ランチタイムに長々と酒を飲み続ける時代は終わったが、酒はいまなお、クライアントや同僚とのコミュニケーションをスムーズにする潤滑油となっている。英国のエージェンシーに勤務するスタッフは、アルコールの刺激を得るのに、オフィスを離れる必要もない。社内のバーへ行けばいいのだ。我々が見つけた最高の社内バーを紹介しよう。
広告業界には飲酒の文化がある。もちろん、良い面も悪い面もあるのだが。
ランチタイムに長々と酒を飲み続ける時代は終わったが、大勢にとって酒はいまなお、クライアントや同僚とのコミュニケーションをスムーズにする潤滑油となっている。
英国のエージェンシーに勤務するスタッフは、アルコールの刺激を得るのに、オフィスを離れる必要もない。社内のバーへ行けばいいのだ。我々が見つけた最高の社内バーを紹介しよう。
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デジタスLBiの伝統的パブ
イースト・ロンドンで、かつてトゥルーマン醸造所があった場所に拠点を置く、デジタスLBi(DigitasLBi)は2014年、オフィスの地下にバーを設けた。トゥルーマン醸造所は、ゆかりの地で営むデジタスLBiに対し、ハックニー・ウィックにできた新しい醸造所で作るビールをポンプと樽で提供することに同意した。

アナグマの剥製とビンテージ風パブの看板が目立つデジタスLBiのバー
イースト・エンドにある伝統的なパブらしく、壁には動物の剥製が飾られている。そしてもちろん、パブ・クイズもある。毎週金曜にはドリンクを無料にして、利用者には寄付を募る。集まった寄付金は、月々のデジタスLBiのチャリティーに回される。
このパブは、デジタスLBiの持ち株会社であるピュブリシスグループ(ライオン)とデジタスLBi(ユニコーン)のマスコットにちなんで「ライオン・アンド・ユニコーン」と名付けられた。復活したパブの看板にぶら下がっているロゴは、デザイナーのロッティー・ジョーンズ氏とヘンリー・チャン氏によって制作されたもの。本物の酒場らしく、オリジナルのコースターやバーマット(カウンター上に敷くゴム製マット)も用意している。
おすすめ:ビール
お楽しみ:クイズ
リバーサイドにあるオグルヴィ従業員の行きつけの場所
もっとも「インスタグラム」映えするエージェンシーのバー競争で上位に入りそうなのが、オグルヴィ・アンド・メイザー(Ogilvy & Mather)の壮観なバー付きビストロ「キューカンバー(きゅうり)」だ。壁全面にガラスが張られ、ロンドンの素晴らしい景色を堪能できる。

キューカンバーから見た景色
店の名前は、くすんだ深緑の内装に由来する。豪華なベルベットのイス、大理石と真鍮の床飾りがアクセントになっている。
ここはゆっくりお酒を楽しむ場所で、イベント会社のグリーン・アンド・フォーチュンズ(Green & Fortunes)が作る期間限定のお薦めメニューがある。たとえば、クリスマスなどのホリデーシーズンには、「カルーア・エッグノッグ」や「ジンジャーブレッド・マティーニ」といったカクテルが提供される。ちなみに、一番人気のカクテルは、ジンとフェタチーズ、ショウガをトニックで割った「ダッチ・カレッジ」(オランダ人の勇気)。そこまで冒険したくない人には、クラフトビールとワインもある。
おすすめ:景色
お楽しみ:フェタチーズ入りの珍品カクテル(好みに合えば)
ソーシャルチェインのごく真っ当なバー
ソーシャルチェイン(Social Chain)のバーは、マンチェスターにある同社オフィスに行けば一目瞭然。1階のど真ん中に陣取っているからだ。単に「バー」と呼ばれているここには、スタッフやゲストのための蒸留酒、ビール、カクテルなど、各種の酒がそろっている。

静かな時が流れるソーシャルチェインのバーには、各種の酒がそろっている
正式な開店時間は午後5時だが、金曜日はランチタイムから営業している。関係者によると、もっとも飲まれているのは、スコットランド発のクラフトビールブルワリーであるブリュードッグ(Brewdog) の「パンクIPA」と、シンプルなジンだという。ここでミーティングが開かれることも珍しくないし、チーム全員が1週間のクリエイティブを振り返って評価する集まりも実施。金曜の夜が特に忙しいのは、夜の街へ繰り出す前にチームが集合するからだ。
きちんとしたパブには定番の巨大なダーツボードもある。なにしろ、アルコールと飛び道具の相性は抜群なのだ。
おすすめ:楽しい時間
お楽しみ:隣にある仮眠用スペース
ルーファス・レナードのワゴンバー
ルーファス・レナード(Rufus Leonard)は、ワゴンを使った移動式バー「マクビショップス」(MacBishop’s)を用意している。

