今週のトピックは、広告ホールディングス世界2位のオムニコムが米マクドナルドのアカウントを、35年間保持していたピュブリシスから奪取したことだ。マクドナルドの年間広告予算は10億ドル(約1000億円)。オムニコムはマクドナルドの本拠地シカゴに担当するチームをつくる。オムニコムは米通信最大手AT&Tのアカウントも最近獲得していた。
今週のトピックは、広告ホールディングス世界2位のオムニコムが米マクドナルドのアカウントを、35年間保持していたピュブリシスから奪取したことだ。マクドナルドの年間広告予算は10億ドル(約1000億円)。オムニコムはマクドナルドの本社所在地シカゴに担当するチームをつくる。オムニコムは米通信最大手AT&Tのアカウントも最近獲得していた(Adweek)。
若年層の顧客が多いマクドナルドは小売業界のなかでもひときわデジタル戦略に注力しており、オムニコムを選んだ理由のひとつがデジタルだと言われる。昨年末の世界最大級の広告費をもつP&Gもアカウントをピュブリシスからオムニコムに転換したが、プログラマティック広告がその理由と言われた。
筆者が3月に米ラスベガスで開催されたカンファレンスを取材した際、マクドナルドCMOのデボラ・ウォール氏は同社の1日の来店者数が2600万人に上ることから、デジタル戦略にはスケールを確保することと、ソーシャルメディアやアプリを利用して接触を増やし、来店サイクルを小さくすることが重要だと指摘していた。
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同社のモバイルアプリは700万ダウンロード(今年1月時点)に達し、企業アプリとしては世界最大級。他者がアプリベンダーに押されるなか、大きなユーザーベースとデータ取得源を確保することに成功した。現状ブランドが自社サイト/アプリに大きなトラフィックを得たい場合は、ソーシャル、ポータル、キュレーションサービスに、恒常的に広告費を使う必要がある。
米国ではモバイル決済も導入している。「われわれはモバイル決済に参画した最初の企業のひとつだ」とウォール氏は語っており、ユーザー体験をシームレスでリッチにする策を競合より先に打っていた。
また日本でもマクドナルド約2900店舗をポケモンGOの「ポケストップ」に設定したことで特需になった。オンラインの顧客をオフラインに誘導するO2Oの成功例になっている。
以下、今週のその他のトピック。
■アフリカへのネット接続人工衛星が破壊
Facebookの人工衛星を積んだ、SpaceXのロケット「Falcon 9」が打ち上げ中に爆発(CNN)。搭載していた人工衛星が破壊された。人工衛星はサハラ以南アフリカにコネクティビティ(ネット接続)をもたらす目的のもの。同地域は人口が多く、経済成長が見込まれ、スマートフォン保有率の急拡大が見込まれている(下図)。
出典:GSMA『The Mobile Economy Sub-saharan Africa 2015』
■3割がFacebookのニュース減希望
ソーシャルエンゲージメント企業Spot.IMによると、3分の1のFacebookユーザーはニュースフィードに流れるニュースの量がもっと少なくてよい、と回答した。Facebookは今年、ニュースフィードにおける媒体社のコンテンツを減らしており、ユーザーの利用時間を握る同社の動きは媒体社に衝撃を与えている(ビジネスインサイダー)
FacebookCEOのマーク・ザッカーバーグ氏はイタリアでの学生とのミートアップで、「Facebookはメディア企業か」と問われ、「我々はテクノロジー企業であり、メディア企業ではない。メディア企業では人々がコンテンツをつくり、編集しているが、それは我々ではない。我々はテクノロジー企業であり、ツールをつくっている。我々はユーザーが体験をキュレートするためのツールを提供している」と語った。
■Periscopeに収益化手段
Twitterのタテ型ライブ動画Periscope(ペリスコープ)では、テレビ放送の効果を増幅するTwitter Amplify(アンプリファイ)によって収益化が可能になった。Periscopeで提供される動画の間に広告を挟むことが可能になる(VentureBeat)
■Googleのスマホプロジェクトが中止
Googleは部品を総取り替えできるスマートフォンのプロジェクトProject Araを中止。Googleは通信とデバイスにも強くテコ入れしてきたが、一段落になった。年初にモトローラの元プレジデント、リック・オステロ氏がGoogleに復帰。ハードウェアのプロジェクトを整理しているそうだ(Reuters)。
Text by 吉田拓史