マーティン・ソレル氏は2018年4月WPPを退社し、S4キャピタル(S4 Capital)を創立した。2月のインタビューでは「まっ白な紙」と自身の会社を形容していた彼だが、WPPを振り返ってその余白を埋めはじめているようだ。氏の現状について伺った。
マーティン・ソレル氏は2018年4月WPPを退社し、S4キャピタル(S4 Capital)を創立した。2月のインタビューでは「まっ白な紙」と自身の会社を形容していた彼だが、WPPを振り返ってその余白を埋めはじめているようだ。
「WPPのポートフォリオを見たときに、3つの成長分野を特定していた。1つはデータ、1つはデジタルコンテンツ、そしてもう一つがデジタルメディアにおけるプランニングとバイイングだ」と、彼は言う。S4キャピタルは昨年7月、デジタル制作企業であるメディアモンクス(MediaMonks)を買収しており、その業務と合わせるために、昨年12月にはプログラマティック専門のメディア企業マイティファイブ(MightyHive)も買収した。
ソレル氏の新しい会社は上記の3つの成長分野のうち2つに関わっている。それを踏まえて、彼はこれまでのS4キャピタルの歩みを振り返ってくれた(彼自身は彼の会社をまだ「(小さい)ピーナツ」と呼ぶ。現在では6億5000万ドル(約725億円)のピーナッツとなっているわけだ)。マーケターたちのあいだでのトレンドとなっている自社サービスやダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC:ネット専業ブランド)といった事象にどう対応しているかについても語った。
Advertisement
――S4キャピタルは創立から1年も経っていない。会社の特徴を現時点ではどのように形容するのか?
良いスタートを切った、と。コンテンツとメディア分野において非常に力強い足場を持っている。それが、メディアモンクスとマイティファイブだ。我々のアプローチは純粋にデジタルとなっている。フォーカスはデータ、それもファーストパーティデータに置かれている。そのデータでもって、コンテンツ制作とメディアのプランニングとバイイング、そしてプログラマティックを運営していく。それは、より早く、より良く、より安価となっている。しかし、安いという言葉は間違った言葉かもしれない。
――なぜ「安い」と言うのか?
安いというフレーズに対する最高マーケティング責任者やほかのマーケティング関係者の反響の良さは驚くほどだ。ファイナンスや調達部門のスタッフに対してもそうだ。より安く、より良く、より早いは、人々の環境が良い。
――デジタルオンリーとのことだが、デジタルを中心に据えるだけでなくなぜオンリーにするのか?
人々のなかには、そこに違いはないと考える人もいる。そのため議論を呼ぶ。コメントとしては退屈なものになってしまうが、デジタルとアナログのあいだに違いがないと、彼らは言う。私にとっては、その2つを区別することで、アナログからデジタルへと思考をシフトさせる必要性に注意を向けることができる。アナログビジネスがキャッシュを得るものであり、デジタルビジネスは節約をするビジネスであることが多く、これは非常に困難な課題ではある。この2つの緊張関係は理解することができる。クライアントと話すときに、我々がデジタルオンリーだと言って、商談が終わってしまったことはない。ビジネスのドアが開かれた状態だ。
――違っていたら教えて欲しいが、S4とマイティファイブを見てみると、自社で提供するサービスを増やすというトレンドに上手くのっているように思える。
クライアントたちは、エージェンシーが永久に業務を持とうと企んでいると感じている。人材とテクノロジーの2分野は自社サービス化をするにあたって、もっとも時間がかかる部分だ。寄生虫のように永久に居座ろうとは、我々は考えていない。
――自社サービス化に関して課題は何か?
人々がもっとも話題にする分野は人材を維持することだ。人材を1つや2つのカテゴリーに制限してしまうと、彼らをキープするのが難しい。良い人材は多くのことに取り組みたいと思うからだ。それが1つ。それは最新のテクノロジーについていくことだ。
――大手消費財企業に対して、DTCブランドがプレッシャーになってきている。DTCタイプの戦略を採用し、彼ら自身のDTCブランドを立ち上げるというプレッシャーを大手ブランドに加えている。
ひと昔前なら、ウォルマート(Walmart)、テスコ(Tesco)、カルフール(Carrefour)などが、店舗において、プロダクトと消費者の関係をコントロールしていることに関して製造業者たちが心配していた。リテールたちがコントロールしてしまうなかで、店舗内の消費者の行動にどうやって影響を与えることができるのかと、製造業者たちが考えていた。次にインターネットがやってきて、「素晴らしい。消費者とダイレクトな関係性を持つことができる」と考えた。しかし、いまでは「ちょっと待った、Amazon、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(騰訊)といったeリテールが、GoogleとFacebookによるデータコントロールと一緒に介入してきたぞ」といった具合だ。そのため、データ争いがエネルギーの中心になっている。それが問題だ。「DTCになりたい」は重要ではない。「データを得ることができ、データを持つことができ、そしてそのおかげで消費者とダイレクトな関係性を持つことができる」が重要だ。DTCは病気の症状の1つに過ぎない。
――全体的なエージェンシービジネスの状態はどのようなものか?
より早く、より良く、より安くというタグラインによって、要約されている。これらのニーズを私たちは特定した。そして、我々は小さい規模で、成果物を届けている。我々にとっての質問は、どのように規模を大きくするかということだ。それはオーガニックに、そして買収を通じて、両方だ。
Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)