Facebookがモバイルウェブに足を伸ばした理由:アプリより大きいリーチ

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Facebookは2016年1月26日(米時間)オーディエンスネットワークを、モバイルウェブでもサポートすることを発表した。

これまで動画プラットフォーム化、「インスタント記事(Instant Articles)」の導入など、囲い込み戦略を進めるなか、オーディエンスネットワークはむしろ、Facebookのウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭)の外に広がっている。

オーディエンスネットワークは2014年10月にローンチした広告サービス。Facebook以外のアプリに広告を掲出できるアドネットワークだ。

発表によると、今回のモバイルウェブへの進出は、過去数カ月間に渡り、米ハースト社、USAトゥデイ・スポーツメディア・グループ、英タイム社など世界各地のモバイルウェブ媒体社の協力を得ながら、モバイルウェブ向けオーディエンスネットワークのベータテストを実施した結果だという。

オーディエンスネットワークはすでに2015年第4四半期で10億ドル(約1200億円)を売り上げた。そのうち8割がネイティブ広告(インストリーム広告)によるものだ。

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他社のモバイル広告事業動向

Facebookは今回、モバイルウェブに踏み込むことで、Googleディスプレイネットワークの領域に参戦することになる。

Googleはアクセレート・モバイル・ページズ(AMP)を現在開発している。オープンソースの独自HTMLで、課題であるページ読み込み時間、ユーザーインターフェイス(UI)などを向上させ、モバイルウェブの競争力をつけることを視野に入れている。

Appleはアドネットワーク「iAd」から2016年6月いっぱいで撤退予定。iOSを利用する富裕なオーディエンス層をもとに、サブスクリプション(定額制)モデルを展開し、収益性の高いビジネスモデルの継続を狙う。

米通信大手ベライゾンは新しいウォールド・ガーデン(壁で囲まれた庭)を築き始めている。傘下のAOLは2015年8月モバイルアドネットワーク企業ミレニアル・メディアを買収(2億3800万ドル=約287億円)。ベライゾンはユーザー情報囲い込みの方針だ。

Twitterは2015年8月、アプリ、モバイルウェブ併用型の広告プラットフォームであるオーディエンスプラットフォームを従来型の発展として発表している。

リーチでアプリの2.5倍

目線を変えて、その効果を検証してみよう。消費時間はアプリの方が長いが、リーチはモバイルウェブが2.5倍に及ぶ。リーチの大きさは広告的な価値が高い。以下、コムスコア(comScore)の調査結果を引用する。

ComScore1

ComScore2

    • モバイルでのメディア消費時間は拡大している。その中心地はモバイルアプリだ。
    • モバイルウェブはデスクトップも合わせたデジタル・メディア消費総時間の8%、モバイルの総時間の13%にすぎない。
    • だが、リーチ(到達数)でみれば、モバイルウェブはアプリ(Apps)の2.5倍。伸び率(前年同月比)でも、アプリの22%に対し、モバイルウェブは42%と2倍近い。
    • おそらくユーザーは「自分の好きなアプリで長時間過ごし、モバイルウェブで各所をいったりきたりしている」とみられる。

英マーケティング業界は賛否両論

英DIGIDAYのルシンダ・サザン記者の記事では、英エージェンシーから賛否両論が上がった。アドネットワーク固有の掲出された広告を確認したいという要望がある一方、「アプリ―ウェブのリターゲティング広告」と評価する声もあった。

 

Facebook傘下SSPのインターナショナル・ヘッド
ヤーブ・アーンスタイン氏

トップ1000のアプリとトップ1000のモバイルウェブをみると、モバイルウェブの方が2.5倍のリーチを生み出している(コムスコアの資料を引用)。(※サザン記者にネットワークの完全なリストは提示されなかった)

 

広告代理店MG OMDのソーシャル・ヘッド
ヘンリー・アーケル氏

アドネットワークの購入の際に明瞭ではない点があるため、Facebookはアドネットワークを拡大するのに苦労している」「クリック率がよく、コスト効率がいいので、オーディエンスネットワークを利用してきたが、問題はどこに掲出されたかわからないことだ。このため、われわれが担当する大手ブランドが敬遠しがちだ。Facebookなどがその点を詳らかにしなければ、我々にとってはクオリティに疑問が残るということだ。

 

英メディアコム(WPP系)のグローバル・デジタル・ディレクター
ダン・チャップマン氏

オーディエンスベースのバイイングはモーメントベースのマーケティングにはあたらない。オーディエンスを知ることは重要だが、モーメントの文脈について知ることは行動を変えることによりインパクトがある」「結局Facebookは壁で囲まれた庭(ウォールドガーデン)のため、インプレッションが意味するところに関して、詳細な情報がほかより少なくなる。Facebookは我々が最大化したいと思う指標について知ることを制限している。

 

米スターコム(ピュブリシス系)、ストラテジー・デベロップメント

これはクッキーベースのウェブとアプリの橋渡しだ。すぐにアプリ―ウェブのリターゲティング広告、すなわちデバイスをまたいだ秩序だったメッセージ伝達を行えるようになるだろう。大きな一歩だ。が、オーディエンスネットワークがデスクトップにも広がる次のステップが、より興味深いだろう。

 

生活者はアプリに傾いたといわれるが、依然として、モバイルウェブは外せない存在だ。近くリリースされると言われる、GoogleによるオープンソースプロジェクトのAMPがどれだけ、モバイルウェブにインパクトを与えるか注目だ。

written by 吉田拓史
Image by Michael Coghlan(CreativeCommons)