FBIが「メディア購入」に関する捜査を開始、その真意とは

メディアバイイング購入にFBIの捜査のメスが入りはじめている。

2018年10月10日、全米広告主協会(ANA、Association of National Advertising)が、その会員に一通の文書を送った。そのなかで、ANAの外部カウンセリング企業のリードスミス(Reed Smith LLP)に対してFBIから連絡があり、アメリカ国内でのメディア購入に対する捜査協力依頼されたことが伝えられたという。

FBIの捜査について最初に報道したのは、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)の9月27日の記事だった。ANAのCEO、ボブ・リオダイス氏が署名した先述の文書のなかでは、ANAの会員の次の動きに向けた提案として、リードスミスへのコンサルティングなどが書かれている。下記がその全貌だ。

――FBIが調べようとしているものとは一体?

まだ不確かだ。この件に関して、少しだけFBIと会話をしたリードスミスのパートナー、スティーブ・ミラー氏によると、捜査理由のひとつとなるかもしれないのは、メディアの持株会社と広告主の間での詐欺疑惑に関する内容だという。

「これは仮の話だが、メディアの持株会社Aが広告主に対して、広告の購入規模に応じてリベートを提供することになっていたとしよう。だが、(エージェンシーの)経理操作や詐欺、虚偽的な行為により、広告主がそれを受け取れていないという」と、ミラー氏は語る。

――では、今回の捜査はリベート問題に尽きるのか?

おそらくそれだけではないだろう。業界で20年以上の経歴を持つオンライン広告企業の幹部は、不正広告や脱税の捜査が行われると予想している。

「スポーツ観戦のチケットやエンタメ、バハマ旅行のプレゼントなどはあるだろうが、それは大した問題ではない。問題となるのは、ポケットマネーを直接メディアエージェンシーが手に入れられる手段を探し、それをあからさまに提示してくる会社があるということだ」と、その幹部は語る。

――なぜ、いまなのか?

この幹部によると、賄賂の横行は何十年にもわたって続いている。だが、メディアエージェンシーの国際化や、ここ10年での競争の激化により、以前と比べて目につきやすくなっているというのだ。

「P&Gがヨーロッパで、フォード(Ford)がラテンアメリカで、というだけの話ではない。エージェンシーは全世界的な取引を望んでいる。アメリカ市場に参入することはできたとしても、利ざやは小さく競争も非常に激しいが、アメリカ国外でのリベートによるマージンは非常に大きい」と、その幹部は語る。

ミラー氏は、これは「アメリカ国内でのメディアの透明性に関する調査」と題された、ANAによる2016年のK2インテリジェンス(K2 Intelligence)レポートの認識が強まったと考えているという。あるメディアバイヤーは、そこに政治的動機が関係しており、タイミングとしても、2016年の大統領選挙戦でロシアがFacebookやそのほかのプラットフォームを通じて介入していたことが絡んでいると見ている。

「これまでは、不正行為は必ず、誰かの告発によって明らかになっていた。私の考えでは、その本当の意図は政治的状況や介入の延長線上にあり、不正行為の隠蔽や加担への調査に繋がっている」と、そのバイヤーは語る。

――FBIが求めている情報とは一体?

契約違反の証拠となるeメールだろう。ミラー氏は、「とあるメディアエージェンシーのジョーとアレン」を例にとったシナリオを説明した。ジョーはアレンに「これはやるべきではないよ」とメールをし、アレンは「誰にも気づかれないさ」と返信する。このようなことが横行しているかと聞かれたオンライン広告業界の幹部は、きっぱりと「はい」と答えた。

「どんなホワイトカラーの捜査においても、FBIは組織内のeメールのやりとりや会計帳簿など、内部記録の提出を求め、社内でのやりとりが不適切な面がなかったかを、徹底して調べるだろう」と、ミラー氏は語る。

――影響を受けるのは誰か?

そのANAの文書には、FBIはまず、詐欺にあったという確信を持っている広告主を特定するところからはじめるだろう、と書かれている。リオダイス氏はANAの会員に対して、身に覚えのある場合は弁護士を立てることと、監査を行うことを勧めている。

「広告主が詐欺にあったことが証明されれば、業界を揺るがす大事件になる可能性がある。不正行為が明らかになれば、顧客対応はもちろん、多額の返済金、そのほか不測の事態が起こることになるだろう」と、ミラー氏は語る。

――今後の予測は?

長い時間がかかるだろう。米DIGIDAYは5社の主要な持株会社に連絡したが、多くはコメントの依頼に応答してくれなかった。WPPの広報からは「ノーコメント」との返信があった。インターパブリック・グループ(Interpublic Group)の広報も、直接的なコメントは拒否したが、ANAの報告書に対し、2016年に行なった声明に言及して「IPGではアメリカ国内でのリベートは受けとっていない、また、アメリカ市場でリベートが横行しているとは考えていない」、と返信している。

オムニコム(Omnicom)の広報からは、「FBIからの連絡はない」との返答があった。

もちろん、状況は変わる可能性はある。この幹部は、今後の状況次第では、罪のなすりつけ合いが出てくるかもしれないという。

「身に覚えのある者は、逮捕されたくないがために、持株会社の記録に対する捜査が入ったときには、どこを捜査すると良いかをFBIに伝えるだろう。ひとつのエージェンシーで25年も働いているような人はまれであるため、誰かが口を割ってしまえば、誰もが訴追を逃れて自分自身を守るために、何人の名前を出せるか、証拠となるメールや会話をいくつFBIに提出できるか、という争いになるだろう」と、その幹部は語る。

Kerry Flynn(原文 / 訳:Conyac