無制限の休暇日数を与えたり、社内旅行やイベントなどだけでは、もはやどうにもならないということらしい。
アメリカの労働戦力の最大数を占めるようになったミレニアル世代。彼らが満足を得られる労働体験とは、それ以上の世代の見解とは大いに異なるようだ。
広告代理店オムレット(Omelet)社の共同創業者兼チーフブランドオフィサーのライアン・フェイ氏は、「20年前の若い世代と、現代のミレニアル世代の従業員の人事管理方法は大きく違う」と語る。
無制限の休暇日数を与えたり、社内旅行やイベントなどだけでは、もはやどうにもならないということらしい。
アメリカの労働戦力の最大数を占めるようになったミレニアル世代。彼らが満足を得られる労働体験とは、それ以上の世代の見解とは大いに異なるようだ。
広告代理店オムレット(Omelet)社の共同創業者兼チーフブランドオフィサーのライアン・フェイ氏は、「20年前の若い世代と、現代のミレニアル世代の従業員の人事管理方法は大きく違う」と語る。
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「他社と比べて高い給与や、良い保険制度、そして無制限の休暇日数などを充実させることよりも、彼らにとってどんな仕事環境ならハッピーなのか、彼らの望みに沿ったプログラムを作成することに、耳を傾けはじめた」。
いかにミレニアルを留められるか
いま多くのエージェンシーは、ミレニアル世代を念頭に置いた、人事や総務のプログラムを提供しはじめている。これらのプログラムは、すべての従業員に応用されるが、雇用側が特に望んでいるのは、すぐに転職したがるミレニアル世代をつなぎ止めることだ。
シカゴに本社を置くエージェンシー、アップショット(Upshot)社では、2015年2月に組織構造を徹底的に見直した。デジタル時代の到来により、クリエイティブ部門や会計部門、戦略部門など、従来から存在する部署がコミュニケーションや生産性を阻害していることに気づいたからだ。
そこでアップショット社は、異なる部署のスペシャリストをかき集め、ハイブリッドな編成チームを組織した。また、ミレニアル世代と1961年から81年にかけて生まれたジェネレーションXの従業員を集め、世代間の違いを語り合い、理解しあえるように集会も開いた。
アップショット社の会計担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるエレン・スラウソン氏は「いままでと違ったマインドセットと実践手段は、ミレニアル世代のために用意されたものだ」とコメント。「我々はどのように働いて欲しいかをミレニアル世代に伝えることはなく、彼らに自由を与えて、彼らがしたいように働かせることにしている」。
友達のような距離で話し合う
また、エージェンシー、ワンダーマン(Wunderman)社のように人事慣習を再考する企業もある。同社は「YouTime」というシステムを導入し、マネジャーと従業員がマニキュアをしながら、またはダンスのクラスを受けながら、社の目標と達成状況について話し合う場を作った。こうした取り組みは、より明確化された人事相談や目標の振り返りをする機会を与えることになった。
「古い社内体制は、昇給や昇進を協議しようとする際に、関係者の大半を嫌な気分にさせていた」と、ワンダーマン社の北米担当CEOとなるセス・ソロモンズ氏はいう。「これらの古い習慣を我々は、捨て去りつつある。『YouTime』は、自らの主張をしていくためのオープンスペースとなっている」。
一方、MXM社は、社員ひとりひとりがそれぞれをポイント制で評価し、そのポイントを褒賞金と引き換えることができる制度を導入している。現在、社内で120万ポイントが付与され、9万ポイント分が褒賞に交換された。グレイ(Grey)、オグルビー(Ogilvy)、ワイアンドアール(Y&R)などのエージェンシー各社も、類似のプログラムを導入している。MXMは、この評価プログラムによって、従業員の定着率が4%ポイント高まり、85%になったと話している。
社内異動をしやすくする
さまざまな部署で働くことが好きなミレニアル世代を見て、彼らが社内異動をし易いよう配慮したエージェンシーもある。
ボストンのマウリン・ロウ(Mullen Lowe)社では、プランナーがクリエイティブ部門に異動できたり、メディア部門がPR部門またはイベント計画部門へと異動することを可能にした慣習を作った。これによって、会計管理をするクリエイティブディレクターすらいるという。
「ジャングルジムのような人事異動になっているが、これはミレニアル世代に特化したシステムだと、私は信じている」と、マウリン・ロウ社のクリステン・カバロ氏。「このように同時に複数の仕事を果たす人を、我々は『釣り合わないおもちゃ』と読んでいる。これは誰もがそうとは限らないが、このような人材は、異なる部署のつなぎ役を果たすことがよくあるからだ」と、カバロ氏は続けた。
海外で働くことに興味を示しているミレニアル世代に対して、マウリン・ロウ社は、3~4人の従業員を9つの海外事務所に送り出し、顧客と実際に折衝させる「マウリン世界観光旅行家(Mullen Globetrotters)」というプログラムを開始した。
社会貢献もポイント
また、複数のエージェンシーは、社会奉仕に関心を向けている1975年から1989年までに生まれたジェネレーションYと呼ばれる世代を活用しつつある。ワンダーマンは「奉仕の日(Service Days)」という制度を導入。各オフィスを終日休みにすることで、地域社会の向上を目指す組織と協力して活動している。
ロサンジェルスのエージェンシー、オムレット社は従業員に週2回に渡り60分の時間とリソースを与えることで、社外プロジェクトに取り組んでもらう「60/60」を実施した。結果的に非営利でロサンジェルス市の水の管理保護を行う「一滴を大切に(Save The Drop)」と名付けられたキャンペーンを生み出す結果になったという。
エージェンシー役員は、こうした取り組みは経営判断として下すのは簡単なことではないとしているが、採用面や人材の引き留めには重要だと考えている。
「数や規模だけでなく、オフィス内で増していく、彼らの主張も重要なのだ」と、ワンダーマン社のソロモンズ氏は語った。
Tanya Dua(原文 / 訳:南如水)
Image by Thinkstock / Getty Images