FUTURE OF WORK

従業員リソースグループ、エージェンシー内で存在感を増す:組織に真の変化をもたらすか?

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従業員リソースグループ(Employee Resource Groups:ERGs)とは、職場において共通の特性や人生経験を持つ従業員たちが組織したグループのことだ。最近では、女性やBIPOC(黒人、先住民、有色人種)・LGBTQ+(性的マイノリティ)の従業員を支援するネットワークから、退役軍人や精神的・身体的障害者を中心としたグループまでさまざまなグループが存在するという。

そのERGが、特にエージェンシーやテック企業をはじめとする企業内で存在感を増している。特に、「#MeToo」や「Black Lives Matter」のようなソーシャルムーブメントが登場し、さまざまなタイプの人材に「ここで働きたい」「ここを辞めたくない」と、いかにして思わせるのかが注目されるようになった。

とはいえ、こうしたグループはどのような力をつければ、組織に真の変化をもたらすことができるのだろうか。果たして彼らはいわゆる「善意」を超えて、客観的な数値として示すことが可能な、真の前進を遂げているのだろうか。

変化を数値化できる

シカゴが本拠地のIT企業アクティブキャンペーン(ActiveCampaign)は、このパンデミックのあいだ、メンタルヘルスの問題を抱える従業員の支援グループとして活動しているだけでなく、アクティブプライド(ActivePride)やアクティブリーブラック(Actively Black)、マムズオブAC(MomsofAC)など数多くのERGの拠点としての役割も担っている。同社で多様性・公平性・包摂性(DEI)プログラムを統括するアビー・キア氏は、今回のグローバルな健康危機に直面し、アクティブキャンペーンではERGがこれまで以上に重要になったと話す。

「わが社には世界各地に従業員がいるが、こうしたさまざまな人材を抱える組織でアイデンティティとアフィニティ(親近感)のあるグループが共通の経験をもとにして協力しようとしたときに、すばらしい方法を提供してくれるのがERGだ」とキア氏。「ERGがもたらす帰属意識は実に影響力が強く、『この世の中はこの先一体どうなっていくのだろう』と必死に事態を見極めようとしている人にとって、考え方やライフスタイルや文化を共有し、今体験していることを共感してくれる仲間がいるというのは役に立つ」。

キア氏によれば、同社のERGの真髄は、グループ外でも学べるプラットフォームの提供に加えて、従業員が同じ体験を共有できる安全な場所の創出にあるが、変化を数値化できるのもERGの特徴だという。たとえばプライド月間中、アクティブキャンペーンの従業員は資金集めの目標金額を2500ドル(約27万円)に設定し、多様性を支持する企業や、公平性の推進に取り組む企業、差別をなくす企業、教育や医療を受けやすくする企業、LGBTQ+コミュニティの基本的人権を保護する企業の支援活動に取り組んだ。最終的に目標金額を達成し、会社からも同額の資金が提供されたので、LGBTQ+コミュニティにはさらに大きな影響力を与えることになった。

それに、ERGの影響は人材の採用や離職にも見られる。特に、若い従業員のあいだで顕著だ。人材プラットフォームのタロー(Tallo)が1400人を超えるZ世代の会社員を対象に実施した調査では、86%がDEI志向のERGへの加入、もしくは、DEIの活動への参加を予定していると回答した。その一方で、ERGのようなグループにかかわるつもりはないと回答したのはわずか6%だった。

DEI関連は影響力が大きい

「新型コロナウイルスが感染拡大するなか、ERGのおかげで、私たちは大きく成長し、たとえリモートであってもコミュニティを持つことが可能になった」。そう話すのは、エージェンシーのフォースマン&ボーデンフォース・ニューヨーク(Forsman & Bodenfors New York)で人材担当ディレクターを務めるジェネビエーブ・ロブレス氏だ。同社のERGは、男女共同参画、LGBTQ+の問題、子育て、持続可能性を中心に活動している。そのほかにも、純粋に楽しい時間を過ごすためのグループもあり、たとえば従業員のバーチャル誕生日会を開催している。

