エリオット・テベル氏が2011年、友人のエリー・バラス氏と一緒にはじめた「ファックジェリー(FuckJerry)」というソーシャルアカウントは、いまや単なる約1200万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーではない。独立した本格的なソーシャルエージェンシーとなっている。
エリオット・テベル氏(TOP画像左)が2011年、友人のエリー・バラス(TOP画像右)氏と一緒にTumblr(タンブラー)で、インターネットミームや笑える写真などを集めはじめたとき、まさか自分のひまつぶしが、インスタグラムをはじめとする各所でバイラル現象を起こすことになるとは思ってもいなかった。しかし、いまやファックジェリー(FuckJerry)は、単なる約1200万人のフォロワーを抱えるインスタグラムアカウントではない。独立した本格的なソーシャルエージェンシーとなっている。
ファックジェリーはTumblrでのデビュー以来、インスタグラムアカウント、アパレルライン、カードゲーム、「@pizza」「@kanyedoingthings」などのソーシャルアカウント、動画チャンネル、そしてブティック型ソーシャルエージェンシーからなる一大フランチャイズへと進化してきた。ここに至るまでに、テベル氏と彼のチームは、出所を明示せずに他人の創作物を盗用してはリサイクルしていると常に批判もされてきた。だが、こうした批判をものともせず、こうしたプロジェクトが、ジェリーメディア(Jerry Media)の下に集結してきた。スタッフ20名からなるジェリーメディアは現在、ソーシャルメディアアカウントの管理やインフルエンサープログラムの運営、ほかのブランドに向けたメディアバイイングも手がけている。
100万フォロワーが節目
ファックジェリーのインスタグラムアカウントのフォロワー数が100万人の大台に到達したのは2014年7月だった。そして1カ月後、同アカウントに、ハンバーガーチェーンのバーガーキング(Burger King)が販売する新商品「チキンフライ(Chicken Fries)」をフィーチャーした初のブランデッドコンテンツが投稿された。
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「100万人の大台は、間違いなく大きな節目だった」とテベル氏は語る。「ターニングポイントだった」。
それ以来ファックジェリーは、メキシコ料理チェーン「ドス・トロス・タクエリア(Dos Toros Taqueria)」やファストフードチェーン「ジャック・イン・ザ・ボックス(Jack in the Box)」をはじめとする一連のブランドと契約し、サインフェルド風の独特で自虐的なユーモア(テベル氏は「ファックジェリー」という名前を、ジェリー・サインフェルドを主人公とする人気コメディ『となりのサインフェルド』を観ていたときに思いついたという)と共感を呼ぶミームを、こうしたブランドにも適用してきた。
ジェリーメディアの拡大戦略
ジェリーメディアの最高経営責任者(CEO)、ミック・パーズィキー氏は、「我々はソーシャルおよびインフルエンサーマーケティングの分野から出発したが、手中にあるすべてを大きなものに変えたいと思ってきた」と語る。「我々には、他社に負けないマーケティングの知識があった。それをただ活用する能力を身につければいいだけだった」。
ジェリーメディアは、若い消費者の心をつかむ広告を制作したいと考えるほかのブランドに力を貸すために、スタッフの増員も図ってきた。同社は、ライターやデザイナー、モーショングラフィックスの専門家、メディアバイヤーらを新たに雇い入れ、従業員数はこの1年で4人から20人に増えた。しかし、だからといって、ジェリーメディアがそのルーツを捨てたわけではない。継続してクリエイティブの指導的立場に就くテベル氏は、5人で構成されるミームの専門チームを率いている。
「ミームは、笑いのためだけの手段ではない。差別化された意見をもつための手段でもある」と、パーズィキー氏は語る。「見る人の注目を要するユニークなフォーマットだが、特定の各ブランドへの高度な適応も可能だ」。
コンテンツの差別化
ジェリーメディアは各種ブランドに向けてさまざまなコンテンツを制作しているが、いまなおミームが同社のクリエイティブ戦略の大きな特徴となっている。前述のドス・トロス・タクエリアのためにジェリーメディアは「ピントー・ザ・ブリトー(Pinto the Burrito)」というソーシャルマスコットを作成し、このマスコットはもちろん、インスタグラム上のミームとして命を吹き込まれた。このピントー・ザ・ブリトーは神出鬼没で、これまでにニルヴァーナ『ネヴァーマインド』のアルバムカバーに登場したり、2016年米大統領選・第2回討論会でエネルギー政策について質問し、その赤いセーターがソーシャルメディアで大きな話題を集めたケン・ボーン氏に扮したり(ケン・“ピントー“・ボーン)してきた。ピントー・ザ・ブリトーのアカウントはこの1年で14万7000人のフォロワーを集めており、2017年には、優れたショートフォームコンテンツの制作者を表彰する「ショーティーアワード(Shorty Awards)」の「インスタグラムプレゼンス(Instagram Presence)」部門でファイナリストにもなった。
ドス・トロス・タクエリアの共同設立者レオ・クレマー氏は、「ジェリーメディアは、ソーシャルメディアを介した我々の声に、ユーモアや遊び心、流行りのジョーク、ミームを注入するのに最適なパートナーに思えた」と語る。「強引な売り込みをかけるのではなく、面白くて間抜けな友だちに近い存在の、現代に適したデジタルマスコットを我々はつくりたかった」。
メディア化も検討中
エージェンシーとしてジェリーメディアは、ブランデッドコンテンツだけでなく、制作やメディアバイイングなどのサービスからも収益をあげている。パーズィキー氏によると、投稿は平均して、2~10ドルというCPM(インプレッション単価)で600万~700万のインプレッションを獲得でき、これはつまりスポンサードコンテンツ1件に対して少なくとも2万4000ドル(約270万円)の収益が見込めるということだ。パーズィキー氏の口からは、価格設定に関するこれ以上の詳細は明かされなかった。
前進を続けるジェリーメディアは、代理店業務に固執してはいない。同社は「BuzzFeedのルート」を辿ってパブリッシャーになることを目論んでおり、すでに現在、ソーシャルニュースアカウント「ジェリーニュース(JerryNews)」のベータテストも行っている。具体的な数字が明らかにされることはなかったが、同社によれば、売上は2017年12月までに200万ドル(約2億円)を超える見込みだという。
「今後何年かで真剣に取り組みたい計画もいくつかある」と、パーズィキー氏は語る。「我々の目標はメディアプラットフォームになることだ」。
Tanya Dua (原文 / 訳:ガリレオ)