週4日勤務は新しいコンセプトではない。しかし、コロナ禍によって従来の職業生活が一変した結果、新たなルーティンを試みる機会が広がり、時短勤務などの試験運用に乗り出す企業が増えている。その結果、生産性、従業員の幸福度、仕事への意欲が向上し、優秀な人材の確保という点でも奏功したという。
最近は、週末が来るのがずいぶんと早い。そう感じる人が増えている。
昨年、就労時間の短縮を試験的に運用したアフィリエイト・マーケティング・ネットワークのアウィン(Awin)は2月、恒久的な週4日勤務に移行した。同社はこの施策を「人間中心の働き方改革」の一環と位置づけ、労働時間の削減にともなう給与の引き下げや、メレディス(Meredith)やエッツィ(Etsy)を含む顧客へのサービスの縮小は行わないとしている。
アウィンのアダム・ロス最高執行責任者(COO)によると、「スタッフの福利厚生を最優先に考え、労働時間や工数などに基づく伝統的な人事評価ではなく、完全な成果主義を取り入れるなど、働き方に対するより進歩的なアプローチを試みている」という。ベルリンを本拠地とするアウィンは、ドイツの大手メディア企業であるアクセルシュプリンガー(Axel Springer)と、同じくドイツのISP、ユナイテッドインターネット(United Internet)の共同事業で、米国で100人、全世界で1000人を雇用している。異なるタイムゾーンをまたいで協業体制を強化することにより、ネットワークに参加するパートナーにも万全の対応を保証する。
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ワークライフバランスを改善が狙い
週4日勤務は新しいコンセプトではない。ユニリーバ(Unilever)、デロイト(Deloitte)、KPMGなど、さまざまな企業が何年も前から採用し、一定の成果を上げている。英紙ガーディアン(The Guardian)が報じたところによると、マイクロソフト(Microsoft)が週4日勤務を日本で試験運用したところ、効率性と従業員の満足感が向上し、生産性も40%伸長したという。
しかし、コロナ禍によって従来の職業生活が一変した結果、新たなルーティンを試みる機会が広がり、時短勤務などの試験運用に乗り出す企業が増えている。たとえば、学術図書の出版で知られるポリティ(Polity)の近刊書『週4日勤務の現状(The Case for a Four-Day Work Week)』などは、週4日制が例外ではなく標準となりつつある現状について論じている。
「コロナ禍への対応を通じて、私たちの会社は完全なリモート勤務に移行した。結果的に、生産性の指標も変更を迫られた」。そう語るのは、ロンドンを拠点とするテクノロジーサービス企業のロリー(Lolly)でマネジングディレクターを務めるダニエル・クーパー氏だ。シティ(Citi)やスラック(Slack)を顧客に持つ同社は、昨年末に週4日勤務への移行を開始した。
アウィンと同様、ロリーの週4日勤務も、従業員のワークライフバランスを改善したいという想いから出発したとクーパー氏は語る。その果実として、生産性、従業員の幸福度、仕事への意欲が向上し、優秀な人材の確保という点でも奏功したという。
「オフ」の曜日に柔軟性のある企業も
週4日勤務のメリットはほかにもある。たとえば、コネチカット大学の商法の教授で、この分野の研究に関する著書もあるロバート・C・バード教授は、「物理的なオフィスの運用コストを週に1日分節約できる」と述べている。「週4日勤務はすべての組織に適しているわけではないが、柔軟性の高い企業であれば、従業員と雇用主の双方がメリットを享受しやすい」。
ソーシャルメディアプラットフォームのバッファ(Buffer)も、週4日勤務への全面移行を計画している。同社は、パンデミックの早期から生産性への期待値を緩め、昨年5月には週4日勤務の試験運用を開始していた。実は、この勤務制度は同社が長年温めてきた構想だったのだが、コロナ禍を契機に当初の予定が前倒しされた。「全社的な移行を断行する絶好のタイミングだと感じた」。ショッピファイ(Shopify)やトレロ(Trello)を顧客に持つ同社で、特別プロジェクトを統括するキャロライン・コップラッシュ氏はそう語った。
ほかの多くの企業と同様に、バッファの営業日も月曜日から木曜日で、金曜日は休日となる。ただし、切れ目のないカスタマーサービスを確保する必要上、休日はずらして取るように調整されている。コップラッシュ氏によると、その効果は大きいという。わけても最大のメリットは、週4日勤務に移行した企業が口を揃えるように、従業員の幸福度と生産性の向上だ。「余裕のある週末に心身を休めて充電し、月曜日には新たな気持ちで出社できる」と同氏は話す。勤務体制の変更を機に、生産性の低いプロセスを見直して、修正することもできたという。
「オフ」にする曜日に柔軟性を持たせている企業も少なくない。たとえば、モントリオールに本社を置き、テスラ(Tesla)やハーバード大学(Harvard University)にワークフロー管理ソリューションを提供するユニト(Unito)の場合、最高経営責任者(CEO)のマーク・ボッシャー氏によると、従業員は週4日勤務を選択できるだけでなく、週日の代わりに週末に働くことも可能という。「個人のニーズ、家族の事情や習慣に配慮した結果だ」と同氏は説明している。
「関心事は勤務中に何を生産するか?」
一方、チューリッヒに拠点を置くソフトウェア会社のチャンティ(Chanty)では、水曜日を「オフ」の日に定めている。創業者のドミトロ・オクニエフ氏によると、週の半ばに休みを設けたことで、従業員の活力と生産性が向上したという。
アウィンのケースもそうだったが、コロナ禍の影響でリモートワークが普通になった結果、人事評価の方法も当然見直したとオクニエフ氏は話す。新しい評価基準は成果指標(KPI)であって、9時から5時までの作業内容でもなければ、作業に要した日数でもない。
オクニエフ氏が言うように、「会社の関心事はもはや従業員がいつ勤務しているかではなく、勤務中に彼らが何を生産するかだ」。
[原文:Coronavirus pandemic has more employers experimenting with four-day work week]
TONY CASE(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)