YouTubeの有害コンテンツ問題は解消してはいないが、情報流出、虚偽情報拡散、2016年アメリカ大統領選挙でのロシアの干渉などでFacebookへの非難が強まるなか、Google所有の動画プラットフォーム、YouTubeは見過ごされているという者もいる。
YouTubeの有害コンテンツ問題は解消してはいないが、情報流出、虚偽情報拡散、2016年アメリカ大統領選挙でのロシアの干渉などでFacebookへの非難が強まるなか、Google所有の動画プラットフォーム、YouTubeは見過ごされているという者もいる。
YouTubeにおける悪質なコンテンツに関する問題により、不快なメッセージや子供たちを対象にしたわいせつな動画で収益を得る悪人たちや、ペドファイル(小児性愛者)的なコメントを投稿する人々が明らかになった。去年の「アドポカリプス(adpocalypse)」(Youtubeによる厳しい広告規制)の後もこの問題は根強く残っている。同社はモデレーターを1万人雇用し、宣伝活動に対して新しい取り組みを行うと述べていたが、広告トラッキング会社によると、こうした広告主の大半が、数カ月以内に戻ってきたという。しかしCNNが4月20日に報じたように、広告主はナチス、小児性愛者、陰謀などを宣伝する物議をかもすチャンネルに依然として登場している。
Facebookだけではない
「YouTubeとプライバシー、さらに広げれば、Googleに関する大きな問題が存在すると思う。Facebookばかりに議論の焦点が向けられている。重要な議論であるが、Facebookを唯一のトラブルメーカーとするのは間違いだろう」と、今月はじめ、違法に子供たちをトラッキングしているYouTubeを調査するように連邦取引委員会(FTC)に要求した「コマーシャルのない子ども時代を求めるキャンペーン」(Campaign for a Commercial-Free Childhood)事務局長ジョシュ・ゴリン氏は述べた。
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一方研究者たちは、YouTubeは自己補強過程で、さらに多くの陰謀動画や、過激で扇動的な動画を提示するように、実は設計されていると主張している。
「多くの人々を過激化することに貢献している可能性があるなか、企業からこれほどたくさんの利益をあげさせる理由などない。社会に多大なコストを負担させながら金銭的利益を享受している」と、研究者のゼイナップ・トゥフェックチー氏は3月のニューヨーク・タイムズ紙のオプエドで書いている。
この記録についてGoogleはコメントしていない。
CA問題でかき消された声
Facebookはユーザー数で最大のソーシャルネットワークかもしれないが、別の研究者ジョナサン・オルブライト氏は、YouTubeがソーシャルメディアで重要な役割を果たしており、疑念と不和を植え付け、陰謀説を唱える動画を訪問者に提供することによって民主的プロセスを弱体化させていると主張している。
YouTubeは厳しい報道も経験している。タイムズ(The Times)は一面記事で、YouTubeが不快な動画を子供の目に留まる場所に提示し、国の後ろ盾があるロシアのニュースチャンネルRTを支援する仕組みについて報じてきた。しかし、ケンブリッジ・アナリティカ社(Cambridge Analytica)の記事が大々的に報じられ、関心が薄れてしまった。3月には、このドナルド・トランプ大統領と関連のあるリサーチ会社が、8700万人のFacebookユーザーのデータを許可なく使い、アメリカの民主的プロセスを脅かしていたことが国民の知るところとなった。
「プライバシーは理解するのが難しい問題だ。取り立てて人の興味をひくものではない。ケンブリッジ・アナリティカとロシア人、そして大統領選挙の話題のほうがもっと人目を惹く」とゴリン氏は語った。
Facebookが犯した失態
「不快なCEO、売春婦、ロシア人、すべてがそろっている、まるで映画だ。その事実に加えて、もちろん、我々は中立的な立場でニュースを伝えているが、実際、ジャーナリストやメディア企業は長年Facebookに腹を立ており、復讐は容赦ない」と、デジタルメディアのあるベテランは述べた。
議会が訊ねた最大の疑問は、2016年の大統領選でロシアとトランプ氏が結託したかどうかであり、トランプ氏が選挙に勝つための取り組みで、Facebookが特に重視されていたことが明らかになっている。ケンブリッジ・アナリティカのデータ漏洩の証拠はただ火に油を注いだだけだ。悪人たちが人々のデータを盗むという発想は、人々が赤ちゃんの写真や、ほかの個人的なニュースを友達や家族と共有する場であるFacebookの狙いにまったくそぐわないものだ。
Facebookはこの危機に関して広報活動でしくじり、そのイメージが壊された。ケンブリッジ・アナリティカの記事が広く報道されてから数日後の3月に行われたロイター/イプソス(Reuters/Ipsos)のオンライン投票で、アメリカ人の41%がFacebookの個人情報保護の法律遵守を信じていることが明らかになった。対して、Amazonを信頼するとしたのが66%、Googleを信頼するとの回答が62%、マイクロソフト社を信頼するとの回答は60%だった。ハーバード・ケネディ・スクールによって3月に行われた18から29歳のアメリカ人を対象に別の調査によると、FacebookとTwitterが正しいことすると信じていると回答したのは27%で、対するGoogleについては44%だった。
なりを潜めるYouTube
対照的に、YouTubeはPRの観点からすべてのことを正しく行っているGoogleのもとでなりを潜めている。Googleは報道機関からはより良い評価を得ており、それは何年にもわたる助成金や技術支援によって育まれたものだ。
Googleは、同社プラットフォームのロシアによる干渉に関する質問に答えるため、昨年秋に議会の前に引きずり出されたテック大手企業のなかのひとつだった。しかし、Googleは、同社サービスに対するロシアによる操作が「比較的小さい」ものだったと主張した。Googleは、昨年ロビー活動に1800万ドル(約20億円)を費やしており、Facebookの1150万ドル(約13億円)、その他テック大手企業を凌駕している。YouTubeは議会およびFTCからの追及をほぼかわしていると、デジタルプライバシーと消費者保護問題に関して消費者を擁護する「センター・フォー・デジタル・デモクラシー(the Center for Digital Democracy)」のエグゼクティブ・ディレクター、ジェフ・チェスター氏は述べる。「彼らが逃げ切れているのは、スムーズなPR、つまり非常に複雑なビジネスモデルを有しているからだ」。
「Googleは連邦政府とプレスやパブリッシャーの両方におけるロビー活動に長けている」と、パブリッシャーの業界団体、デジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Content Next)のCEOジェーソン・キント氏は語る。「さまざまな無料サービスを提供しているにもかかわらず、GoogleとFacebookは、同じ基本的なビジネスモデル有しており、そのことで、業界の苦悩の多くが生み出されている。Googleは、Facebook以上に、信頼できるオーディエンスに対して質の高いニュースやエンターテイメントを提供している企業が報われないエコシステムを強化している」。
状況が変わる可能性
しかし、状況は変わるかもしれない。Facebookの公聴会が終わったいま、議会はGoogleとTwitterに目を向けることが期待されている。批評家は、プライバシーに関する懸念が高まり、その結果YouTubeに対する関心が再び集まることを予想しているという。
「我々はメディアから非常に多くの注目を集めており、Facebookに対する懸念からさらに関心は高まるだろう」と、彼の組織が起こしたFTCへの訴えについてゴリン氏は述べた。「6カ月前にはなかった、プライバシーについての対話を我々は行っている」。