見るからにご機嫌なマクビショップスのチーム
同社のバーは、以前はミッチェル・マルベイ氏が運営していたが、同氏が去ったあとは、需要とのあいだにギャップがあった。
コピーリードのルーク・ビショップ氏とシニア・プロジェクト・マネージャーのニック・マクベス氏が始めたマクビショップスは、「最小サイズのバー」と評される。イーベイ(eBay)で46ポンド(約6400円)で買った小さいワゴンの横に、ラミネート加工した「看板」がぶら下がっているだけだ。
小さいにもかかわらず、このワゴンバーは社内を縦横無尽に動き回り、スタッフミーティングや従業員の誕生日会や送別会など、さまざまなイベントに駆り出されている。一番人気の飲み物はジン・トニック。添えられるライムは、バターナイフでカットされたものだ。
みどころ:陽気な社風
お楽しみ:空になったワゴンに乗ること
グレイの楽しいイベント会場
グレイ(Grey)のPRマネージャー、エマ・ナビリドゥヌイ氏によると、「グレイ・バー」は、スタッフの好き嫌いに関係なく、同社の週間労働時間に組み込まれているという。ここは主にイベント会場として使われており、我々が取材に訪れた週は、エキセントリックな映画『アメリカン・ヒストリーX』の監督、トニー・ケイ氏のトークショーが行われていた。

テレビドラマ『マッドメン』にちなんでドレスアップしたグレイの全従業員
この週にはまた、グレイの広告を通じてクラウドファンディングを実施しているアルツハイマー病関連プロジェクトのため、パーティーが開かれた。全従業員が、テレビドラマ『マッドメン』の舞台となった1960年代の広告代理店社員風にドレスアップし、資金集めに協力した。
このバーが一番混むのは、ドリンクが無料になる木曜日の夕方だ。グレイのスタッフはよく、近くにあるパブ「ザ・ハット・アンド・タン」でもパーティーを開いている。
みどころ:ファンシーな衣装
お楽しみ:2次会
エッセンスのバーは紅茶もお酒も
ロンドンにあるエッセンス(Essence)にとって、飲み物は社内文化に深く根付くもの。会議室にはダージリンやアールグレイ、ウーロンといったお茶の名前がついているくらいだ。

コージー内部の様子。この名前はもちろん、紅茶ポットの保温カバー(tea cosy)に由来する
エッセンスのバー「コージー(The Cosy)」は、同社クリエイティブディレクターのアンディー・ベジー氏によってデザインされた。日中は温かい飲み物を提供するが、金曜午後4時になると、ワインやビールがそろった楽しいバーに変身する。
エッセンスでは30以上の国籍の異なる従業員が一緒に働いている。「インターナショナル・アワー」には、ひとりの社員に少額の予算が与えられ、自分の出身地のおつまみや飲み物をコージーに用意する。これまでに、ポーランドのウォッカからカナダの水出しコーヒーまで、さまざまなものが登場した。
おすすめ:発音できないような名前の世界のおつまみ
お楽しみ:文化交流
ジェリーフィッシュの空中バー
エージェンシーのジェリーフィッシュ(Jellyfish)は2016年9月、建築家レンゾ・ピアノ氏の代表的な建物でロンドン一の摩天楼、 「シャード」の22階にオフィスを移転した。

シャードの22階から見た景色
「22」と名付けられたこのバーは、太陽がロンドンのかなたに沈みかけた頃からが忙しくなる。ジェリーフィッシュのスタッフが仕事帰りの一杯に立ち寄るほか、毎月1回の定例会議や、もう少し規模の大きいカンファレンス、数日続くセッションなどもここで行われる。同社チームによると、11月5日の「ガイ・フォークス・ナイト」の打ち上げ花火をここから無料で見物できたことが、これまでのハイライトだったという。
人気の飲み物はシャンパンだが、ジェリーフィッシュでは時折、気分転換のためにカクテル作りが上手なバーテンダーを雇っている。
みどころ:バブリーな雰囲気
お楽しみ:インスタグラムにもってこいの写真が撮れる
MPCの(低めの)空中バー
ジェリーフィッシュよりは低層だが、制作スタジオのMPCにも空中バーがある。ソーホー地区にあるMPCのハブオフィス内の人気スポットだ。
夜はここがパーティー会場になる。最近も、チャンネル4のリオ・パラリンピック公式ムービー「We’re The Superhumans」の広告をMPCが担当することになったのを祝って、リオのカーニバルをヒントにしたパーティーを開催した。
日中はクライアントがここでくつろぎ、ワゴンに載った品を味見する。ワゴンにはジンやトニックのほか、小腹を空かせた人のためにアフタヌーンティーの用意もある。
ほかのバーと違って、MPCのバーには娯楽コーナーがあり、訪問者がVRギアをつけてMPCが作った最新メディアをいくつか見られるようになっている。
おすすめ:スコーン
お楽しみ:VRゴーグルを試すどこかの企業幹部がバランスを失って転ぶ姿が見られるかも
バイオ・エージェンシーのポーカー場
バイオ・エージェンシー(Bio Agency)の「ザ・バイオ・バー」が誕生したのは7年前、従業員のヨハン・モートン氏がアルコールの入った小さな段ボール箱を社内で見つけたときだ。当時は同氏がささやかな材料で、スタッフ全員のために手早くカクテルを作っていた。

バイオ・バーのカクテル・セレクション
それ以来、バー(とその予算)は成長を続けてきた。午後4時30分になるとバイオのスタッフたちがバイオ・バーへふらりとやって来て、カクテルを1~2杯注文したり、セルフサービスでビールやワインを飲む。現在の彼らのお気に入りは、ライチとエスプレッソのマティーニだ。
ここは、毎月1回開催される夜のポーカー大会の会場にもなる。同社チームによると、求めに応じてバーを遅くまで開けておくことができ、これまでの記録は土曜午前8時だという。
おすすめ:マティーニ
お楽しみ:ポーカー大会での勝利
GRACE CAFFYN(原文 / 訳:ガリレオ)