シーグラム(Seagram’s)やゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)などの企業を顧客に持つこのエージェンシーは、アジア系に対するヘイトクライムの撲滅運動「ストップ・アジアン・ヘイト(Stop Asian Hate)」ムーブメントを支持している。実は同社にとって、この運動は決して他人事ではない。「当社には、外を歩くのが怖いと感じている従業員が何人もいる」とロブレス氏は話す。

フォースマン&ボーデンフォース・ニューヨークではERGのメンバーを含め社内で意見を交換し、ヘイトクライムの目撃者が取り得る行動を示した「ザ・バイスタンダー・マヌーバー(The Bystander Maneuver)」というポスターを作り出した。ハイムリック法(救急救命の気道確保)を説明するポスターに似たデザインで、5つのパターンにわけて、ヘイトクライム発生時、その場に居合わせた人たちに可能な行動や発言が説明されている。同社では、アジア人差別に対する世間の意識の向上も必要だが、いますぐできることに携わりたいという思いもあったという。

ロブレス氏は、エージェンシーの変化にもっとも大きな影響を与えるERGはDEI関連グループだと話す。たとえば世界規模のDEIトレーニングを検討する場合は、グローバルなインクルージョンタスクフォースも参加し、どのようなトレーニングがよいのかを一緒に見極めている。ほかにも、2年に1度、コンサルタントと向上具合をチェックするシステムも構築している。フォースマン&ボーデンフォース・ニューヨークではこのような取組みを通じて、採用面接の包摂性向上や採用時のバイアス軽減を目指している。「常日頃から言い続けているのだが、我々のパイプラインはこれからも多様性が豊かなことであり、それはこの苦しい時勢でも変わっていない」とロブレス氏は話す。

企業活動の形成にも役立つ

サンフランシスコを拠点とするデジタルアイデンティティ・プラットフォームのオクタ(Okta)で多様性・包摂性・帰属性担当バイスプレジデントを務めるマドハビ・バシン氏によると、同社のERGは、「仕事であれ仕事以外であれ、社員が連帯感を持てるようにサポートすること」を考えて作られているという。また、アクティブキャンペーンやフォースマン&ボーデンフォース・ニューヨークのように、オクタも真の変化をもたらそうとしている。

たとえばフォローアップもそのひとつだ。シーメンズ(Siemens)やTモバイル(T-Mobile)のような企業と協働するオクタは以前から積極的にDEIに取り組んできたが、ジョージ・フロイド氏殺害事件を受けて2020年5月、人種にかかわる差別と権利侵害の体系的な問題に挑むには、もっとやらなければならないことがあるはずだと考えた。そこで、こうした人種問題に対して自社で取るべき行動を公表し、あらたな取組みを始めたのである。それから1年後にはフォローアップを実施し、進捗状況の発表だけでなく、DEIの活動に対しては今後も継続的に説明責任を果たす予定であることも説明している。

ERGの取組みの結果、オクタでは、「オクタベート(Oktavate)」というオクタのインクルーシブな企業文化の価値観とニーズに焦点をあてた研修プログラムを導入した。また、ERGリーダー向け人材開発コースにも投資し、たとえば主要メンバーに対して、メンターシップや四半期ボーナスの提供が実施される。さらには、同社は人種間の正義を支持するために、「オクタ・フォー・グッド(Okta for Good)」を通じて300万ドル(約3億3000万円)の寄付を約束し、この投資を実現するために「レイシャル・ジャスティス・エンド・エクイティ・エンプロイー・アドバイザリー・ボード(Racial Justice and Equity Employee Advisory Board)」を招集している。

「こうした取組みはすべて、社内のERGと協働で実施している」とバシン氏は話す。「そうすることで、彼ら従業員の声が間違いなく経営陣に届くだけでなく、DEIを中心とした企業活動の形成にも役立っている」。

[原文:Employee resource groups expand in scope and size to tackle measurable change

TONY CASE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)