見つけ出さなければならない。この点に関しては、両陣営の意見が一致している。
「このパートナーにはこの通貨、あのパートナーには別の通貨というわけにはいかない。メディアパートナーや情勢を横断するなんらかの基準が必要だ」と、あるエージェンシー幹部はいう。そして、「測定の標準化が必要だ」と、あるTVネットワーク幹部は話す。本稿では、その要点をまとめた。
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主なキーポイント:
- 単一通貨時代からの脱却には、複数の測定プロバイダーへの万能サポートが不可欠。
- TVネットワーク、エージェンシーの幹部たちは、3~5社の測定プロバイダーが「通貨」としてサポートを受けることになるのではと予想。
- 有力な方法がいくつか現れつつあるものの、どの企業がこれらのスロットを埋めるのかは、依然として不明。
「通貨」としてのプロバイダー
測定の標準化とは、測定をあるひとつのプロバイダーに統合することではない。そのような時代は終わったと、TVネットワークやエージェンシーの幹部たちは口をそろえる。
また、測定を標準化したからといって、必ずしもさまざまな測定プロバイダーを同一条件の下で調整できるわけでもない。ニールセンの測定結果をコムスコア(Comscore)やビデオアンプ(VideoAmp)の測定結果に変換できる方程式の完成は夢物語だと、先の幹部たちは話す。少なくともいまのところは、あまりにも高度であるため、理論上でしか存在しえない話なのだ。
「基礎データが同じでも、3~4社の異なるプロバイダーが処理すれば、違う数字が出てくる。そんなデータはとても使えたものではない」と、別のエージェンー幹部はいう。
そのかわり、測定の標準化は、複数の測定プロバイダーへの万能なサポートを確実に行うことを意味する。「重要なのは、パブリッシャーに共通する単一通貨の下でキャンペーンを展開することだ」と、前出のTVネットワーク幹部とは別の幹部は語る。この万能サポートが達成された際には、広告の売買を行うための通貨としてサポートされる測定プロバイダーの数は限定されることになるだろう。
サポートが受けられるのは何社か
測定をめぐる現在の大改革がひと段落したら、5社以下、おそらくは3社の測定プロバイダーが通貨としてサポートされることになることが見込まれている。「ネットワーク各社は、3~4社によって市場が形成されるのではないかと考えているようだ」と、先のエージェンシー幹部とは別の幹部は語る。
TVネットワーク幹部(1人目)は、「個人的には1~2社がいいのではと思うが、3~4社になるだろう」という。
実にシンプルだ。さまざまなTVネットワーク間で複数の測定プロバイダーをサポートするためのインフラも整備されている。オープンAP(OpenAP)のクロスプラットフォームメジャーメントフレームワーク、XPmだ。「XPmこそが共通単位へと至る道だ。複数通貨に対するサポートを可能にするのは、このフレームワークだろう」と、TVネットワーク幹部(2人目)は語る。
プロバイダーを担うのはどの企業に
素晴らしいが、では「その通貨」とは、いったいどれのことなのだろうか? 今回取材した幹部たちは、ニールセンが3~5あるスロットのなかのひとつを保持することになるだろうと口をそろえる。ウェブ測定におけるコムスコアの地位と、クロスプラットフォーム測定を得たいという広告バイヤーたちの熱望を考えると、コムスコアがもうひとつのスロットを獲得する最有力候補だと考えられている。
そして、状況は不鮮明になると同時に明確になり始める。バイアコムCBS(ViacomCBS)は、ニールセンとコムスコアに加えて、代替通貨としてビデオアンプへのサポートを強化している。それに対して、NBCユニバーサル(NBCUniversal)が代替通貨としてサポートを強化しているのはアイスポット・ドットTV(iSpot.tv)だ。ワーナーメディア(WarnerMedia)は自社の代替測定プロバイダーにコムスコアとビデオアンプ、アイスポット・ドットTVを選択している。
どうやら、大手TVネットワークが主軸に据えつつある測定プロバイダーは、ニールセンとコムスコア、ビデオアンプ、アイスポット・ドットTVの4社のようだ。となると、3社に減る可能性はあるものの、5番目のポジションがまだ残っていることになる。また、ディズニー(Disney)やフォックス(Fox)といった別の大手TVネットワークオーナーが、605やTVスクエアード(TVSquared)といった、NBCユニバーサルが指名した、ほかの3社の候補のうちのひとつを選ぶ可能性もある。さらには、前述の測定プロバイダー4社でさえ、万能なサポートを得られないというリスクも依然として残っている。いまのところ、大手TVネットワークグループのなかで4社すべてを公式に採用しているのは、ワーナーメディアだけだ。
言い換えれば、もし業界が、2023~24年のアップフロントサイクルで、複数通貨による完全取引の実現という「誰もが目指している暗黙の目標」を達成したいのであれば、解決すべきことがまだ山のように残っていると、エージェンシー幹部(1人目)は話す。「3カ月後には、今後の展開のあらましが明らかになっているだろう」。
[原文:Future of TV Briefing: TV’s measurement overhaul hinges on universal support]
TIM PETERSON(翻訳:ガリレオ、編集:小玉明依)